福岡さん、お一ついかが?!(笑) Perfumeの音響チームはこんなに凄い技術を内に秘めて・・① | 音楽三昧 ・・・ Perfumeとcapsuleの世界

福岡さん、お一ついかが?!(笑) Perfumeの音響チームはこんなに凄い技術を内に秘めて・・①

さて、前回のエントリーではPA界に革命をもたらすスピーカーシステムである、『MLA』(Multi- cellular Loudspeaker Array)にご紹介した。

そしてそれを所有しているのがPerfumeのLiveパフォーマンスを音響面で支えてきた "MSI JAPAN" であり、今後のアリーナやスタジアム、ドームクラスの会場における有用性について取り上げた。





それで、この一連の話はどうしても"Perfumeを無理やり絡めた、自己満足な趣味的エントリー" と揶揄されてもおかしくない内容であり(苦笑)、正直言ってこのネタで引っ張るのもいかがなものかと個人的に思っていた(苦笑)。




しかしこのBLOGをご覧の方々から、『MLA』の技術的解説をしてほしいとの要望が寄せられ・・・・ やはりPerfumeが好きな方々って、音楽や音響に興味がある方々が非常に多いのだなぁ・・・・・。







ということで、界隈の方々のお言葉に甘えて、このネタを引っ張りたいと思う(笑)











まずこれを見て頂きたい。






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通常、従来の線音源方式の"ラインアレイスピーカー"の場合、このような小さなキャビネット(ボックス型エンクロージャー)を10~20個前後、垂直に積み重ねて、一本のラインアレイスピーカーを構成している。

この辺は『MLA』も踏襲しており、10~20個前後のキャビネットを用いるらしい。そしてその遠達性能はなんと150mを軽々超える。

ちなみにSPLは1m計測で低音域140dB、中音域139dB、高音域145dBという尋常ではない音圧だ。そして各帯域ごとの音圧にあまり差がないのが特徴だ(ちなみにSub-WのSPLは150dB/1m)。





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そして、『MLA』は最大24個のキャビネットで一本のスピーカーとして構成され、システムが構築できる(Sub-Wは最大15個のキャビネットを一本単位でリギングできる)。











次にこちらを見ていただきたい。




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これが『MLA』の1個のキャビネットの内部構造だ。既に音響好きの方々ならお分かりだと思うが、帯域を低音域・中音域・高音域の3つ分けて、別々のユニットに担当させる3way方式であり、さらに全帯域すべて "ホーンロード方式" を用いている(超低音域はSub-Wを用いる)。



従来のラインアレイスピーカーは "ダイレクトラジエーター方式" を用いるものが多いが、この方式は能率が比較的悪い。この"ホーンロード方式" では能率が高いため、遠達性能に優れる。




またこの "ホーンロード方式" では軸上においても、軸を外れた場合にも驚くべきほど均一な周波数特性を示す。したがってオーディエンスが多少移動してもその音質は変化しない。




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それで3wayを構成するユニットは低音域が2個のスピーカーユニット(ドライバー)、中音域が2個のユニット、高音域が3個のユニットの合計7個のスピーカーユニットで構成される。




従来のラインアレイスピーカーでは、垂直面に対しての指向性を狭く(5~10°)、逆に水平面に対してはその指向性は広く設計されていた(水平面の指向性は90~140°前後)。

『MLA』においては、もともと水平面の指向性を狭く設計しており、高音域で最大90°となっている。またこの指向性は電気的な手法によってもコントロールができる。

この指向性の含めた、スピーカーから放出される音波の方向性は、その設置角度でコントロールするのが通常だが、この『MLA』は電気的な手法によって音波の方向性、すなわち音波の飛行する方向さえも電気的手法でコントロールできるのが驚きだ。




しかも、この1個の小さなキャビネットには既にCLASS D方式の6chパワーアンプが搭載されている。定格出力3kW(3,000W)で、最大出力はなんと驚きの6kW(6,000W)に達する(民生用であれば、最大出力100W程度が多いので、60倍の性能)。


それで低音域に1ch、中音域に2ch、高音域に3ch分のパワーアンプを割り当てており、それぞれを独立して駆動させるためにDigital Signal Processer(DSP)" も搭載されている。







この "1個のキャビネット内の6系統のスピーカーユニットを個別に6系統のパワーアンプとDSPを用いて、その個々のユニットを完全に独立してコントロールできる" というのを「Multi- cellular方式」と呼称し、このシステムの最大の売りとなっている。









次にこれを見て頂きたい。


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左から2本のシステムは従来のラインアレイスピーカーで、一番右側が『MLA』を表している。




まず、一番初期のラインアレイスピーカーは "シングルゾーン方式" と呼ばれるもので、特に遠達性を考慮したものだった。したがって音圧・周波数特性などはコントロールされるすべてのスピーカーユニットで同一のセッテングとなる。


しかしだ。Live会場の音響特性は会場のエリアで全く違ってくる。



例えば、スピーカーから遠距離のオーディエンスのことを考慮して、高い音圧に設定すれば、近接のオーディエンスにはうるさく感じる。また、反射の影響を受けるエリアと受けにくいエリアではその周波数特性が変わり、そのイコライジングを適宜変更させるべきだ。


しかしこのシングルゾーン方式では、エリアごとの音響特性を考慮したセッティングは全くできない。(個々のスピーカーユニット色が同色なのは、音響特性が同一のセッティングであることを表している)。



その問題点を改善するために、最新のラインアレイスピーカーでは会場を3つのエリアに分けて、そのエリアごとに適した音響特性のセッティングができる手法の"バンドゾーン方式(中央の画像)"が開発された。






それでも、たった3つのエリアだけしか考慮されていない。






今回オレは『Perfume 3rd Tour 「JPN」』は幸運にも複数回参加でき、本当にさまざまな会場、さまざまなエリアでその音響特性を確認することができた。界隈の方々でもそのような方々も多く、同一の会場でもリスニングエリアで違いで、音質の印象が大きく変化したと感じた方々も少なくないと思う。




従来のラインアレイスピーカーでは、その辺に限界があったと思う。





しかしだ、この『MLA』の登場によって、それが根底から覆されようとしているのだ。






一番右の画像が『MLA』なのだが、その色が"まだら" になっているのがお分かりだと思う。このそれぞれの色の違いが、音響特性の違いを表していると考えていただきたい。



これが先ほど述べた "1個のキャビネット内の6系統のスピーカーユニットを用意し、そして6系統のパワーアンプを用いて個々を完全に独立してコントロールできる" という『MLA』の最大の強みだ。



そしてシステムに含まれる、指向性の狭い、最大144個のスピーカーユニットを独立駆動させることで、会場の音響を最大72のエリアに分割担当させることが可能となった。これは"バンドゾーン方式" の24倍分のエリアごとに対しての緻密な制御ができるようになったということだ。




ということはスピーカーから遠距離のオーディエンスに対しては強い音圧、近接のオーディエンスに対しては弱めの音圧をそれぞれ放出するのだが、各エリアのオーディエンスに音波が到達するときには、同一の音圧になるようにコントロールできるということでもある。



また反射の影響で、高音域が強くなるエリアに対しては、あらかじめその周波数を弱くイコライジングし、また逆に反射による干渉の影響で高音域が弱くなるエリアに対しては、あらかじめその周波数を強くイコライジングしてスピーカーユニットから音波を放出すれば、やはり各エリアのオーディエンスに音波が到達するときには、同一の周波数特性になるようにコントロールすることが可能となったのだ。





さらに特筆すべきは、反射や音漏れを考慮して電気的に指向性をコントロールし、"音波を届かせたくないエリアでは音波を消す" ということさえ可能なそうなのだ。これは非常に驚くべきことだ。






要するに会場のエリアを細かく分け、そのエリアごとの音響特性を考慮して、音圧・周波数特性・音波の指向性・音波の発音タイミングなどを緻密にそして適宜にコントロールでき、会場にいるオーディエンスすべてに同一の音質を提供できるのだ。







と・・・・ このように文章にすると簡単に聞こえるが・・・・ オレには途方もないことに思えてくる・・・・・








さて、このBLOGを頻繁に訪れる方々は現在オレはクルマのオーディオのシステム構成を変更し、そのセッティング勤しんでいることはご存じかと思う。



現在オレのシステムは超低音域・低音域・中音域・高音域の帯域分割して、それぞれの帯域を合計7個のスピーカーユニットに分担させている。そしてパワーアンプもそれぞれのユニットが独立駆動できるように7ch分を用いている。





そして7個のスピーカーユニットを駆使して、運転席のリスナーだけに最適な音質を届けようと、音圧・カットオフ周波数及びクロスオーバーポイント・位相・イコライジング・発音タイミングなどの『MLA』と同様のパラメーターをセッテングしているのだが・・・・・ 







それに取り掛かって4ヶ月ほど・・・・ まだ終わりが見えてこない・・・(苦笑)。






要するにオレの場合はたった1エリアに対して、7個のスピーカーユニットを駆動させるセッティングで4ヶ月をかけても、まだ終わりが見えない・・・・。






しかしだ。『MLA』は72エリア、144個のスピーカーユニットをセッティングする・・・・・・







もう想像しただけで・・・・ 吐き気が・・・・(苦笑)。








『MLA』が達成したことは実に途方もないことで、やはりこの技術はPA界の革命となることは間違いないと思う。



しかしこのような途方もないことは人間の能力だけでは当然無理であり、やはり" Digital Signal Processer(DSP)" と呼ばれる半導体技術とコンピュータを駆使し、仮想空間を用いてのソフトウェアコントロールが必須になってくるのだ。









それでは次回のエントリーでは『MLA』のDSP技術とソフトウェアコントロールの壮絶さ(?!・笑)について解説したいと思うが・・・・・









皆さん続けてよろしいですか??(苦笑)










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