ボブ・ジェイムス(Bob James)は、彼の絶頂期に自身のレーベル、Tappan Zeeを立ち上げました。
けれども、経営に無頓着だった彼は、すぐにレーベルの閉鎖を余儀なくされました。
無節操に予算をつぎ込んで作った作品は、今でも聴く価値のある作品が多く含まれています。
けれども、Tappan Zeeのカタログは散逸したままで、未だにCD化されない貴重な作品がたくさんあります。
全く同じ状態なのが、デイヴ・グルーシン(Dave Grusin)が立ち上げたGRPレーベルです。
BobのTappan Zeeよりは成功したものの、DaveがGRPを売り払ってからは初期の名作はなかなか定盤化されません。
そんな作品群を紹介して、なんとかCD化の波を作りたいと思うのは私だけではないと思うのです。
今回紹介する作品も、二度ほどCD化されたものの現在では法外なプレミアが付いているものです。
1980年にGRPレーベルからリリースされた、Scott Jarrettの「Without Rhyme Or Reason」です。
2年程まえに、ブロ友のkofnさんが記事にされています。
AORの熱心なファンであれば、アルバムのタイトルくらいはご存知の人気の作品です。
当時GRPブランドに間違いはないと思っていた私は、迷わずに購入したのでした。
もちろん、「The Koln Concert」で夢中になっていたKeith Jarrettの弟だというのも、購入の動機のひとつであったのも、否定できません。
ひさびさにじっくり聴き返してみました。
James Taylorタイプのフォークと、フュージョンやR&Bとの微妙な融合が、この作品の魅力だと思います。
暖かく優しいヴォーカルは、JamesとLivingstonのTaylor兄弟や、Kenny Rankin、Michael Franksなどのファンにはたまらない魅力でしょう。
まずは、アルバム・タイトル曲「Without Rhyme Or Reason」を聴いて下さい。
Scott Jarrett 「Without Rhyme Or Reason」
GRPレーベルお得意のサンバ調のナンバーですが、Scottのヴォーカルも全く違和感がありません。
Scottのアコースティック・ギターのソロがエキサイティングで、見事ですねー。
さらに、GRP印のファンク・ナンバー「Doctor/Nurse」を聴いて下さい。
Scott Jarrett 「Doctor/Nurse」
ベースのMarcus Miller(この時、21歳!!)、ドラムスのBuddy WilliamsにパーカッションのRalph MacDonaldが作り出すファンクのリズムが、実に強力です。
その熱いリズムに乗せられて、Scottのギター・ソロも白熱します。さらにギターとユニゾンのスキャットまで聴かせてくれます。
普通「優しいヴォーカル」というと「ヘタウマ」な印象を持ってしまうんですが、ここでのスキャットを聴いてもわかるとおり、Scottはとんでもなくウマいです!!
続いて、メロウな曲「Lady」を聴いて下さい。
Scott Jarrett 「Lady」
かなり難しいメロディの曲なんですが、Scottのひとりハーモニーがとても美しく印象的です。
Chris Parkerの控えめなドラムスが、魅力的です。
このアルバムの中で最も人気があって、AORの名曲と言われているのが「The Image Of You」です。
これは、kofnさんのブログで聴けますので、そちらをご覧下さい。
kofnさんのブログ「The Image Of You」
いかにもDave Grusinらしいイントロから始まるこの曲は、Scottのアコースティック・ギターがとても美しいです。文句なく、名曲でしょう。
Scottのお兄さんKeithが参加しているナンバーが2曲あるんですが、残念ながら動画サイトにありません。
いずれも、Keithの音数は多いんですが、全くヴォーカルの邪魔にならないのが不思議です。また、他の誰でもないKeithのフレーズが満載なのも、魅力です。
Keith Jarrettが歌伴をすることはめったにないことなので、それだけでも貴重な録音だと言えます。
Scott Jarrettは、結局このアルバムをリリースしただけで、メジャーな活動をストップしてしまったようです。
ただ、地道な活動は続けていて、自主制作のアルバムを2枚ほど出しているようです。是非聴いてみたいものです。
今回いろいろ調べていたら、昨年暮れのライヴの映像を見つけてしまいました。
これ、良いです。
Scott Jarrett 「Bang Bang Bang」
デビューから30年の「熟成」を感じさせる、渋いヴォーカルですねー。
ということで、メジャー・レーベルのこの作品「Without Rhyme Or Reason」くらいは、定盤化してもらいたいものです。
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