消費税引き上げはなぜダメか 「連合通信・隔日版」で連載・その1 | 労働組合ってなにするところ?

労働組合ってなにするところ?

2008年3月から2011年3月まで、労働組合専従として活動しました。
現在は現場に戻って医療労働者の端くれとして働きつつ、労働組合の活動も行なっています。

あまり知られていない労働組合の真の姿(!?)を伝えていきたいと思います。

先日の介護実践講座と交流のつどい で斎藤貴男氏の「消費税のカラクリ」(講談社現代新書・2010年7月20日発行)を勧められ、早速購入したのですが、その日の夜に体調不良に陥ってしまったのでまだ読み終わっていないのです。消費税についてはしっかりしたエントリーをあげたいと思ってはいるんですが……

そんな折、「連合通信・隔日版」で消費税についての連載が開始されました! これから逐一取り上げていきたいと思います。まずは第1回です。引用部分は青で表記します。



〈連載企画〉 消費税引き上げはなぜダメなのか

連合通信・隔日版  2010年10月14日付  No.8381  p4~5


 菅首相が再び、消費税引き上げに言及している。経済界やマスコミ報道も同じ立場で、国民からも「やむなし」との声が聞かれる。だが、引き上げで起こりうる社会不安を知ってのことだろうか、家計負担増にとどまらない危うさに迫る。


①街は大型・チェーン店ばかりに  地域社会は崩壊する


(中略)


 「引き上げなら廃業」


 東京のある下町の弁当屋は今、廃業の危機にある。数年前に近くに競合チェーン店がオープンしたうえ、徒歩圏内の大型スーパーも弁当の安売りに力を入れ始めたため、厳しい価格競争にさらされているからだ。350円で売るのり弁当は、競合店では300円を優に切る。対抗して値下げに踏み切ったが、原材料費も高くて採算はギリギリ。店の主人は嘆くほかない。

 「消費税が10%や15%になれば店を畳む。頑張って倒産するよりもましでしょうね…」

 なぜ、引き上げが廃業や倒産に結びつくのか。それは中小、零細商店の立場と消費税の仕組みに理由がある。


 客の負担分も納税


 中小、零細商店は大型・チェーン店との価格競争に常に脅かされており、物価が下落するデフレではなおさらだ。利益を度外視しても売り上げ確保しなければならず、客から受け取るべき消費税を値段に上乗せすることは難しい。

 だが、売り上げが出れば、上乗せの有無に関係なく「客から預かった消費税」を国に納める義務が生じる。課税対象となる売上高が一定規模を超えなければ免税されるが、その上限は04年度に3000万円から1000万円に下がった。虎の子の利益から納税を課せられる事業者が増えたことになる。

 この事情は下請け企業も同じ。効率化の嵐のなか、仕事をこなしても発注元の大手企業や親会社からは支払い額を削られて、事実上利益を持ち出して消費税を納めなければならない。


 地域の担い手失う


 09年度に新たに発生した国税滞納額7478億円のうち、消費税は3742億円で50%を占める。国税庁の関係者は「財政難を理由に、税務署は消費税滞納分の回収に血眼になっている」と打ち明ける。税務東京は滞納者を十把ひとからげに「悪」と見なして取り立てているが、中小、零細事業者にしてみれば、客から取れなかった分を納税しているのだ。

 もし、消費税が10%になれば、前出の弁当やのような零細店の納税額も倍となり、利益は奪われて経営は行き詰まる。廃業や倒産した跡には大型・チェーン店が入り、やがてどの街も同じ光景になってしまうだろう。商店街の消滅は、地域のつながりや街のモラルを守ってきた担い手を失うことにもつながる。

 そんな社会を望む人は果たしてどれほどいるだろうか。 



……若い人の中には、「チェーン店ばっかりでも別に構わないし、うちのお父さんは大手企業に勤めるから大丈夫」とか言う方もいるかもしれないですけどね。

でも、先日の産業保健推進センター のことを書いたときにも言及しましたが、日本の事業所99%が50人未満の中小・零細で、日本の労働者の58%も中小・零細事業所で働いています。つまり、消費税が上がれば日本の労働者の半分以上が失業の危機に瀕し、その労働者に生活を支えられている多くの家族が生活に困ることになります。もちろん消費税の引き上げは家計を圧迫しますので、ダブルパンチです。


記事では消費税の滞納額が多いことにも言及されていますが、これは単にモラルだけの問題ではなく、消費税の仕組みがお金がないところからも取っていく税なのだからですね。

そのことは、「消費税のカラクリ」の第一章にも書かれていました。法人税との比較でも消費税の滞納額の伸びは顕著だということでしたので、同じく事業者が納税する税で滞納増に大きな差があるということは、モラルだけの問題ではないということの証拠なのではないかと思います。

また、同じく「消費税のカラクリ」の第一章によりますと、消費税の滞納者が急増したのは1998年度で、日本の自殺者が3万人を超えた年と一致するそうです。もしかすると、消費税の引き下げこそが有効な自殺防止対策であり、消費税を引き上げることはその逆の結果を生むことになるかもしれません。


この連載は5回続くということですので、これからも引き続き取り上げていきたいと思います。合わせて「消費税のカラクリ」も読み進め、読了したら感想を書きたいと思っています。