「すきやばし 次郎」(☆☆)

http://www.sushi-jiro.jp/
SukiyabashiJiro
 その評価で世界を震撼させたミシュラン三ツ星に輝くお寿司屋さん。

 その寿司は王道で奇をてらわず、名人小野二郎氏の握りは口に入れると解ける絶妙のやわらかさ。

 雑居ビルの地下にある清潔な印象の寿司屋に贅はなく、30分で食することが可能なハイスピードさも驚き。握る姿も美しい彼の名人がいる間に一度は訪れたい。
 
住所:中央区銀座4-2-15塚本素山ビルB1F
電話:03-3535-3600
定休:日祝
営業:11時半~14時/17時~20時半
 
 数寄屋橋交差点から至近の企業ビルの地下にあります。

 1階の入り口の扉は昔ながらのビルのそれでしかなく、こんなところにミシュラン三ツ星の店があろうとはお釈迦様でも思うめぇ(笑) 現にぼくの両親は見つけられずうろうろしたそうです。
 店構えはシンプルで特別な印象はない。紺色の暖簾に鮨という白い文字。同じフロアですぐ横にある「バードランド」 に比べると本当に普通のお寿司屋さんにしか見えない。
 中に入ると、すぐ左にジョロジョロと水が流れる小さな装飾があり、1つだけのテーブル席の向こうに木のカウンターがあります。目の前で握っているのは神様といっても良い小野二郎さんその人です。職人は全員髪を短くし、すべてにおいて清潔な印象が強い。後から調べたところ、ジョエル・ロブションをしてこの店の清潔さに驚いたとか。
 凛とした空気も感じられますが、カメラで鮨を撮っても注意を受けたりしないので厳しいお店ではないようです。
 このカウンターの左端に4人で座らせていただきました。
 厨房で淡々と握っているのは小野さんで、実際ネタを切ったり軍艦を巻いたりするのは息子さんのようです。
 その小野さんの握りは美しい。海老に包丁を入れるさまなどまで、所作ひとつひとつが芸を見ているようです。「鮨 水谷」 の握りを酷評する方の言い分も多少はわかるかも。まあ、評価が上がりこそすれそれで「水谷」を下げたりしていませんが。

 

08年2月20日夜の来訪。

 17時半の予約。先客は一人。

 家内と娘を置いて両親とくるので少々心苦しい。
 娘が大きくなったらちゃんと一緒にいこうね♪

 
本日のおまかせ 
 18貫+1のコース。最初に印刷されたメニューが渡されるところが変わっていますか。英語表記もありますが、よく見るとただのローマ字ですね(笑)。
 
ひらめ
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 最初に出されたのは淡白なひらめ。やや厚めに切ってあります。俵型に握られた酢飯の上にしんなりともたれかかるようにネタがのる美しさ。酢飯はぼくには酸味がやや強いか。甘みはさほど感じないけど、ほろりと崩れる握りはさすがに随一の職人の技です。
 
すみいか
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 ざっくりした歯ざわりであっさりした口当たりのすみいか。
 
いなだ
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 やさしい白身のいなだ。どの鮨にも煮きりが塗られているので、艶やかに美しい宝石のようなネタです。
 
あかみ
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 ほどよくこなれた赤身。やわらかく、まるで熟成してあるかのよう。
 
ちゅうとろ
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 とろける口当たりはしゃりと一体化して脂ものって良い味わい。
 
おおとろ
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 とろ~りとしなだれかかるかのような大トロ。筋を排し、脂と赤身が一体化しているような味わい。ううむ、と唸ることしか出来ない。
 
こはだ
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 酢によってしめたこはだは捻りが入り酢飯と一つになっています。かみ締めると光物らしい味わいに、〆た酢と魚のうまみが中央から滲み出てきました。さすがは江戸前。王道を真っ直ぐに行っているなぁと感じます。
 
はまぐり
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 とても大きな煮ハマグリがぞろりと握られています。甘く煮られたそれはきちんとプリッとした感触も残しています。面白いことに、しゃりの形も実はよく見るとハマグリの形に合わせて少々つぶれていました。柔らかな握りならではでしょうか。
 
あじ
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 肉厚な鯵です。濃いピンク色のそれは口に入れて食べる間に喜びを与えてくれる。さすがに良いものを使っています。
 
くるまえび
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 とても大きな茹でた車海老の握り。大きすぎるので半分に切って供されます。頭の方は味噌を抱え、尻尾の方はややしゃり少なめに海老を楽しめます。小野さんの包丁使いは最後にタンと小気味よい。海老の断面の美しさは味にも現れています。

 
さより
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 くるりと細工されたさよりは、おお!と驚くほど山葵が利いていました。そういえば、これまであまり感じなかっただけにびっくり。
 
たこ
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 茹でたたこの切り身です。今までは煮切りが塗ってあったのですが、これはやや強めに粗塩がふってあります。
 
さば
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 厚切りしすぎない鯖。切り身の断面からその新鮮さと質の良さが伺えます。
 
あかがい
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 これまた肉厚で立派な赤貝。ざっくりしていてぷりぷりした美味さ。
 
うに
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 軍艦巻きでいただけます。たっぷり盛られたうには口に含むと海栗の洪水が口の中で起ります。溺れるほどの海の旨み。品質のよさも折り紙つきで、臭みなどまったくありませんね。
 
こばしら
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 こちらも軍艦で。煮切りを絡めた小柱がたっぷり。
 
いくら
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 これも軍艦巻きで。酢飯といくらの分量が同じくらい。ネタを楽しめます。
 
あなご
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 やわらかく煮られたアナゴ。アナゴ自体を生かすためにタレは主張しすぎないくらい。
 
たまご
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 〆に出される玉子はしっとりした口当たりながらも軽く甘い。鮨の印象と変わることのない王道のそれ。
 
 この間30分という驚きのハイスピードです。
 二郎さんはこちらが食べるのを常に見ていて、食べ終わった者の前にどんどん次の握りを置いてくれます。
 鮨はやはり相性もだいぶ占めるのだろうなぁとあらためて感じました。王道をズバンと行っているのはよいのですが、その作り手の創意工夫が味に現れるような創作系を自分は好みますし、お汁なども飲みたいと思うのはわがままでしょうか。ですから総評は☆☆(二つ星)になります。今回は自腹ではないのでこの評価ですが、自腹だとどうかな…。
 最後に二郎さん自ら店の外に出られて見送ってくださいます。神様になろうとも初心を忘れることのない姿勢はとても素晴らしい。

 

すきやばし 次郎寿司 / 銀座駅有楽町駅銀座一丁目駅
夜総合点★★★★ 4.0