エピブラストステムセルとヒトES細胞 | 再生医療が描く未来 -iPS細胞とES細胞-

エピブラストステムセルとヒトES細胞

マウスES細胞とヒトES細胞は、名前は同じEmbryonic stem cell(胚性幹細胞)ではあるけれども、その性質には違う箇所が多々あるということが以前から知られています。
例えば、マウスES細胞は球状の盛り上がったコロニーを形成するのに対し、ヒトES細胞は扁平な単層のコロニーを形成する。
マウスES細胞の未分化性維持にはLIFおよびBMP4シグナリングが重要であることが知られているのに対し、ヒトES細胞の未分化性維持にはbFGFおよびActivin Aシグナリングが重要である。
マウスES細胞は一般的に用いられるトリプシンを用いた化学的な細胞乖離による継代に対する耐性を持つのに対し、ヒトES細胞ではトリプシンを用いて細胞を完全に単一な状態までばらばらにしてしまうと死んでしまうなどの違いがあります。
これらより、名前は同じでも違う細胞種であろうと考えられていました。

そんな中、2007年7月に、これらの違いの解明の手がかりとなるかもしれない研究成果が、ケンブリッジ大学のLudovic Vallierら、および、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のRonald D. G. McKay、Paul J. Tesarらの2つのグループによって同時に報告されました。

Nature. 2007 Jul 12;448(7150):191-5. Epub 2007 Jun 27.
Derivation of pluripotent epiblast stem cells from mammalian embryos.
Brons IG, Smithers LE, Trotter MW, Rugg-Gunn P, Sun B, Chuva de Sousa Lopes SM, Howlett SK, Clarkson A, Ahrlund-Richter L, Pedersen RA, Vallier L.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17597762?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DiscoveryPanel.Pubmed_Discovery_RA&linkpos=1&log$=relatedarticles&logdbfrom=pubmed

Nature. 2007 Jul 12;448(7150):196-9. Epub 2007 Jun 27.
New cell lines from mouse epiblast share defining features with human embryonic stem cells.
Tesar PJ, Chenoweth JG, Brook FA, Davies TJ, Evans EP, Mack DL, Gardner RL, McKay RD.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17597760?ordinalpos=5&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum

これらの論文で報告されたエピブラストステムセル(Epiblast stem cells, EpiSCs, EpiS細胞)と名付けられた新しい細胞株は、マウスおよびラットの着床後胚の後期エピブラストから樹立された細胞株であり、その性質にはヒトES細胞との共通点が多く見られるということが分かったのです。

Vallierらは、5.75 dpcのマウス胚もしくは7.5 dpcのラット胚から取り出したエピブラストを、bFGF、Activin A存在下で培養することで、Oct4, Nanog, SSEA1ポジティブで、扁平なコロニーを形成する細胞株を樹立し、この細胞株は、トリプシンなどで単一細胞まで乖離すると大部分が細胞死を起こし、LIF, BMP4存在下では樹立できず、activin受容体阻害剤であるSB431542で処理することで分化することを示しました。
また、Oct4, NanogはES細胞より高レベル、Sox2はES細胞と同レベルで発現している一方、ICMやES細胞マーカーであるRex1(Zfp42)やGbx2の発現は見られないもしくは弱く、代わりにエピブラストマーカーであるFGF5, Nodalが高発現しており、グローバルな遺伝子発現もICMやES細胞よりもエピブラストに近いことも示しました。
多能性の検証のため、テラトーマ形成および胚様体形成を行ったところ、三胚葉形成能を持つことが分かり、また、ヒトES細胞のように、BMP4の添加により、原始内胚葉および栄養外胚葉への分化能を持つことも示された一方、ほとんどキメラに寄与できず(2/385)、ジャームライントランスミッションできないことも示されました。

McKay、Tesarらは、E5.5のマウス胚由来のエピブラストをMEFフィーダー細胞上にまくと、Oct4, Nanogを発現する上皮様のコロニーを形成するが、マウスES細胞の培養条件下では増殖できない一方、ヒトES細胞の培養条件下では増殖できることを見出しました。
この細胞は、ヒトES細胞のように、単層で大きなコロニーを形成し、グローバルな遺伝子発現も、マウスES細胞やICMよりもエピブラストに近いことが示されました。
また、ChIP on Chipにより、ES細胞と同様の、Oct4のNanog, Sox2, Oct4の発現制御領域への結合パターンを持つ一方、遠位エンハンサーによってOct4の発現制御を受けるICMやES細胞とは異なり、エピブラストと同様、近位エンハンサーによってOct4の発現制御を受けることが示されました。
テラトーマ形成および胚様体形成により、三胚葉形成能を持つことが示された一方、キメラには寄与できないことが示されましたが、BMP4で処理することにより、Blimp1とStella(Dppa3)が発現上昇することが分かり、生殖細胞に分化できることが示唆されました。
さらに、Oct4, Nanog, Sox2はES細胞と同レベルで発現しているものの、ICMやES細胞で発現しているPecam1, Tbx3, Gbx2, Dax1(Nr0b1), Stella, Piwil2, Stra8, Dazlの発現は見られないもしくは弱く、エピブラストで発現しているOtx2, Eomes, Foxa2, brachyury(T), Gata6, Sox17, Cer1が高発現しており、これらのEpiSCsで発現している遺伝子はヒトES細胞でも発現が見られることを示しました。
また、マウスES細胞、EpiSCs、ヒトES細胞において、Stella, Otx2, Nanogの転写開始地点周辺のH3K4およびH3K27のメチル化を調べたところ、このパターンもEpiSCsはマウスES細胞と異なり、ヒトES細胞と一致することが示されました。

この他、EpiSCsは、Oct4の標的遺伝子も、マウスES細胞と比べて7倍ヒトES細胞とオーバーラップしており、また、ヒトES細胞のように、JAK阻害剤によりLIFシグナリングを阻害しても未分化状態を維持でき、ALK阻害剤によりactivin経路を阻害すると分化することも示しました。




これらの報告に続き、ハーバード大学のNiels Geijsenらのグループによって、EpiSCsやヒトES細胞の培養条件と似た条件(bFGF, Activin A, BIO)で培養することにより、マウスの胚盤胞期胚から、ES細胞ともEpiSCsとも異なる新種の細胞株、FAB-SCsを樹立したという論文が発表されました。

Cell. 2008 Oct 31;135(3):449-61.
The growth factor environment defines distinct pluripotent ground states in novel blastocyst-derived stem cells.
Chou YF, Chen HH, Eijpe M, Yabuuchi A, Chenoweth JG, Tesar P, Lu J, McKay RD, Geijsen N.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18984157?ordinalpos=3&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum

Geijsenらはまず、マウス胚盤胞期胚をマトリゲルコート上にまき、bFGF, Activin A, BIO存在下で培養しても細胞株は得られないが、MEFフィーダー上にまき、bFGF, Activin A, BIOおよび(MEFから分泌されるLIFの効果を抑制するために)抗LIF抗体の存在下で培養すると、新しい特性を持った細胞株が得られることを見出し、この細胞株をFAB-SCsと名付けました。
おもしろいことに、マウスES細胞を樹立する際は、胚盤胞をまいてからICMが増殖し始めるまで結構時間がかかるのに対し、FAB-SCコンディションで培養した場合は、まいてから2日以内にICMの増殖が見られることも分かりました。
これは、ES細胞はICM中の少数の集団に由来するのに対し、FAB-SCコンディションはICM全体を増殖させることができる、もしくは、ES細胞の樹立にはエピジェネティックなリプログラミングが必要であり、そのために遅れるのではないかと考察しています。
樹立したFAB-SCsのコロニー形態は、マウスES細胞のようなタイトでてかった三次元コロニーではなく、EpiSCs様の単層のコロニーであり、Oct4, Sox2, Nanog, SSEA1を発現しており、ゼラチンもしくはマトリゲルコート上でも、血清およびLIF・BMP4なしで維持できることも分かりました。
次に、miRNAおよびグローバルな遺伝子発現をFAB-SCs、ES細胞、EpiSCsで比べたところ、EpiSCsでは発現量が少ない、miR-290クラスターなどのES細胞特異的なmiRNAや、miR-18a, miR-19a, miR-20aなどのES細胞において高発現しているmiRNAが、FAB-SCsでは発現していること、FAB-SCsは、EpiSCsよりもエピブラストマーカーの発現が低く、Stella, Blimp1, DazlなどのマウスES細胞では発現している生殖細胞分化関連遺伝子の多くも発現しておらず、EpiSCsともES細胞とも異なる遺伝子発現のパターンを持つことが示されました。
次に、FAB-SCsの多能性を検証したところ、胚様体は形成できるが大きくなれず、また、テラトーマ形成できないことが分かりました。
しかし、FAB-SCsを、LIFおよびBMP4の存在下で1週間培養すると、三胚葉全てに由来するテラトーマを形成できるように変わることが見出され、また、このLIF/BMP4で刺激したFAB-SCsは、FAB-SCコンディションに戻し、さらに1週間培養しても、テラトーマ形成能を保持し続けることも分かりました。
また、FAB-SCsはキメラに寄与できないのに対し、LIF/BMP4で刺激したFAB-SCsはキメラに寄与でき、ジャームライントランスミッションできるようにもなることが分かり、このLIF/BMP4刺激は48時間だけでも効果があること、FAB-SCコンディションに戻し、さらに1週間培養しても、キメラ形成能を保持し続けることも分かりました。
次に、LIF/BMP4刺激の前後で、Cdh1(E-cadherin)の発現が4-6倍も上昇することが分かったので、LIF/BMP4で刺激したFAB-SCsにおいてE-cadherinの発現をノックダウンしたところ、急速に分化することが示され、また、FAB-SCsにおいてE-cadherinを強制発現させてみたところ、三胚葉全てに由来するテラトーマを形成できるように変わることが分かり、LIF/BMP4刺激の重要なターゲットはE-cadherinの発現上昇であることが示唆されました。
最後に、ES細胞においてE-cadherinの発現をノックダウンすると、形態がFAB-SCs様に変化し、そのまま増殖するが、形成される胚様体・テラトーマのサイズが減少し、また、Oct4およびSox2の発現は維持されるのに対してNanogの発現が低下することも示しています。




このように、従来の分け方とは異なる、新しい分類の多能性幹細胞株の報告が相次いでいるのです。




2009年の2月には、ケンブリッジ大学のAustin Smithらのグループにより、エピブラストステムセル(EpiSCs)にKlf4を導入し、Mek/Erk、GSK3阻害剤存在下で培養することでiPS細胞を誘導したという報告がありました。
再生医療には関係ない(不妊治療には関係あるかも)のですが、キメラを作ってジャームに載せることに興味がある人にとっては重要になってくると思われます。

Development. 2009 Feb 18. [Epub ahead of print]
Klf4 reverts developmentally programmed restriction of ground state pluripotency.
Guo G, Yang J, Nichols J, Hall JS, Eyres I, Mansfield W, Smith A.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19224983?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum

由来する組織が違うES細胞とEpiSCsは、どちらもコア多能性遺伝子であるOct4, Sox2, Nanogを発現しており三胚葉分化能を持つのにも関わらず、前者はキメラに寄与できるのに後者はキメラに寄与できません。
そこで、Smithらは、これら二つの細胞種間の相互変換が可能であるかについて調べました。
まず、Oct4-GFP-IRES-puro r マウスのE5.75胚からOct4-GFPレポーターを発現するEpiSCsを樹立し、Oct4, Nanogを発現するが、Stella(Dppa3)を発現せず、着床後マーカーであるFgf5, T(brachyry), Leftyが発現していることを確認しました。
また、雌雄両方のEpiSCsを樹立し、雌のラインでのX染色体不活化を、H3K27のメチル化を指標に確認しました。
さらに、胚盤胞にインジェクションしても急速なOct4-GFPの発現低下が起こりICMに寄与できないこと、ES細胞の培養条件下で培養するとOct4発現を失い分化することも確認しました。
そこで、「ES細胞における自己複製の基底状態」、「シグナル阻害によるiPS細胞樹立法の改善」で紹介したように、以前からSmithらのグループによって報告されている、Mek/ErkシグナリングおよびGSK3の阻害とLIFの組み合わせによる血清フリーの培養条件(2i/Lif)を試してみました。
すると、EpiSCsは、2i/Lif培地中で培養すると大部分が分化し、Oct4-GFPを発現する細胞が3日以内に無くなってしまうことが分かりました。(129系統のEpiSCsでも同様)

一方、ES細胞とEpiSCsはそれぞれ初期と後期のエピブラスト由来なので、ES細胞は容易にEpiSCsに変化できるのではと考えました。
実際、ES細胞はEpiSCsの培養条件下で培養しても増殖でき、継代後には比較的均一なEpiSCs様の形態を示すようになり、Oct4の発現を維持しつつ、Nanogの発現低下およびRex1(Zfp42), Nr0b1, Klf4の抑制といったEpiSCs様の遺伝子発現を示すようになることが分かりました。
さらに、雌のラインでは、Oct4の発現とX染色体の不活化が同時に見られるようになることも確認しました。
(ちなみに、この後、2i/Lifコンディションに戻すと、時々はES細胞様コロニーが得られるが、EpiSCs培養条件下で4回以上継代するとリカバリーできなくなることも示しています)

次に、ES細胞からEpiSCsへの分化の間に顕著な発現抑制が見られる遺伝子の1つであるKlf4に注目しました。
まず、Klf4はES細胞においてはLif/Stat3シグナリングにより発現誘導を受けましたが、EpiSCsでは受けないことを示しました。
また、ES細胞においてKlf4を強制発現させると、以前の報告と同じく、Lif依存性が極端に低下することを確認した上で、EpiSCsの培養条件下で培養してみました。
すると、通常のES細胞で見られる反応と同様に、単層で増殖するようになり、Oct4の発現を維持したままES細胞特異的マーカーが抑制されることが分かり、Klf4の強制発現だけではEpiSCsへの変化を抑制できないことが示唆されました。
ただ、EpiSCs培養条件下で10回以上継代培養を行っても、2i/Lif培地に移すと、低い効率ではあるものの、ES細胞様コロニーが得られることも分かったことから、Klf4は、少数の未分化ES細胞の長期持続を許容するか、EpiSCsの一部を脱分化しES細胞様に戻す能力を持つことが示唆されました。

そこで、どちらが正しいのかを調べるために、piggyBac(PB)ベクターを用いてEpiSCsにKlf4を導入し、ES細胞様に戻るかどうか調べました。
この際、CAGプロモーターによって発現制御を受けるDsRed-IRES-Hygro r およびKlf4をloxP配列で挟み、PBベクターにサブクロしたベクターを使用しています。
Klf4/DsRed発現EpiSCsは、EpiSCs培養条件下では、ES細胞特異的マーカーが活性化せず、X染色体も不活化されたまま維持されていたことから、Klf4の発現だけではリプログラミングできないことが分かりました。
そこで、遺伝子導入後、48もしくは72時間で2i/Lif培地に移したところ、通常のEpiSCsと同様に、分化し、細胞が死んでしまいました。
しかし、2i/Lifで培養して4日経つと、ES細胞様のOct4-GFPポジティブコロニーが複数現れ、その効率は0.1-0.2%であることが分かりました。
また、EpiSC培養条件下で増殖しているKlf4安定的強制発現EpiSCsを2i/Lif条件に移した場合、トランスフェクション後に直接移した場合と同様の動態を示す一方、効率は良くなり、~1%の効率でES細胞様コロニーが得られることも分かりました。

2i/Lifで培養してから72時間後に、出現したコロニーを12個ピックアップしたところ、10個が未分化形態とOct4-GFPの安定な発現を維持したまま増殖できました。
これらの細胞株(Epi-iPS細胞と命名)は、Stella, Klf2などのES細胞マーカーを発現し、Fgf5, brachyryの発現およびX染色体の不活化が失われていることが確認され、キメラ形成に寄与でき、ジャームライントランスミッションすることも確認されました。
また、PBベクターの挿入コピー数を調べたところ、1-3個であることが分かりました。

次に、Klf4がEpi-iPS細胞の維持に必要なのか調べるために、DsRedポジティブクローンにCre発現ベクターを導入し、DsRedネガティブ細胞を単離して、Klf4が除去されたEpi-iPS細胞を樹立しました。
この細胞は、ES細胞様の形態、Oct4-GFP発現、ES細胞マーカー遺伝子の発現を維持しており、X染色体の不活化も見られず、キメラ形成能、ジャームライントランスミッション能も維持していることが示されたことから、Epi-iPS細胞ではリプログラミングが完了しており、継続的な外来遺伝子発現や挿入変異に依存しているものではないことが示されました。




このように、今後、ICM様のES細胞と、エピブラスト様のEpiSCsの間で、自由に行き来できるような技術が開発され、その時々の目的にあった細胞を調整することが可能になるのではないかと考えています。
また、これらの細胞種の関係を解明していくことで、多能性とはなんぞや?リプログラミングとはなんぞや?という謎の解明にも繋がっていくのではないかと考えています。




(5月22日追加)
マサチューセッツ工科大学(MIT)のJacob Hanna, Rudolf Jaenischらのグループにより、ES細胞を得ることが難しい系統である非肥満糖尿病(NOD)マウスからES細胞やiPS細胞を樹立し、その特性を解析したという論文が発表されました。
多能性幹細胞が得られやすい系統と得られにくい系統からiPS細胞を樹立した時の多能性状態の特性はどんなものか?
エピブラスト様幹細胞とICM様幹細胞の細胞状態を規定するのに関連する分子決定因子は何か?
ある系統が、どちらかの多能性状態に適応し、もう片方に適応できない能力に対して、そのような決定因子は影響を与えうるのか?
もしキーとなる分子決定因子が安定化されるか中和された場合、代わりの多能性状態に適応されるのか?
という疑問に迫っています。
少しマニアックなので、詳細記事上げるか悩みましたが、個人的には一番興味があることで、今後重要になると考えているのでアップすることにしました。

Cell Stem Cell. 2009 May 6. [Epub ahead of print]
Metastable Pluripotent States in NOD-Mouse-Derived ESCs.
Hanna J, Markoulaki S, Mitalipova M, Cheng AW, Cassady JP, Staerk J, Carey BW, Lengner CJ, Foreman R, Love J, Gao Q, Kim J, Jaenisch R.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19427283?ordinalpos=15&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum

Jaenischらはまず、ドキシサイクリン誘導レンチウイルスを用いてNODマウスおよび129マウスのMEFにOct4, Sox2, Klf4, c-Mycの4遺伝子を導入し、ドキシサイクリン存在下で培養したところ、12日後からコロニーが現れました。
しかし、129系統のiPS細胞はドキシサイクリンを除いて20-30日経ってもES細胞様の形態を維持していたのに対して、NOD系統ではドキシサイクリンを除くと分化してしまうことが分かりました。
ドキシサイクリン添加後、d16でコロニーをピックアップして、ドキシサイクリン存在下で45日間に渡って継代を繰り返した後、ドキシサイクリンを除いたところ、129由来のiPS細胞ではほとんど(19/24)がNanogポジティブを維持できたのですが、NOD由来のiPS細胞は120ラインすべてが分化してしまいました。
ちなみに、ドキシサイクリン依存的なNOD-iPS細胞は、ES細胞マーカー発現、Oct4, Nanogプロモーター領域の脱メチル化、内因性の多能性遺伝子の発現、テラトーマ・キメラ形成により、多能性を持つことが確認されました。

次に、NOD-iPSの多能性を安定化させる外来因子を探るために、恒常的な発現が可能なレンチウイルスを用いて、Oct4, Sox2, Klf4, c-Mycのいずれかを、ドキシサイクリン依存的なNOD-iPS細胞に導入し、ドキシサイクリンを除いた後の増殖能を調べてみたところ、Klf4もしくはc-Mycを導入した場合(Oct4もしくはSox2を導入した場合は×)、ドキシサイクリン非依存的なNOD-iPS細胞株を樹立できることが分かりました。
このNOD-iPS細胞は、多能性マーカーポジティブであり、テラトーマを形成できることも確認されました。
また、ES細胞やiPS細胞ではサイレンシングを受けてしまうレトロウイルスを用いて遺伝子導入を行った場合では、NODマウスからiPS細胞を得ることができず、c-MycとKlf4の発現継続の必要性と一致しました。
逆に、Oct4, Sox2, c-Mycをレトロウイルスで導入し、Klf4を恒常発現レンチウイルスで導入した場合や、Oct4, Sox2, Klf4をレトロウイルスで導入し、c-Mycを恒常発現レンチウイルスで導入した場合は、容易にNODマウスからもiPS細胞を得られることが分かりました。
また、恒常発現レンチウイルスの代わりにドキシサイクリン誘導レンチウイルスを用いた場合では、ドキシサイクリン存在下でのみNOD-iPS細胞が樹立できることが確認され、NOD-MEFの代わりにラットの線維芽細胞を用いた場合でも、同様のコンディションでiPS細胞が得られることが分かりました。

次に、Klf4もしくはc-Mycの恒常的な発現がNODマウスにおけるES細胞樹立を可能とするのかを調べるために、NODマウスの胚盤胞由来のICMアウトグロースに、恒常発現レンチウイルスを用いてKlf4もしくはc-Mycを導入してみました。
すると、通常のマウスES細胞培養コンディションで、ジャームライントランスミッションできるようなES細胞が樹立できるようになることが分かりました。

次に、このようなKlf4やc-Mycの効果を、小分子で置き換えれないかを調べるために、ドキシサイクリン依存的なNOD-iPS細胞をドキシサイクリンなしで培養し、Wnt3a(「Wntシグナリングの刺激によるiPS細胞樹立効率の改善」を参照), CHIR99021(CH、「シグナル阻害によるiPS細胞樹立法の改善」を参照), Kenpaullone(KP、「化学的・遺伝学的手法を組み合わせたiPS細胞の樹立 」を参照)の3分子を添加することの影響を調べました。
すると、これらの3つのコンディションはすべて、NOD-iPS細胞のドキシサイクリン非依存的な増殖をサポートできることが分かりました。
また、PD184352(PD)と、CHもしくはBIOとの組み合わせ(2i、「シグナル阻害によるiPS細胞樹立法の改善 」を参照)でも、KPとCHを共に用いた場合(KP/CH)と比べると単一細胞コロニー形成能は落ちるものの、ドキシサイクリン非依存的なNOD-iPS細胞を容易に得ることができました。
さらに、KPを用いた場合と同様に、PD/CHを用いた場合でも、iPS細胞樹立におけるKlf4の外来発現の必要性を代替できることも分かりました。
また、KP/CHを添加することにより、マウスES細胞培地でラットのiPS細胞が樹立・増殖できることも分かりました。
なお、KP/CHはERKリン酸化を阻害しないことから、ERK阻害なしに多能性の安定化が起こったことが示唆されました。

次に、NOD-ES細胞樹立に対するこれらの小分子の影響を調べたところ、KP, KP/CH, PD/CHのどれを用いた場合でもジャームライントランスミッションするようなES細胞が得られることが確認されました。
また、これらのNOD-ES細胞もしくはNOD-iPS細胞は、129系統のES細胞と同じレベルで内因性のKlf4とc-Mycを発現していることも示されました。
あと、NOD-ES細胞を用いて、相同組換えによるターゲティングが可能であることを示しています。

ここまでの実験で得られたNOD幹細胞は、ICM様の多能性を示しましたが、外来因子(ドキシサイクリンや阻害剤)を除いて継代を行うと、~0.3%の細胞が扁平な形態を持つ異なったコロニーを形成することが分かりました。
これらのコロニーはトリプシンで単一細胞に解離すると増殖できず、コラゲナーゼ処理やメカニカリーダイセクトによって塊で継代し、bFGF存在下で培養することにより増殖でき、EpiSC様の形態を示すことから、EpiSC-like iPS細胞と名付けました。
EpiSCsは、NODマウスのエピブラストからも樹立できることが知られており、外来因子なしでNODマウスのICMからもEpiSC様細胞が得られるかどうかを調べてみたところ、メカニカリーダイセクトで継代後、15% FBS, 5% KSR, LIF, Mek1阻害剤であるPD98059, hFGF2を含むepiESM樹立培地で培養することにより、EpiSC様のES細胞を樹立できることが分かりました。
なお、NOD EpiSC-like iPS細胞およびES細胞は、多能性マーカーを発現し、テラトーマを形成できるが、キメラは形成できないことを確認しています。
一方、同様の手法を129系統の胚に適用したところ、典型的なマウスES細胞が樹立され、キメラ形成に寄与でき、ジャームライントランスミッションすることが分かりました。
また、NOD EpiSC-like ES細胞およびiPS細胞は、EpiSCsと同様に、近位エンハンサーによってOct4の発現が制御されているのに対して、KP/CHで増殖するNOD ES細胞およびiPS細胞は、129 ES細胞やマウスES細胞培地・epiESMで増殖するiPS細胞と同様に、遠位エンハンサーによってOct4の発現が制御されていることが示されました。
さらに、STAT3リン酸化を阻害するJAK阻害剤もしくはActivin/Nodalシグナリングを阻害するALK阻害剤を用いて、KP/CHで増殖するNOD ES細胞の維持はLIF/STAT3シグナリングに依存しているのに対して、NOD EpiSC-like細胞はActivin A/Nodalシグナリングを必要とすることを示した上、グローバルな遺伝子発現解析によっても、NOD EpiSC-like ES細胞およびiPS細胞は、EpiSCsと類似しており、129 ES細胞とは異なることを示しました。
これらより、NOD幹細胞は、ICM様の多能性状態を維持する外来因子を除去した時、LIFや血清・フィーダー由来の成長因子があるにも関わらず、EpiSCsと高度に類似した多能性状態を示すように適応するのに対し、129 ES細胞は、epiESMコンディションでもICM様の多能性状態を示し、LIF/STAT3経路に依存していることが示唆されました。

次に、これらの外部刺激によって、二つの異なる多能性状態を行き来できるようになるのかどうかを調べました。
まず、129 EpiSCsに、Klf4もしくはc-Mycをドキシサイクリン誘導ベクターで導入し、ドキシサイクリン存在下でマウスES細胞培地で培養したところ、小さくて丸いコロニーを形成するようになり、トリプシンで単一細胞に解離してMEFフィーダー上にまくと、典型的なマウスES細胞様の形態を示しました。
こうして樹立されたEpi-iPS細胞は、7-12日後にドキシサイクリンを除いても、安定なままマウスES細胞様の形態を示し、Activin/NodalシグナリングではなくSTAT3シグナリング依存性で、遠位エンハンサーによってOct4の発現が制御されており、グローバルな遺伝子発現も129 ICM-like ES細胞と類似していて、ジャームライントランスミッションできることが示されました。
また、EpiSCsからiPS細胞への変換は、Klf4もしくはc-Mycの強制発現の他、KPもしくはKP/CHもしくはPD/CHの添加でも可能なことを見出しました。
ただし、その効率はかなり悪く(~2%)、様々な分化段階にある造血系細胞からのリプログラミング効率の違いの範囲内にあることも分かり、リプログラミング効率は、ドナー細胞の分化状態によって決定されるのではなく、むしろ、サイトカイン刺激・細胞周期の割合・追加のリプログラミング因子による増強に依存するものであることが示唆されました。

最後に、NOD EpiSC-like細胞に対して同じような操作を行い、ICM様の多能性状態に変わるかどうかを調べました。
まず、培地からKP/CHを除き、epiESMで8回以上継代することで、NOD-ES細胞からNOD EpiSC-like ES細胞を樹立し、ドキシサイクリン誘導ベクターでKlf4を導入してドキシサイクリン存在下で培養を行ったところ、容易にEpiSC様からICM様への変換が起こることが分かりました。
しかし、そのICM様の多能性状態は、ドキシサイクリン存在下、もしくは代わりにKP/CHを添加した時のみ安定であることが分かりました。
また、Klf4もしくはc-Myc導入の代わりに、KP/CHもしくはPD/CHを用いた場合でも同様な結果が得られることを示しています。




いや~さすが、ヤニッシュ。。
個人的にショッキングな論文でしたが、これだけやられると完敗と言わざるを得ません…
なんでこんな低い効率でしか、EpiSCからESCへの変換が起こらないのか?という点がおもしろいですね。




(09年8月30日追加)
ケンブリッジ大学のJose Silva, Austin Smithらのグループにより、Nanogを導入することによりEpiSCsからiPS細胞を作製したという実験を含む論文が発表されました。

Cell. 2009 Aug 21;138(4):722-37.
Nanog is the gateway to the pluripotent ground state.
Silva J, Nichols J, Theunissen TW, Guo G, van Oosten AL, Barrandon O, Wray J, Yamanaka S, Chambers I, Smith A.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19703398?ordinalpos=5&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum

第二世代マウスiPS細胞 」にて詳細記事を書いていますので、是非ご覧下さい。




(10月10日追加)
ケンブリッジ大学のM. Azim Suraniらのグループにより、5.5-7.5日齢のマウス胚由来のエピブラストからLIF-STAT3シグナリングに反応するES細胞様細胞(reprogrammed epiblast ES-cell-like cells, rESCsと命名)を樹立したという論文が発表されました。
上記で紹介したFAB-SCsの樹立といい、この論文といい、ICM(厳密には原始外胚葉(primitive ectoderm))からはES細胞、エピブラストからはエピブラストステムセル(EpiSCs)が樹立されるという定義がいよいよ崩れてきましたね。

Nature advance online publication 8 October 2009
Epigenetic reversion of post-implantation epiblast to pluripotent embryonic stem cells
Siqin Bao, Fuchou Tang, Xihe Li, Katsuhiko Hayashi, Astrid Gillich, Kaiqin Lao & M. Azim Surani
http://www.nature.com/nature/journal/vnfv/ncurrent/abs/nature08534.html

Suraniらはまず、Oct4-ΔPE-GFPレポーター(Oct4の遠位エンハンサーのみを持ち、原始外胚葉, PGC, ES細胞では発現するが、エピブラストやEpiSCsでは発現しない)を持つE5.5-E7.5のマウス胚のエピブラストを単離し、PGCやPGC前駆細胞が存在するmost proximal regionおよびouter visceral endodermを取り除きました。
以前の研究ではエピブラストをそのまま用いていたのですが、Suraniらは得られたエピブラストをさらにトリプシンで処理して単一細胞にまで解離することで、細胞間相互作用をなくし、新しいシグナリング誘導転写ネットワークの構築を促進させました。
この細胞をLIFおよびFCSを含む培地でMEFフィーダー上で培養したところ、4-7日後に大きなコロニーが現れ、これらはアルカリフォスファターゼポジティブ細胞を多く含むことが分かりましたが、Oct4-ΔPE-GFP発現は検出されず、遠位エンハンサーは依然として不活化されていることが示唆されました。
この培養エピブラスト(cultured epiblast, cEpi)コロニーは、LIF-FCS存在下でコラゲナーゼ処理の後、検出できる変化なしに少なくとも20回継代できました。

14-35日間のcEpi細胞の培養の後、cEpiコロニーの中にGFPポジティブ細胞のクラスターが現れ始め、Oct4-ΔPE-GFPレポーターの遠位エンハンサーが活性化されたことが示唆されました。
cEpiコロニーをトリプシンでばらばらにして、さらにGFPポジティブ細胞を培養したところ(トリプシン処理はcEpi細胞には有害だが、ES細胞様細胞の増殖は促進すると考えられるため)、さらなる継代の後、均一にGFPを発現するES細胞様細胞が樹立され、reprogrammed epiblast ES-cell-like cells(rESCs)と命名しました。
rESCの樹立効率は22-36%と比較的高率であり、極一部のエピブラスト細胞由来であるとは考えづらく、E5.5-E7.5のどの時期の胚由来であっても効率は変わりませんでした。
また、エピブラスト細胞は最初、Oct4-ΔPE-GFPが均一にネガティブであり、N-Cadherinと不活化X染色体がポジティブであることが確認されました。

次に、逆戻りプロセスに関して知見を得るために遺伝子発現の変化を調べたところ、cEpi細胞はEpiSCsと同様、エピブラストに類似しており、Eomes, Fgf5, Sox17, Gata6, Lefty1, Cer1を強く発現しているが、Stella(Dppa3), Pecam1, Rex1(Zfp42), Fbxo15はほとんど発現が見られないのに対し、rESCでは、前者の発現消失と同時に後者の発現上昇が見られ、Oct4, Sox2, Nanogの発現上昇も見られました。また、EomesとLefty1の発現は、継代後期(P24)と比べ、継代初期(P4)のrESCでわずかに高く、エピブラストの“記憶”が消えていくことが示唆されました。
また、グローバルな遺伝子発現も、rESCはES細胞と類似しており、cEpi細胞やEpiSCsとは異なっていることが確認されました。
これらの変化はOct4-ΔPE-GFPレポーターの遠位エンハンサーの活性化と同時でした。

次に、LIF-STAT3シグナリングがリプログラミングに重要であるのか調べました。
まず、cEpi細胞においてSTAT3がリン酸化されていることが分かり、LIFシグナリングに反応していることが示唆されました。
また、STAT3のtyrosine 705のリン酸化を阻害するJAK阻害剤Ⅰを添加すると、cEpi細胞は最初は発生できるが段々と分化していき、rESCが樹立できないことが分かり、LIF-STAT3はcEpi細胞からrESCへのリプログラミングと増殖に決定的であることが分かりました。
また、JAK阻害剤の存在下でrESCを培養すると、cEpi様の転写状態に逆戻りすることも分かりました。

次に、rESCへの逆戻りの間のエピブラストにおけるエピジェネティックな変化を調べました。
まず、不活化X染色体の再活性化が見られ、これと一致して、E6.5のエピブラストでは全て(96/96)でH3K27me3の蓄積が見られたのに対し、12日後には、ほとんど全て(99/100)のcEpi細胞がH3K27の‘スポット’を持つようになり、それは25日後には62%(37/60)、35日後には9%だけ(7/80)にまで減ることが分かり、H3K27の‘スポット’が均一にないrESCに向けて、エピジェネティックな変化が継続して起こっていることが示唆されました。
また、エピブラストでは抑制されているが原始外胚葉やES細胞では活性化しているStellaおよびRex1のプロモーター領域のDNAメチル化について調べたところ、エピブラストでは脱メチル化されているが、cEpi細胞では一時的にメチル化されており、rESCでは再び脱メチル化されていることが分かり、rESCにおけるStella-GFPレポーターの活性化と一致しました。
また、いったん樹立されると、rESCのエピジェノタイプは安定的であり遺伝でき、不活化X染色体、Stella, Pecam1のメチル化、抑制といったエピブラストの特徴を維持しているEpiSCsとは異なっていました。
さらに、E6.5のエピブラストでは、E-CadherinおよびN-Cadherinの発現が均一に見られるのに対し、これらの細胞をトリプシン処理するとこれらの接着分子が消失し、引き続き培養すると、cEpi細胞においてN-Cadherinのヘテロな発現が見られるようになるが、さらに培養を続けると、N-Cadherinが完全に失われ、rESCにおけるE-Cadherinの均一な発現に取って代わられることが分かり、LIF-STAT3がE-Cadherinの発現上昇を促進することと一致しました。

次に、rESCが初期PGC由来でないことを、PGCやPGC前駆細胞が存在するmost proximal regionを取り除いたこと、E7.5エピブラストは新たにPGCを作り出す能力を失っていること、PGCは増殖とEG細胞への脱分化にbFGFとSCFを必要とするが、cEpi細胞の培養に用いられる培養条件では生き残れないこと、rESCはEG細胞とは異なりインプリンティング遺伝子のメチル化を維持していることを証拠に否定しています。

さらに、activin/bFGF存在下で樹立されたEpiSCsからも、LIF-FCSに反応してrESCへの逆戻りが起こり得るのか調べるために、Oct4-ΔPE-GFPレポーターを持つpassage 20のEpiSCs株と、X-GFPレポーターを持ち、FACSで不活化X染色体を持つものだけを分けたpassage 23のEpiSCs株の二つを用いたところ、培養してから10-20日間で、GFPポジティブな細胞が現れ始め、これからrESCが樹立できることが分かりました。
X-GFPレポーターの再発現はX染色体の再活性化を示唆しており、さらに、安定的に抑制されていたStellaとRex1が脱メチル化を受け、再活性化されることが示されました。
これにより、外来の転写因子なしに、EpiSCsの逆戻りはLIF-STAT3の反応で起こりうることが分かりました。

最後に、ROSA-LacZレポーターを持つエピブラスト由来のrESCを用い、キメラに寄与でき、ジャームライントランスミッションすること、継代初期rESCはE6.5胚の胚体外外胚葉(栄養外胚葉派生物)に寄与できるが、継代後期rESCでは寄与できず、rESCにおけるエピブラストの一時的な記憶が転写とエピジェネティックな状態の進行する変化に伴って消失することが示唆されました。
また、EpiSCs由来のrESCでもキメラに寄与でき、E13.5胚の生殖系列にも寄与できることを示しています。




Austin SmithらやRudolf Jaenischらの報告とは異なり、LIF/STAT3シグナリングの活性化だけでEpiSCsからES細胞への変換が起こるということですが、どちらが正しいんだろう…
マウス系統や用いた血清の差とかが関連していて、再現性とれないとかあるかも?
それにしても、StellaやRex1がエピブラストでは脱メチル化されているが、cEpiではメチル化を受けるという部分が興味深いですね。
LIF/STAT3経路が活性化していても、少し分化は進んじゃうけど、なんとか止まる。でもその間にエピジェネティックなゆらぎを受ける細胞が出てきてリプログラミングを受けるという感じかな。
22-36%と、かなり高率なのもなぜなのか気になります。EpiSCs由来だと何%なのか書いてませんが、かなり低いんでしょうか。。