京都橘120期の「ショーケース」 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

もはや毎年の恒例になったサン・クロレラのインタビュー記事がアップされました。

 

 

 

ちょっと前に私が記事にした「橘グルーヴ」の大きな変化の理由がこのインタビューで証明されていて、答え合わせができた気分でとてもスッキリした気分です。全体のまとまりは、確実に結果として現れるんですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、台湾公演の続きです。

12月12日、朝9時に開催された富士大飯店でのポップアップ・パフォーマンスを終えた京都橘の部員たちは、オレンジのユニフォームに着替えてからホテルを出発します。11時からの北一女の120周年祝賀行事に参加するためです。心配された雨も、なんとか止んだようです。

北一女に到着した瞬間から、無数の動画がアップされています。気になる方は検索してみて下さい。

 

まずは、Rooster Jamesさん撮影のリハーサルの動画をご覧ください。

 

 

ポイント貼りから音出しを経て、リハーサルに入ります。「Fanfare for Tachibana」が終わったタイミングで、副総統・頼清徳氏の一行が入場して来る様子が捉えられています。1ヶ月後の総統選挙へのアピールはもちろん考えているのでしょうが、形としては蔡英文総統の代理としての来賓ですね。次期副総統になる予定の蕭美琴氏の姿も見えます。

さて、この動画では、京都橘の普段の練習の一端が垣間見得ます。顧問やドラムメジャー、セクションリーダーからの指示をきちんと把握して「ハイ」と元気良く返事をして、すぐに行動に移します。非常に統率が取れていて、効率的な練習ができていることが見て取れます。

 

 

 

 

本番の様子を捉えた動画は数多ありますが、一番良くできているのは黎家維さんの3台のカメラを編集した動画でしょう。

 

 

北一女の楽儀旗隊のパフォーマンスは凛として素晴らしいけど、このジャンルについてはあまり多くを見ていないので、ここで語ることは遠慮します。

 

黎さんの動画は、グランドレベルの正面左右と建物上方からのカメラを使っています。

京都橘の最初の6分間は、マーチング・コンテストのプログラムです。コンテストと比べると、若干の隊列の乱れはあるものの演奏は更に充実しているように思えます。

「バラ色の人生」は、部長のユーフォニアムによるイントロから、実に美しいです。他の部員は、四隅へ移動して部長とカラーガードのパフォーマンスを引き立てます。さらに隊列が四隅から戻って、マークタイム(その場での足踏み)までのフォーメーションの美しさは、京都橘のプログラム史上最も記憶に残るもののひとつだと思います。最大の見せ場であるカンパニー・フロント(横一列での前進)へ至る各ブロックの複雑な動きも素晴らしいですね。

 

そして、京都橘の代表曲「Sing,Sing,Sing」を凝縮して新たな魅力を加えた「The Sing」は、毎年アレンジが違うのも楽しみにしています。ここでのパフォーマンスでは、「キャー」の後にお馴染みのステップで観客からどよめきが起こるのが嬉しいですね。さらに、トドメの超絶フォーメーション・チェンジ。こんなにスピードのある演技は、他の強豪校と呼ばれる学校の演技でも見たことがありません。もはや京都橘のトレードマークになったような気がします。

昨期は国慶節、今期はここでのパフォーマンスと、マーチング・コンテストのプログラムの全貌が記録として残ることは、とても嬉しいことですし価値のあることだと思います。さて、来期はどうなるんでしょう?

 

続いては、マーチング・ショー。次期部長のMC中、2分弱の間にパーカッション・セクションのセッティングが終わる手際の良さに注目してください。

「Winter Games」は、最適なテンポで曲の良さがダイレクトに伝わる見事にまとまった演奏です。

続く「Uptown Funk」も見事なパフォーマンスです。ここでカラーガードが使用するのは、黒いハットです。ところが左側の二人がハットを持っていません。20分程前のリハーサルでは、ちゃんと使っていました。この日は風が強かったので、吹き飛ばされて行方不明になったんだと想像できます。突然のアクシデントにも動揺を見せることなく、きっちり決めてくる二人のカラーガードに拍手です。

この曲は、今期のプログラムの中で最もクールでカッコ良い演奏と振り付けです。見事な「橘グルーヴ」のおかげで、その完成形がここにあります。

 

そして、初披露の「マイ・ウェイ」です。編曲の岩井直溥氏は1970年代にも「マイ・ウェイ」をアレンジして、世界中の吹奏楽団で演奏されています。けれども、この時のアレンジはあまりにもまとも過ぎて、平凡です。随分後になって再アレンジしたものが、今回京都橘が演奏しているヴァージョンです。正式なタイトルは「シンフォニック・バンドのための『マイ・ウェイ』」となっています。東京佼成ウインドオーケストラの演奏で、お聴きください。

 

 

今回のアレンジは、エモーショナルでダイナミックなものになっています。ポイントは後半の転調で、ここで気分がグッと上がります。京都橘の演奏は、いつも通りの短縮ヴァージョンですが、ポイントである転調の部分はきっちり押さえています。座奏で演奏することを前提に作られているはずのこの曲を、京都橘は優雅に美しくマーチングに取り入れています。誰がこの曲をマーチングで使うことを想像できたでしょうか?京都橘では、こういったサプライズを昔からしばしば取り入れていますね。

ここで最初のメロディを歌うのは、個人的に1年生の時から注目していたホルンの部員です。ホルンのソロは、京都橘のパフォーマンスでは見た記憶がありません。非常にレアですね。残念ながら正確に音を当てることができずに、納得できない表情で下がる様子が見て取れます。プロでは許されないことですが、金管楽器経験者ならきっとわかってもらえる難しさなのです。彼女は、この日の夜のパフォーマンスで、見事にリヴェンジを果たします。

 

さて、この曲での注目すべきことは、ギターとベースを演奏している二人の一年生コンビです。

ギターを担当しているのは、普段はクラリネットを吹いていて笑った時にキレイな三日月になるタレ目が印象的な部員です。ギターを弾いている姿を見る限り、エレキ・ギターは初心者のようです。以前にアコースティック・ギターはやっていたかもしれませんが。

ベース担当は、すっかりおなじみになったカラーガードの「カニちゃん」。彼女は、座奏ではコントラバスとエレキ・ベースを弾いていますが、マーチングでもこの曲だけでエレキ・ベースを弾くことになりました。

 

 

台湾公演における様々なイヴェントでのセッティングの様子を見ると、ベースやギターの設置は全て彼女が任されています。つまり、全部員の中で一番精通していると認められているんですね。そして、この曲での大抜擢です。なぜなら、静かな曲調でベースの音が非常に重要なポイントになっているからだと思っています。彼女がベースを弾いている姿を見ると、ほとんど手元を見ることなく見事にリズム・キープに徹しています。彼女は、多分以前からエレキ・ベースでポップスを演奏していたのでしょう。楽器が既に体の一部になっているようです。

曲が終わってから、ダッシュで最前列へ向かう姿も見逃し厳禁の楽しさです。

そして、マーチング・ショーの最後を飾るのは「Sing,Sing,Sing」です。ほぼ完璧な出来で、観客の大歓声に包まれます。

 

カラーガードの一人が後退する時に転倒したり、ハットが行方不明になったり、不要なフラッグを持って出てしまったり・・・。いろんなトラブルがあっても、動揺せずに「なんとかする」京都橘の底力を再認識する結果になりました。グロッケンやキーボードの音がない寂しさは拭えませんが。

 

 

北一女創立120周年記念式典における18分程のパフォーマンスは、曲数こそ物足りなさを感じるものの、今期の京都橘を凝縮した見事な構成で魅了させてくれました。この日の夜間パレードを合わせれば、京都橘120期のパフォーマンスの「ショーケース」とも言える多彩さです。

 

 

 

ひとつのカメラで撮影したもので群を抜いてクオリティが高い動画は、やはり慶次郎前田さんでした。

 

 

投稿された動画のほとんどが、可愛い部員たちを収めようと近寄り過ぎています。そんな中で、慶次郎さんは意識的にクローズアップを避けているようにも思えます。京都橘の魅力をわかっているからこその構図で、全編お見事です。その中でも白眉は、「バラ色の人生」のカンパニー・フロントです。ズームアウトして隊列を全部収めるタイミングが抜群で、初めて見た時は思わず声が出てしまいました。

さらに、「マイ・ウェイ」から「Sing,Sing,Sing」の始まりまでのカラーガードの身体能力の高さも、はっきりわかる動画になっています。

画質と音質のクリアさは抜群のクオリティで、京都橘撮影のお手本と言える動画です。

 

 

 

この公演で絶対に見るべき動画は、Julio Hsuさん撮影のものです。

 

 

左手の建物の上階からの撮影で、京都橘の素晴らしさを世界に発信する珠玉の動画だと断言します。この角度から撮影されたものは過去には存在しませんし、今後もこんな機会はないだろうと思われます。フォーメーション・チェンジの美しさが、手に取るようにわかります。特に、マーチングコンテストのプログラムにおけるパフォーマンスは、何度見ても鳥肌が立ちます。また、後半のマーチング・ショーでも、初めて知るフォーメーションが多くて見どころの連続です。この動画をアップしてくれた撮影者に、心から感謝です。撮影者の周りで感嘆の声を上げている人達も控えめで、動画の邪魔にはなっていません。どんな会話をしているんだか、知りたいですね。どなたか翻訳してくれないかなぁ。

 

 

追記:ericdofuさんから、会話の日本語訳が早速届きました。

 

"以下は、ビデオの会話内容を翻訳してみたものです。撮影者の友人が北一女の生徒かもしれませんね。

2:55 誰が吹いてるの?中央に立っているのは

3:55 わあ、踊ってる!

4:27 踊ってるね

4:34 こんな動きして息切れしない?

4:50 わあ、可愛い

4:55 踊ってる、すごいね!

5:10 後ろ向きに走ってるよ、すごいな

5:35 これはもっと活発な

5:45 走りながら楽器を吹けるなんて、すごい。走っててもブレない、本当にすごい

6:11 さっきのBASS、来た来た

6:20 彼女たち、後ろ向きに走ってるけど、どうやって自分がどこにいるか分かるんだろう?

6:28 彼女たちは本物のフレンチホルンを吹いてるんだ、重いよ

7:44 人がたくさんいるね

9:36 この曲、かっこいいな、Bass弾いてるのかっこいい、どこにいるの?男の子が弾いてるの?"

 

なかなか楽しい会話でした。ericdofuさん、ありがとうございました。

 

 

また、音を遮るものがないので、各楽器の音がダイレクトに収録されています。特に、ベルが上を向いているユーフォニアムの音が顕著です。「バラ色の人生」で、最初のフルートのメロディの後、ユーフォニアムがチャップリン作曲の名曲「Smile」の一節を奏でています。お判りいただけたでしょうか?アレンジを担当した鈴木英史氏のお遊びですね。こういった「アレンジの妙」を楽しむのも、吹奏楽を聴く醍醐味のひとつだと思っています。

 

 

 

最後に、今回の台湾公演で三度目の登場、Taiwan Walkerさんの動画です。

 

 

正面から向かって右手からの撮影です。場所的に残念だと思いながら見てみたら、これが良い効果になっていました。意外に近くて、音もクリアに収録されています。新しい発見がいっぱいで、興味が尽きません。特に、カンパニー・フロントへ向かう移動から、一列になってベルアップする場面のカタルシスは、この動画ならではのカッコ良さです。

さらに、「The Sing」での複雑な移動は信じられないスピードで、彼らの能力の高さをまざまざと見せつけられます。

 

 

 

パフォーマンスを終えた部員達は、他の出し物を見たり北一女のメンバーとの交流を楽しんだり、限られた時間でも充実した時を過ごしたようです。

そして、夜間パレードが予定されている西門町へ移動するのでした。