7/31http://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10605496381.html 以来ですので、今月初めての「第2外国語への手引き」になります。
本日は「非人称構文」。但し、英語・フランス語・ドイツ語等では「仮主語構文」とも言われます。
この呼ばれ方の差異は何を意味するのでしょうか?
さっそく例文を見てみましょう:
(独)Es ist schwer, die Wahrheit zu sagen.
(英)It is difficult to tell the truth.
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(仏)Il est difficile de dire la ve'rite'.
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(伊)E` difficile dire la verita`.
(西)Es di'ficil decir la verdad.
ドイツ語・英語・フランス語にはそれぞれes, it, ilという仮主語が必要なのに対して、フランス語と同じロマンス語であるイタリア語、スペイン語などでは仮主語が必要ありません。仮主語が無い訳ですから、イタリア語やスペイン語で仮主語構文とは言えないのです。
この違いは、スペイン語やイタリア語が複雑な人称変化を残しているのに対し、上の3言語においては人称変化が単純化されたために主語が必要になってしまった事によるものです。
※英語・フランス語の人称変化の消失・退化については、本シリーズ第2回http://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10507556553.html も御参考に。
それにしても、ドイツ語の「zu不定詞」、英語の「to不定詞」につられているのか、「原形不定詞」のはずのフランス語が「de 不定詞」”もどき”になっている(注:その様な文法事項は有りません)のも興味深いです。(イタリア語、スペイン語は問題なく原形不定詞で大丈夫です。)
おおがき談義でも「英語はドイツ語とフランス語の中間」http://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10614231648.html という話が出て来ましたが、例え独・仏でベースとなる言葉が違っていても(英・仏・伊・西で語源を同じくする単語が並んでいる事に注目)、構文のレベルで共通点が出て来るというのは面白いのではないでしょうか。
参考文献:伊藤太吾著「フランス語・イタリア語・スペイン語が同時に学べる本」,ナツメ社,2006.