Overflow(9) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「でも、」


母はその木彫りのアヒルを袱紗にしまいながら神妙に口を開いた。



「そのときに。 もうひとつ約束したんだよ。」



「約束?」


拓馬は足を組みなおした。



「『おれが年を取って大工の仕事ができなくなったら。 こうやって手作りの木彫りの人形でも作って、浅草の仲見世に置いてもらって売るかって。 なんとか・・・一生、おまえを困らないようにしてやるからって。」



拓馬に昔の話をしながら


母はそのことを思い出したようだった。




「まさか。 ベッドの上で苦しんでるお父ちゃんを見ることになるなんて。 思いもしなかった。 もっともっとお互い年とって・・・それでもおんなじ毎日が来るって思ってた。 お父ちゃんがいなくなるなんて・・・思いもしなかった、」




母ははらりと涙をこぼした。




父の余命が告げられてから


母の涙を初めて見た。




明るくて


いつも暢気に笑っていて。


気丈な母が。



「お父ちゃんと・・一緒になって本当によかった。 いろんなことあったけど・・・あたしは不幸だなんて思ったこと一度もなかったから。 だから。 あんたたちにも大好きな人と結婚をして幸せになって欲しい。 毎日笑顔でいられる人と・・一緒になって欲しい。」


母はそっと涙を拭った。


そして少しだけムリに笑って



「あんたは・・・お父ちゃんの若い頃にソックリだよ。 顔もケンカっぱやいところも・・。 ただお父ちゃんはあんたみたいに要領よくなかったけどね。」


拓馬に言った。




頑固で口うるさくて


酒飲みで


どうしようもないオヤジだって思ったこともあったけど




いつか自分も


父と母のような家庭を作りたいと素直に思える夫婦だと思っていた。



もし


どちらかが先に旅立つ時に


こうして



一緒になって本当によかった





思える人と一生を共にしたい。



母が父のことで涙を見せたのは


これが最後だった。





その日は仕事中も


集中しなければと思いながらも


たくさんのことを考えてしまった。



『全てのことをよく考えて返事をしなさい』



母の言葉がずっと頭の中を巡っていた。




仕事が引けるとそのまま父の病院に直行した。



「まあ。 まんまと幸太郎にハメられたけどな、」


いきなり皮肉っぽく父に笑いかけた。



「・・・おれは・・別に。 あいつが勝手にしたんだろ、」



気まずそうに父は背を向けてしまった。



「まあ。 でも。 彼女に会えて・・本当に良かった。 会って別れを言うのがつらいからっておれ、逃げてたし。 やっぱりきちんと話をしなくちゃいけなかったって思う、」



拓馬は小さなため息をついた。



拓馬は両親の長い夫婦生活を一種羨望の思いで感じ取ります・・・



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