貴重な訳本 | アブエリータの備忘録

アブエリータの備忘録

Yesterday is history,
Tomorrow is a mystery,
Today is a gift.
That's why it is called "present".

 

ハマっているシリーズの第1作ペーパーバックが約1ヶ月かかって海外から届いた。

 

 

 

イギリスの作家、ピーター・トレメインの作品で≪修道女フィデルマシリーズ≫。これまで、その短編集と長編小説をそれぞれ一冊ずつ読んだ。このシリーズはすでに34作目が出版されているようだ。

 

 

日本語に翻訳されているのは初期のころの作品のみ。読書日記を書かれているブロガーさんの記事がこのシリーズを読むきっかけになった。

 

 

原作のペーパーバックはイチイチ英国からの取り寄せなので、注文してから手元に届くまでに約1ヶ月はかかる。以前にもこのシリーズの作品についての記事を書いた。

 

 

シリーズ第1作を読み始めて、そのとっつきにくさに驚いた。これまで読んだ2冊の本は、比較的楽に読み進めて楽しんだのだが、この第1作は7世紀アイルランドの歴史的背景を知らずしてはなかなか理解できない作品だ。

 

 

また、以前にも愚痴ったが、アイルランド名の読み方が非常にややこしいことが読みにくさの一つでもある。人名にしても地名にしても。

 

 

それで、またしても翻訳本を買うことにしたのだ。たいていの外国語の翻訳本には、最初に登場人物の名前と職業や地位などをまとめたチャートのページがある。

 

 

文庫本と言えど新品を買うのは気が引けるので、(良いという)中古品を取り寄せた。

 

 

 

案の定、第1ページには登場人物のチャートがあった。もうこれだけでもこの本を買った価値があるというものだ。

 

 

Étain   エイターン              

Abbe  アベイ

Athelswith  アセルスウィス

Deusdedit  デウスデーディトゥス

Seaxwulf  サクスウルフ

Atholnoth  アセルノス

Eanflaed  エインフレッド

Alfrith  アルフリス  etc..

 

 

読みにくい!私流に読んでも何の不都合も無いのだが、このような名前が出てくるたびにカタカナ読みのこれらの名前とその役柄を参照して読み続けている。なかなか覚えられないのが情けない。

 

 

そして、その次にこの時代の歴史的背景が説明されている。これを知らずして、この作品のミステリーを解くことができないと思う。

 

 

 

この訳本には巻末に24ページにわたって訳注をつけてくれているので、その時代の宗教的背景など、補足の説明があるので、本文をとても理解しやすい。

 

 

 

訳者あとがきのページにも言及されているが、第1作、第2作を省いて、いきなり第5作から始め、次いで第3作、その次が第4作。そして今回が第1作と、シリーズ物としては極めて変則的な順序での出版でした

 

「…日本の読者に第1作から読んでいただくと、どこが7世紀アイルランドの風物や文化が描かれているのだろうと不満を抱かれて、第3作まで読み進んで下さらないのではなかろうかと、不安でした」

 

「…もう一つ、諸作品の中に絶えず出てくるカトリックの神学論争も、不安要素でした

 

「古代ヨーロッパにおいて、ローマ派のカトリックとケルト(アイルランド)派のカトリックの間で苛烈な論争と対立が続いていたことをご存じの方、そこに興味を持っておられる方は、そう多くないのでは、と懸念したのでした」

 

「…シリーズの幕開けですから、フィデルマとエイダルフの出会いを語ってくれるのも、当然この第1作です

 

 

確かに!

 

 

もし第1作から読み始めていたら、ギブアップしていたかも知れない。先にシリーズの2冊を読み終えて、それらに比べれば一見難解に思えた第1作。しかしこの訳本の助けもあって楽しんでいる。

 

 

実は、まだやっと三分の二までたどり着いたところ。これから佳境に入っていくのだが、私の推理が当たっているかどうか、とても楽しみなところである。