第3の多能性幹細胞 がん化の危険低く 東北大大学院研究グループ | 再生医療が描く未来 -iPS細胞とES細胞-

第3の多能性幹細胞 がん化の危険低く 東北大大学院研究グループ

ES細胞(胚性幹細胞)、iPS細胞(人工多能性幹細胞)に次ぐ第3の「ヒト多能性幹細胞」を発見したと、東北大大学院医学研究科の出澤真理教授らの研究グループが、19日付の米科学アカデミー紀要に発表した。この細胞は、皮膚や骨髄に存在し、さまざまな細胞に分化できる多能性を持つが、iPS細胞などが直面するガン化の危険性は極めて低いという。
研究グループは、骨髄の細胞を培養すると、非常に低い頻度で、ES細胞に似た細胞の塊が形成されることを発見。この細胞を効率よく抽出する手法を確立した。抽出した細胞をマウスに投与すると、神経、肝臓、筋肉で、各組織に特有の細胞に分化したことから、多能性を持った新たな幹細胞として「Muse細胞」と名付けた。iPS細胞のように、あらゆる細胞に分化できる能力(万能性)があるかどうかは分かっていない。

Muse細胞は、遺伝子導入などの操作をせずに骨髄液などから抽出できる。一定の自己増殖能力はあるが、無限増殖(ガン化)はせず、免疫不全のマウスの精巣に移植しても奇形腫はできなかった。ストレスに強いことも特性の一つで、培養液に長時間ストレスを与えると、Muse細胞が濃縮された。Museは「ストレスに強い多能性細胞」を意味する英語の頭文字。

出澤教授は「ES細胞やiPS細胞とは、性格が異なる新しい多能性幹細胞で、再生医療研究の可能性が広がることが期待できる」と話している。
(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100420-00000081-san-soci


皮膚や骨髄に新万能「多能性幹細胞」発見、再生治療に新たな道-東北・京大グループ
組織幹細胞の維持・増殖・分化を制御過程や組織幹細胞同士のネットワークが生体機能の維持にさいして、人間の皮膚や骨髄の組織の中で、さまざまな組織に分化する新しい「多能性幹細胞」を、東北大大学院医学系研究科の出沢真理教授(再生医学・幹細胞生物学)らの研究グループが京都大と共同で発見した。20日の米科学アカデミー紀要に掲載される。再生医療などへの応用が期待される。

人工多能性幹細胞とは、体細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより、ES細胞(胚性幹細胞)のように非常に多くの細胞に分化できる分化万能性 と、分裂増殖を経てもそれを維持できる自己複製能を持たせた細胞のことで、人間の皮膚や骨髄から神経や筋肉、肝臓などさまざまな細胞に分化する能力を持つ多能性幹細胞の可能性があるとして「Muse(ミューズ)細胞」と名付けたと発表した。

この細胞を培養液の上などで培養すると神経(外胚葉系)、筋肉(中胚葉系)、肝臓(内胚葉系)などの異なる系統の組織細胞に変化し、人体形成に必要な3つの系統の細胞に変化する。

胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)など、体のすべての組織の細胞になれる多能性幹細胞の特徴とされるタンパク質を持つことを発見した。

ミューズ細胞はES細胞やiPS細胞のように無限に増える性質は持たないが体のあらゆる細胞に変化する「多能性」を持つ可能性がある。Muse細胞は既存の多能性幹細胞の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)に比べ増殖率は低く、遺伝子を組み込む操作が必要ないのでがん化の危険性は低くなり、将来の幹細胞治療につなげるとしている。

(財経新聞)
http://www.zaikei.co.jp/article/biznews/100420/46617.html


新たな「ヒト多能性幹細胞(Muse細胞)」を発見
―ES細胞、iPS細胞に次ぐ第三の多能性幹細胞―
東北大学大学院医学系研究科 出澤真理教授らは、ES細胞、iPS細胞に次ぐ第三の多能性幹細胞(注1)を、皮膚や骨髄などの成人ヒト間葉系組織から新たに発見し、その効率的な分離・抽出方法の確立に成功しました。この細胞は、その性状から、共同研究者である京都大学大学院理学研究科の藤吉好則教授によって、Muse細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring Cell)と名付けられました。

Muse細胞はそもそも生体中に存在するものであるため、多能性を持たせるための遺伝子導入などの特殊な操作は必要とせず、ガン化の危険性が極めて低いことが示唆されています。なお、生体から分類・抽出した後は、特定の培養によって増やすことが可能です。また、マウスに対して行われた実験では、静脈注射などによって生体に投与すると、損傷を受けた部位に自然に生着し、その組織特有の細胞に分化することが確認されています。

NEDOは、産業的な視点に立って、ライフ・イノベーションの実現に貢献する画期的な創薬や先進的医療の基盤となる技術開発の支援を行っています。今回の出澤教授らの成果は、参画プロジェクト(「化合物等を活用した生物システム制御基盤技術開発」など)において、生体内での細胞の挙動を分析して安全性等を評価することに貢献し、プロジェクト成果の実用化を加速する役割を担っています。

今後このMuse細胞を有効に活用することで、多能性幹細胞に関する研究が直面する重要課題(例えば、腫瘍化や遺伝子導入の影響など)の解決につながる可能性があります。さらには、自らの細胞を用いた新たな治療(自己細胞移植など)の実現可能性が高まることも期待されます。

なお、本件は、4月19日付の米国科学アカデミー紀要(注2)「Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA」に掲載される予定です。

(注1) 体のあらゆる組織に分化する能力を持つ細胞のこと。
(注2) 米国科学アカデミーが発行している学術雑誌。http://www.pnas.org/
(新エネルギー・産業技術総合開発機構プレスリリース)
https://app3.infoc.nedo.go.jp/informations/koubo/press/EK/nedopressplace.2009-01-21.8698110208/nedopress.2010-04-14.1275142789/





新・多能性幹細胞:東北大チームが発見 「ミューズ」と命名

神経・筋肉などに成長する新たな幹細胞、東北大教授ら発見 」の追加情報です。