いろいろこれから書きますが、下記することはわたしがこの作品を魅力的だと感じるうちのなかでもっとも瑣末なことです。
この物語でもっとも魅力的なのはその世界観です。
バケネズミ・ミノシロモドキ・密教・畔道・浴衣・祭り・性愛・・・・・
タイトル通り『新世界』を堪能すべし。
てことでこのあとはネタばれがあるんで注意してね。
ページ数が長大なので、自分なりにこれはこうかな?なんて想像しながら読み進めるのが非常に楽しかった。
が、ほとんど外れた。
ひとつには、麗子という少女が不自然に消えてしまう場面がある。これは重要な伏線ではないか?と思ったけれどそのことはほとんど重要視されないまま放っておかれてしまった。一応伏線は伏線ではあったけれど。
同様に放ったらかしに近いようなぶった切りの伏線がいくつもある。が、それぞれちょろっとずつ回収してある。
きっちり回収しないのは作品世界に余地をのこしたいという著者の意図が見える。力量不足で回収できなかったわけじゃなく、わざとあえてやっているような。
それらは続編を予感させるので、いつか描かれるのかもしれない。シリーズ化したいのかも。
外れた予想。
主人公の姉のエピソードがちょっとくらいは語られるかなーと思ったけどさっぱりだった。
マリアと守はロボトミー手術を施されると予想。
骨は生きながらにして採取され、死を偽装されたと思った。
が、本当に死んでいたらしい。
主人公の手記がときどき整合性がなくなってる(作者がわざとそう描いてる)の種明かしがあるはずだと思ったけどなかった。
序盤での『記憶違いや自己正当化があるかもしれない』というのがその答えだと考えるのが正解なのだろうか?
それにしても、不穏な因子を間引いていって、残っているのは厳選された「攻撃性の弱い優しくて穏やかな人間」ばかりのはずなのに、登場人物はどいつもこいつも真っ黒。
バケネズミへの拷問虐殺の残酷さは吐き気を催すほどだが、それを糾弾する心優しい人間様はいない。
ただひとりそこにいいしれない不安を感じている主人公ですら、本質的には気付いてもいないのだ。
表だっての「攻撃的なことなんて言葉にするのもおそろしいことだ~」って仮面は文字通り仮面にすぎなくて、中身は嗜虐的な性向の持ち主ばかりなのだろう。
それは無垢の子どもの仮面の下に悪鬼と業魔が隠れている・・・というおまつりに端的にあらわされている。
また、抑圧されている頃は無害な子どもだったKが抑えきれなくなった悪意が噴出して悪鬼になるエピソードにもあらわれている。
悪鬼や業魔の出現はごくまれに起きる厄災だけれど、結局のところ、どの人間だってなりうる素質があるし本質的には悪鬼や業魔となんら変わらないということだ。