『漆の代用「カシュー塗料」の謎を追う』からの続きです。
前回、esp@cenetで1966年までしか遡ることができませんでしたので、アプローチを変えてみます。
次は、Google Patent です。
"cashew KK"
このキーワードで検索すると、27件ヒットします。
一覧上に表示される年号は、1972年や1968年など、1966年よりあとばかり。
ただ・・・
2000年に公開された2件の国際公開公報のデータに、「JP 45 026750 B」と「JP 59 076580 A」という情報が見つかりました。
引例として記載されたもので、番号から、特公昭45-26750と特開昭59-76580だろうと判断できます。
(画像はGoogle 検索結果からキャプチャ)
念のため、特許情報プラットフォームの「特許・実用新案番号照会」で確認します。
特願昭41-055563 - 特公昭45-026750 特許0599777 発明者:山田貞吉 出願人:カシュー株式会社 代表者:清水谷一郎 発明の名称:アナカルド酸より縮合物を得る方法 特願昭57-187040 特開昭59-076580 特公昭63-016990 特許1471493 「漆系塗料の塗膜の乾燥方法」 |
前者はタイトルだけでは判断できませんが、明細書に、「使用されるアナカルド酸は、カシュー・ナットを包む皮殻から加熱せずに溶剤抽出法または圧搾法によって得られる」と記載されています。
「アナカルド酸」という新たなキーワードが手に入りましたので、Google Booksに戻ります。
"アナカルド酸" 特許
というキーワードで検索してみました。
特許第5802662号が1件ヒットするだけで、有意な情報は得られません。
そこで、同様の検索を英語で試します。
"anacardic acid" cashew patent Japan
Japan と cashew を加えたのは、欲しいのが日本のカシュー株式会社の特許に関する情報だからです。
結果、1件目に『Cashewnut Shell Liquid Patents: A Compilation of Patents on Cashew』という資料がヒットします。
クリックしてみると、スニペットでほとんど文字は見えませんが、31ページの
Method of Preparing a Condensate for Filling
という切り出し部分の下に、重要なキーワードが出ています。強調は、こちらでつけました。
Patent Application Announcement Serial No. Showa 31-5891; Announcement July 18, 1956; Application February 23, 1953; Patent Application Serial No. Showa 28-3018; Applicant Inventor: Ichiro Shimizutani, 1556 Higashi-terao Turumi-ku |
「Showa」は、「昭和」でしょう。
出願が1953年2月23日とあるので、 31-5891は、おそらく公告番号だろうと思います。
そこで、特許情報プラットフォームの「番号照会」で確認してみました。
結果・・・・・。
ビンゴ!!
特公昭 31-5891号 特願昭28-3018号
出願人 発明者 清水谷一郎
この発明者名は、上にあげた特公昭45-026750でカシュー株式会社の出願に記載された代表者名と、同じです。
そして明細書の冒頭は、次のとおりです。
「本発明はカシューナット殻液、漆液、又は夫等の混合物を主成分とし、之にハロゲン化金属無水物を・・・」
スニペットで拾った英文には「Ichiro Shimizutani」とありますが、カシュー株式会社の当時の社長は「清水」氏だったことがすでに判明していますから、おそらく「清水」と「谷一郎」でしょう。
おもしろい誤記ですね。
Wikipediaには1950年とあったので少し足りませんが、ひとまず1956年まで見つかりました。
もう一点、前回の調査で見つけた米国特許第3,650,666号(優先権の基礎出願は19667年)には、発明者名にSHIMIZU TEISUKEとありました。
ここで見つけた清水氏との関係は、不明です。
続きは別記事で。
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