光と闇のフォークロア~sideキョーコ(8-2)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「ティア!よけろ!」

「え?」



 味方の叫び声に振り返ろうとした瞬間。

 身体が突然、魔王のほうへ引き寄せられた。



「……い…った…」



 そのまま彼の背後に引かれ、あまりの衝撃に、受け身を取る事も出来ずに倒れこんでしまう。

 そして、振り返った瞬間に目の前に飛び込んでくる……。



「う…そ、でしょ?」



 魔王の……。『カイル』の、姿。

 ゆっくりと膝をつき、床へと倒れ込む彼をただただ、茫然と見つめた。



「いやぁぁ!!」



 叫んで駆け寄ろうとした。でも、うまく立つことができない。



 倒すべき相手。憎むべき敵。

 光の勇者として、この世から葬り去ること。それだけを真実だと思い、走ってきたこの旅路。

 この瞬間は、これから始まる光溢れる世界への喜びの時になるはずだった。

そう疑うことなく進んできたのだ。



 なのに……。



「……っ…ティ…ア…」



 苦しげに、でも弱く微笑んでくれる『魔王』を前に、涙しか出てこない。



 ―――こんなの、光の勇者として、間違っている…―――



 『ティア』は高潔な人間だ。争いのない、平和な世界を夢見てきた。皆が笑顔で、誰もが幸せになる世界を作るためにここまできたのだ。



 これは喜ばしい結末。

 『魔王』は倒れ、世界は光に溢れる時がくる。



「魔族は…力のあるものに…従う…。だから、その首魁…である、俺、を…倒した…君達に、これ以上の…戦いは…仕掛けて…こな…い」



 『カイル』が願っていたのも同じ光の世界。自身がこの世からいなくなることで、望む世界を手に入れようとしている。

 

二人が同じ想いで描いた結末は、互いにとって願った通りの世界になるはずだ。



 なのに。涙が、止まらない。抱きしめる男の頬に落ち続ける涙を、止めることができない。

 ここは、笑わなきゃダメなのに。

 

 『カイル』が望んだ世界は、『ティア』が望んだ世界でもあるの。だから、光の勇者である『私』は、皆が幸せで、笑顔の溢れる世界を誰よりも望まなきゃいけないの。



「ティア、目が霞んで…君の顔が見えないんだ…近くに…もっと…近くで…顔を見せて…」

「これで…いい?カイル…っ!!」



 穏やかな笑顔は、いつもの優しい『カイル』と敦賀さんを思い出させる。

 死の淵にあるのに、幸せそうに微笑む彼の顔を、私こそが滲んだ視界で全然見えない。だから、ちゃんと彼の顔を見たくて近付いた。











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