映画「泥の河」 | 渋谷宙希のブログ

渋谷宙希のブログ

音楽、映画、写真、本。趣味のブログです。


「泥の河」
★★★★★

さましく最強の邦画の1本です。

これはもう本当にいい映画だった!文句なしの名作!傑作!!

「泥の河」は宮元輝の小説を小栗康平が監督し映画化した作品。

戦争が終わり10年ほどたった大阪が舞台。

安冶川の川沿いに小さいうどん屋を営む夫婦の9歳になる1人息子"のぶちゃん"の視点を中心に物語は展開される。

ある日、のぶちゃんは近所でみかけない自分と同じくらいの年頃の男の子がいるのを見つける。その少年は川を覗き込んで

「オバケや!オバケや!あいつや!オバケ鯉や!!」

と叫んでいる。

のぶちゃんが川を覗くと、そこには巨大な鯉の影が見える。

オバケ鯉をきっかけに少年と仲良くなるのぶちゃん。

少年の名は"きっちゃん"といい、川に停泊している舟が自分の家だという。

きっちゃんにはお姉ちゃんがいて、名は銀子という。

のぶちゃんはきっちゃの舟に遊びに行った際、銀子に優しくしてもらう。

ハッキリとは描かれてないが、おそらくのぶちゃんはこの時、銀子に恋をしてるのではにだろうか、と感じさせる。

初恋の瞬間をとても優しい視点で描かれていて、もうこのシーンを見てるだけでワクワクしてしまった。

この3人の少年と少女を中心に物語は展開される。

主人公のぶちゃんの家庭もそんなに裕福な家庭でははいが、きっちゃんと銀子の家庭はさらに貧しい環境で育っている。

母親は舟にお客を呼び込み春を売って生計を立てているのだ。

父親は死んでしまっている。

母親の仕事が仕事だけに、世間からは白い目で見られる子供たちが、本当に不憫に思えてします。

しかし、子供たちはどこまでも純粋で心がきれいなのだ。

ちなにみ、このきっちゃんの母親を演じてるのが加賀まりこ。

登場するシーンはとても少ないのだけれど強烈な印象を残している。

とにかく妖艶で美しい。

本当に加賀まりこは美しい女優さんです。この美しさを見るだけでも価値ありですよ。

のぶちゃんがきっちゃんの舟を訪れるシーンもいいんだけれど、この映画でもっともいいシーンと思えるのはきっちゃんと銀子がのぶちゃんのうちのうどん屋に遊びに来るシーンだろう。

のぶちゃんの両親を演じるのは名優田村高廣と藤田弓子の二人。

この二人の演技がとにかく素晴らしい。

特に父親を演じる田村高廣の優しいまなざしがこの映画を支えているといってもいいぐらい。

自分の息子に世間から白い目で見られている家庭の子供たちとはあまり仲良くしてほしくない。という感情と、子供たちに罪は無いという感情が入り混じった複雑な親心を優しく演じている。

父親は

「子供には関係ないこっちゃ。子供はな生まれてきとーて、生まれてきたわけやない。子供は親えらばれへんのや」

と言うのだが、実際は複雑な心境を演じている。

実は女の子がほしかった母親は銀子のことを気に入り、仲良くなる。一緒にお風呂に入ってるシーンでは普段笑顔をあまり見せない銀子の笑顔が見られる。

姉の笑い声をきいたきっちゃんは

「ねえちゃん、わろてるなぁ。わろうてるわぁ」

と、つぶやく。

姉の楽しそうな声を聞くことがとても珍しいのだ。もう、このセリフだけで泣けてくるわ。

子供たちのシーンでもう一つ切な過ぎて泣けるのが、銀子が米びつの米に手を入れてこんなことをつぶやくシーン。

「お米ぬくいんやでぇ。冬の寒いときでもお米はぬくいねん。お米がいっぱい詰まってる米びつに手ぇ入れてぬくもってる時が一番幸せや」

もうね。泣けますよ。書いてる今も泣きそうですわ。

この映画は子供の視点だけではなく、大人の視点も素晴らしいのです。

戦争の生き残りである父親は、みじめに生き残るよりも戦争で死んでた方が幸だったんではないか?と考えている。

「生きとってもやっぱりスカみたいにしか生きられへんのんかなぁ、わいら」


こんなことをつぶやく。

所詮、スカの人生はスカなのか。スカみたいに生きて、スカみたいに死んでいくのか。

そう考える父親の姿もまたせつない。

戦後まもなくの日本が厳しい状況で、ほとんどの人たちは厳しい環境で生きていたのだなぁ、と思うのです。

それから、近所に住む常連のおばあさんのセリフがとても良い。

「子はなぁ、だれの子でもあれへんねん。あんたよその子やったら憎たらしいか?そんなことあれへんやろ?な?どこのどの子供の目ぇも、なんであんなかいらしいんやろなぁ」

「人間はなぁだ~れも1人で育ったんやあらへん。みーんな育てられたんや」


子供は世間で育てるるもの。

という感覚はこの当時はまだあったんだろう。

今では全くといっていいほど無くなってしまった感覚だ。

1人で子供を育てようと、苦労している母親が多いのが今の世の中だ。

地域のコミュニティのようなものを復活させて、子供は地域の大人全体で見守り、育てていく仕組みが必要なんじゃないかんぁ~って思った。

そうすれば母親の負担は減るし、きっと犯罪に巻き込まれる子供も減るんじゃないだろうか。

そんな、ことも考えさせられる映画でした。

とにかく、日本映画の傑作です!

まだ、観てないという人はぜひご覧になってください!!!

























DJやってます♪最新のMix-Tapeはこちらから聴けますよ↓
Plastic-Mix 20140328



趣味で取ってる写真はここから見れます↓
yu-ki shibutaniのFlickr