どうしても「運命'76」のイメージで、「お気軽ディスコ」の代名詞のように語られるウォルターです。
前回は、フュージョン・ファンに聴いてもらいたい曲を紹介しました。
で、今回は、AORファンに聴いてもらいたい作品を紹介しましょう。
まずは、彼の作品の中でも人気のある「California Strut」を聴いていただきましょう。
まるで、MCAからWarner時代のデオダートのサウンドのようで、とっても明るい曲です。
耳に残るメロディも見事ですが、この曲のポイントは、ファンキーなヴォーカルだと思うのです。
クラシック音楽のアダプテーションがトレードマークになっているウォルターですが、ジングルやCM音楽をたくさん作っているせいもあって、オリジナル曲でも印象的なメロディが満載なのです。
特に、ヴォーカル曲はあまり知られていないけれども、良い作品がそろっています。
しかもそのほとんどが、1980年前後のAORやR&Bのファンに受け入れられやすいテイストを持っているのです。
70年代から80年代にかけてのロックやフュージョンのファンにはおなじみのセッション・ヴォーカリストLani Grovesがリード・ヴォーカルをとる「The Only Two People In The World」を聴いて下さい。
とってもキュートな歌声です。
Laniは当時はたぶん毎日レコーディングで歌っていたハズですが、さすがに百戦錬磨の完璧なヴォーカルです。
足りないのは、強烈な個性だけでしょう。
ウォルターのメロディも、とてもシンプルで耳に残る見事なものでしょう?
次は男性ヴォーカルで「Just A Love Song」です。
ファースト・アルバムに収録されているスロー・バラードですが、手元にアルバム・ジャケットがないので、リード・ヴォーカリストが誰だかわかりません。
シンプルなメロディとストレートな歌詞に魅力を感じるのは私だけではないようで、ちゃんとカヴァーしている歌手を見つけました。
フィリピンのヴォーカリスト、Christian Bautistaのライヴを聴いて下さい。
いかがでしょう?
ベタで大甘ですが、なかなか良い感じです。
彼のファンにとっては、たまらないでしょうねー。
最後に紹介するのは、3rdアルバム「Phantom Of The Opera」収録の「The Music Will Not End」です。
Gino Vannelliのヴォーカルが好きな方は、気に入ってもらえるかもしれません。
バッハ(?)の曲をイントロとメロディのモチーフに使用して、見事なラヴ・ソングにしています。
歌っているのはB.G. Gibsonという人ですが、調べてみても全く素性がわかりません。Gino Vannelliばりの「歌い上げ」のロック・ヴォーカルのタイプですね。
ウォルターが手掛けたヴォーカル曲は、まだまだあります。
どれもキャッチーで、良い感じです。
たぶん予算の関係で大物歌手を使えなかったんだと思いますが、実力のあるセッション・ヴォーカリストを使って、魅力的なメロディを歌わせたのは大成功だったと思うのです。
このメロディ・センスは、あまりにも過小評価されているように思えます。
この頃ウォルターが在籍していた「Private Stock」というレーベルのカタログは現在では散逸してしまっていて、まともな形でCD化された作品はまだありません。
アメリカのWounded Birdのような再発専門のレーベルで、是非ともリリースしてもらいたいものです。
フュージョンやAORのファンの方も、是非ウォルターの魅力を見直してみて下さい。