今回は「第2外国語への手引き第27回」で紹介したフランス語編http://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10605382590.html の続きです。
そしてこのシリーズ「ロマンス語の規則動詞とは何か」の一旦の締めと致します。
(4)第2群規則活用以外の-ir動詞にも規則性の高いものが有る。
不定形(原形)が-irで終わる動詞、いわゆる-ir動詞のうちで、「(直説法現在の)1人称複数が-ssonsで終わる」ものが第2群規則活用動詞でした。
それはそれで良いのですが、それ以外-ir動詞は「不規則動詞」という扱いになります。
しかしながら、その中にもかなり規則性の高いものが有ります。
例えばcourir(走る)を見てみましょう:
<直接法現在>
1人称単数 cours
2人称単数 cours
3人称単数 court
1人称複数 courons
2人称複数 courez
3人称複数 courent
現在分詞はcourantで、半過去・接続法現在も1人称複数から語幹を作ります:
<直接法半過去> <接続法現在>
1人称単数 courais coure
2人称単数 courais coures
3人称単数 courait coure
1人称複数 courions courions
2人称複数 couriez couriez
3人称複数 couraient courent
むしろ直接法現在・半過去・接続法現在、そして直接法未来・条件法現在(これらの語幹は不定形の語幹に基づく)も含む時制で語幹"cour"が揃っているという点で、これは第2群規則活用動詞よりも規則的です!
この様な動詞を「不規則活用動詞」としてしまうのはおかしい!
・・・そう考える人も多いのでしょうか。確かに直接法現在で以下の様な語尾をもつグループを「共通活用語尾グループ」と言う場合が有るのです:
1人称単数 -s
2人称単数 -s
3人称単数 -t
1人称複数 -ons
2人称複数 -ez
3人称複数 -ent
いかがでしょうか?今回のcourirはおろか、前回紹介した第2群規則活用動詞(finirなど)の全て、そして-ir以外の語尾を有する動詞もこのグループに入ってしまうものが多く有ります。
でも、これを規則動詞・・・という訳にもいかないのです。
(5)共通活用語尾グループの「不規則性」をどう見極めるか。
「共通活用語尾グループ」に入ってしまった次の動詞を見てみましょう:
boire(飲む)の<直接法現在>
1人称単数 bois
2人称単数 bois
3人称単数 boit
1人称複数 buvons
2人称複数 buvez
3人称複数 boivent
この様に、-ir動詞以外もこのグループに入るものが多く有ります。その意味では学習上は有益な指針なのですが、ここで強調したいのは「語幹が3種類有る事」です。
実はこの共通活用語尾グループ、語幹が「1種類のもの」、「2種類のもの」(1・2人称複数が異なる語幹)、そして上述の様な「3種類のもの」の3通りが有ります。語尾は共通ではあるものの語幹は共通とは限らず、不規則性はかなり高いと言えましょう。
不定形と1人称複数の形を見ただけで「共通活用語尾」と分かる訳でもありませんし、さすがに第2群規則活用動詞以外の「共通活用語尾グループ」を規則動詞とは言えません。でも、その3通りの区別ぐらいは何とかなりそうです。
「大体」の目安を申しますと、やはりこれも1人称複数の形です。
上の色分けを参考にするとこうなります:
・1人称複数の形(または現在分詞)と不定形の語幹が同じ→「語幹1種類型」
・1人称複数の形に「不定形には無い子音」が有る(または不定形に有る子音が欠けている)。→「語幹2種類型」
・1人称複数の形に「不定形には無い子音」が有り(または不定形に有る子音が欠けておfり)、かつ直前の母音が異なる。→「語幹3種類型」
「不定形に有る子音が欠けている」パターンとしては次の動詞を見ればよいでしょう:
prendre(取る)の<直接法現在>
1人称単数 prends
2人称単数 prends
3人称単数 prend (※dtとはならず、tが取れる。)
1人称複数 prenons
2人称複数 prenez
3人称複数 prennent
これらの例も御覧になれば、3人称複数の語幹が「どの様な母音」「どの様な子音」で構成されるかは見当がつくのではないかと思います。
やはり、この場合でも1人称複数の形を観察する事がキーポイントの様です。
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以上です。これにて、シリーズ「ロマンス語の規則動詞とは何か」を終わりたいと思います。