映画「冬冬(トントン)の夏休み | 渋谷宙希のブログ

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「冬冬(トントン)の夏休み」
★★★★☆




子供の情景を描いた映画が好きです。

最近、偶然にも子供の映画を連続で観ている気がする。「柳と風」(感想はこちら)や「泥の河」(感想はこちら)など連続して観ている。

今回、紹介する台湾映画「冬冬の夏休み」もそんな子供の情景を描いた映画です。

物語は主人公である少年トントンと妹のティンティンの二人が田舎のおじいちゃんの家で過ごす夏休みを描いたもの。

トントンの母親は病気で入院中、父親は母親の看病で病院を離れることができない。トントンとティンティンの二人は叔父さんに連れられ電車で田舎で町医者をしている祖父のうちで夏休みを過ごすことになる。

地元の子供たちとすぐに打ち解けたトントンは毎日地元の子供たちと遊んで過ごす。

基本的にはそんな物語。

子供たちが川で泳いでいるシーンがとても良かった。

とても暑そうな夏の日差しの中、日本の田舎の風景によく似た台湾の田舎で遊ぶ子供たちの姿にノスタルジーを感じた。

実際にはそんな経験はない気がするんだけど、なぜノスタルジーを感じるのかな?不思議だ。日本人の原風景なんだろうか。DNAに刻み込まれているんだろうか。

他にも、祖父と二人で78回転のレコードを聴きながらアルバムを見るシーンもよかった。

この辺のシーンは日本をが誇る偉大な映画監督である小津安二郎の影響も感じられるシーンだった。実際に監督のホウ・シャオシェンは小津安二郎の生誕100周年を記念した「珈琲時光」という映画を製作している。

ノスタルジックなシーンが印象的だが、この映画はただノスタルジックなだけの映画ではなく、少年が大人の世界へと触れ、少し大人へと近づいてしまう感覚も微妙なタッチで描いている映画でもあると感じた。

子供の世界とは成り立ちの違う大人の美しくない世界、子供の世界と違い純粋ではない世界も描かれており、少年はそんな大人の世界に触れることで少し大人に近づいてしまう心の変化のようなものが表現されている。

少年トントンの年齢はハッキリとわからないが、おそらく11歳か12歳くらいと思われる。もはや、完全に純粋な子供の世界から離れつつある年頃。そんな、少年の視点で見た大人のゆがんだ世界はどう写り、どう感じるのか。とても興味深いテーマです。

自分が子供の頃にはどんなことを感じていただろうか?そんなことを考えます。

大人になってもうずいぶん経ちますが、子供の記憶や感情は忘れたくないな、と思いますね。

大人の世界と子供の世界の中間にいる主人公トントンに対し、妹のティンティンはまだ、かなり幼いので完全に無垢な存在として描かれている。

さらに、知的障害のある女性ハンズも無垢な存在として描かれている。

ティンティンとハンズは子供の世界の視点でものを見ている。だから、他の登場人物たちとは少し距離があり、彼女たちにしか感じることができない何かを感じているような気がしてならない。

そして、この映画を観ると感じるのが台湾と日本の関係。

物語の冒頭、小学校の卒業式のシーンから始まるのだけれど、そこで生徒たちが”仰げば尊し”を合唱している。日本人には馴染み深いこの歌で始まり、物語のラストシーンでは”赤とんぼ”が流れて終わる。

日本が統治していた時代に普及したのだろうか?なんとなく感慨深いものがある。

とにかく、”赤とんぼ”なんてノスタルジーの最たる曲。そんな曲で終わるこの映画は日本人が観ても全く違和感なくノスタルジーを感じることができるとても良い映画でした。



















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