For life(9) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「・・あのう・・」


拓馬の父は千崎に声をかけようとしたとき



スッと黒塗りのハイヤーが友永邸の前に停まった。



ハッとして千崎は自分が表に出てきた理由を思い出しそのハイヤーに近づいた。



後部座席のドアを開けると、着物姿の詩織が出てきた。


千崎は彼女と拓馬の父を交互に見やってしまった。



「すみません。 ちょっと時間が押してしまって、」


詩織は千崎にそう声をかけたところで、そこに立つ人影に気づいた。



「・・・・・」



拓馬の父の姿に驚いて一瞬固まってしまった。



少しよろけるように杖をついて彼女に近づいて



「・・・お久しぶりです・・・」



かすれた声で声をかけた。



以前会ったときよりも大分痩せて、そして足元もおぼつかない拓馬の父の姿に呆然としながらも



「・・・だ、大丈夫ですか・・・お加減は・・・」


慌てて駆け寄って支えようとすると



「いや、けっこう・・・。 少し・・お嬢さんにお話がありまして。」



それでも目だけは以前と同じように鋭かった。



「話・・・」



「ほんの少しです。 突然・・来てしまったんだから、」



すると千崎が



「このあと・・・打ち合わせが入っていますが、」



と二人に割って入ってきた。



詩織はとっさに



「少しだけ・・みなさんに待っていただいて下さい。 すみません、今月末にある作品展の仕事を任されているものですから、あわただしくて・・・あの、どうぞ。 中に、」



拓馬の父の背中に手をやってそう言った。



「・・いいえ。 おじゃますることは・・・。 ひとつだけお嬢さんに・・・言いたいことがあるだけですから、」



痛みをこらえてしゃんと背筋を伸ばした。











「大丈夫なの? あんまりムリしないで。」



点滴を受けながらも片手に辞書を手放さない夫に母はため息混じりに言った。



ゆうこたちの思いが父に伝わったのか


いつもなら副作用で苦しんで見ていられないほどなのだが


生まれたばかりの赤ん坊の命名の仕事を任された父は


苦しさを表に出さず


いつもペンとメモを手に孫の名を懸命に考えていた。





「そう。 一生懸命考えてくれているのね、」


ゆうこは赤ん坊にお乳を飲ませながら


いとおしそうに頭を撫でた。



「もう、夢中になって。 いつもはもう苦しくて暴れて大変なのに、」



同じ病院の産科に入院するゆうこのもとを母が訪れた。



「お父ちゃんに抱いてもらえて・・よかった。 ひょっとしたら・・・ムリかなって思ってたから、」


泣き虫のゆうこはそう言って声を震わせた。


「そうだね、」


母もしんみりとそう言って微笑んだ。



拓馬の父は詩織に何を・・?



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