Overflow(8) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

今の話は母が20でオヤジが22くらいの時の話。


確か


二人が結婚した時は22と24のはず。



その後の2年間はいったいどうしていたのか?



拓馬は普通に不思議に思えた。



「でも・・別にそれから急に付き合いだしたとか・・そんなことはなくて。 ウチの建て増しが終わってからもね。 なんだかんだでお父ちゃんはウチに来るようになって。 まあ・・メシ目当てだったと思うんだけど、」



母は明るく笑った。



「でもその時。 あたしはねえ、いいなあって思う人がいて。 向こうもあたしに気があるって感じだったんだけど、」



初耳だった。



「その人って・・どんな人だったの?」


「店の近くの大きな石油会社に勤めてる人でね。 まあ・・今で言うエリートっていうか。」



「へえええええ。」



「そのころね。 お母ちゃん、自転車で配達する途中でコケちゃって。 右の膝を骨折しちゃってねえ。 2ヶ月も入院しちゃったんだよ。 ・・そしたらねえ。 お父ちゃん、毎日見舞いに来てくれてね、」



「えっ、カレシでもないのに???」



「そうなの。 その意中の人はね、忙しかったから・・・まあ、1週間に1度くらいしか来なかったんだけど。 お父ちゃんは毎日。 まあ、来ても何話すってわけでもなくて。 結局、ほぼ何も話さないで帰るんだけど、」


それも思い出して可笑しくなったのか、拓馬の腕をひっぱたいて笑った。



「ま。 お父ちゃんはそんなに仕事もなくて暇だったからなんだけどさ。 でも・・・あれ? この人、あたしに気があるのかな? ってそんとき初めて気づいたんだよ・・・」


「まあ・・・普通はそう思うよな。 毎日だもんな・・・」


「不思議なもんで。 そう思うと・・・急に意識し始めるって言うか。 それで。 退院して少ししてね。 その意中の人が転勤で大阪に行くことになって。 あたしにも一緒に来てほしいって・・・」



まるで平凡な夫婦だと思っていた両親が


何だかドラマみたいな青春時代を過ごしていたようで


拓馬はさっきまで泣いていたことをすっかり忘れて母の話に夢中になった。



「それで???」



「すぐに・・返事できなかったんだよねー・・・。 ちょっとはお父ちゃんのこと気になってたのかな。 お父ちゃんの気持ちを確かめたくて、プロポーズされたこと話したんだよ。」



大昔の話なのに


まるで今現在どこでも起こっているような恋愛話みたいだった。



「でも。 お父ちゃんは『そうか、』って。 それしか言わないの。 なんだか気が抜けちゃってさあ。 別にあたしのことなんか何も思ってなかったんだって。 ガックリきちゃって。 もうその話もOKしようかって覚悟してたんだけど、」



母は立ち上がって桐の箪笥の一番上の引き出しから袱紗に包まれた何かを出してきた。



「それから1週間くらい経った時。 いきなりお父ちゃん、コレをあたしにくれてね、」


袱紗を解くと


木で彫られた小さなアヒルが出てきた。


「・・アヒル???」


5cm四方ほどのそれは、ものすごくものすごく精巧にできていて


感動するほどだった。



「・・・『おれは。 一生おまえのメシを食いたい。 おれはこの腕一本でおまえを一生食わせてやる。』って。」



そのアヒルをいとおしそうに掌に乗せて見つめた。



あの無骨なオヤジが


どんだけ頑張ってそんなセリフを吐いたんだろうか。



拓馬は父の意外な一面を見た気がした。



「食わせてくれって言ってるくせに、おれが食わせてやるとか。 よく考えたらわけわかんないんだけど。 いきなりプロポーズしてきてさあ・・、」



母は嬉しそうに頬杖をついた。



「・・そのサラリーマンの人と結婚してたら、まあ苦労はしなかったと思う。 お父ちゃんと結婚したら・・・絶対苦労することもわかってた。 だけどね、ふたりなら耐えられるんじゃないかと思った。 苦しい時もあったけど、約束どおりお父ちゃん・・・その腕一本であたしたち家族のこと食べさせてくれたから。」



そしてしんみりしてうつむいた。



母は懐かしそうに若かりし頃を思い出します・・・




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