For life(4) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

帰宅した父はすぐに大工道具の手入れを始めた。


おそらくもう自分が現場に行くこともできないだろうことは本人もわかっているようだった。



「あまり、ムリをしないで。」


実家に来ていたゆうこが言った。



「・・・もう少し。 拓馬に教えねえとなんないことがあるからな、」



何気ない言葉だった。


けれどもゆうこには


ひょっとして父が自分の病を知っているのではないか、と


思えてしまった。



限られた命の全てを


拓馬に注ぎたい



そんな気持ちが体中から伝わってくる。



ハッピーが飛んできて尻尾を振って父に縋りつく。



もう年を取って最近は落ち着いてやんちゃな面は全く見せなかったのだが


父が戻って来たのが嬉しいのか、甘えている。



「こらこら危ねえから待ってろ。 これ終わったら散歩に行ってやるからな、」



子供たちには厳しい父も


ハッピーにはかなわない。





季節は秋に移り変わり


友永邸の桜の木も葉を枯らして


これからやってくる冬にひっそりと耐えるように佇むように見えた。




この桜が満開だった頃。




詩織はそっと目を閉じた。



彼とこの桜を見て


言葉もなく微笑み合って



それだけで幸せだった。



「もう寒いわよ、」


後ろから祖母の八重が声をかける。


「・・なにがあっても。 また来年の春には・・・この桜はきっときれいに咲くのね、」


誰に言うでもない


その言葉に



「生きているからね・・・。 何十年も同じ時に同じ花を咲かせてくれる。」



八重はそっと木肌に触れた。



「・・やっぱり花は自然に咲いているのが一番きれいね。 私がどんなにその花が美しくなるか考えて考え抜いて活けても・・・自然の花には敵わないわ、」



ふっと微笑む。



「そりゃあそうよ。 自然には敵わない。 どんなに豪華な花を活けてもね、野に咲く名もない花には敵わないのよ。 大地から命をもらっているんですもの。」


八重は桜の木を優しく撫でた。



「私たちの仕事はね。 その花や木にお化粧をしてあげることなのかもしれないわね。 自然のままでいる美しさもあるけれど、人の手でお化粧をしてやって違う美しさを引き出してあげること。」



祖母の言葉がまるで水のようにすうっと自分の身体に染み渡る。



「長い冬をジッと堪えていれば。 必ず春には花が咲く。」



人の心も


移り変わる季節と同じなのかもしれない



詩織は空を見上げた。



そして季節は移り、詩織はあの桜の木を見上げてやはり拓馬のことを思います・・・



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