しばらくの沈黙の後。
「そう。 そうだったの。 ・・・あんたは気にしなくていいから。 赤ん坊の方は順調なの?」
いつもの母の声がした。
彼女の背後にたぶん父がいるのだ、と悟ったゆうこは
「・・・うん・・・。 もう・・・手も足も。 よく見えて。 元気に動いて・・・・」
自分もしっかりしなくては、と思い気を張った声を出したのだが
涙が溢れてきて言葉が続かない。
「あんたは・・・赤ん坊のことだけを考えて。 しっかりしなさい、」
すすり泣く声がきっと母の耳にも届いている。
そう思って何とか涙を止めようと思うのだが
堰を切ったように止まらない。
「まま・・・・。 これよむー・・・。」
こころを実家に引き取りに行ったときも
父の顔を見れなかった。
家に帰ってリビングで顔に手を押し当てて、ジッとしているとこころが絵本を持ってやって来た。
「・・絵本ね・・・。 」
笑顔を作ろうとしたが、口を開いたとたんまた涙が溢れる。
「まま・・どーしたの? おなか、いたいの?」
心配そうに心が見上げる。
「・・ううん。 ううん・・・・。 そうじゃないのよ。 ごめん、」
ムリに笑顔を作ってこころを膝の上に乗せた。
悪い夢を見ているようで。
とても信じられない。
受け入れられない。
「・・・ほんまか、それ・・・」
志藤にようやくそのことを告げることができたのは
子供たちを寝かしつけて寝室に二人になった時だった。
「・・・検査の結果を診ないと・・・詳しいことはわからないんだけど。 まちがいないだろうって・・・。」
また鼻をすすった。
「骨に・・・もう・・・星をちりばめたみたいに・・・たくさんの白い点々があって。 それがガンだって・・・言われた時にもう気が動転しちゃって。 どうしていいのか、」
志藤は険しい顔になり、ジッと考え込んだ。
「・・まだ。 検査の結果は出てへんのやから。 ゆうこがそんなに思いつめてどうすんねん。 今は医療も進んでるんやで。 悪いことばっかり考えへんと、」
彼女の肩を抱いて慰めた。
「・・うん・・・、うん、」
誰よりも家族を大事に思っている彼女にしたら
とっても受け入れられる現実ではないだろう。
志藤はゆうこの気持ちを思った。
ゆうこの母はぐっすりと寝入ってしまった夫の顔を傍らに座り込んでジッと見ていた。
思ってもみなかった現実をつきつけられて。
ふわふわとウソの世界を漂っているようだった。
これから起こるだろうことも
一瞬頭の中をよぎるが
すぐに自分ですぐに打ち消したりしていた。
時間を忘れるくらい
ずっと夫の傍らに座った。
ゆうこは事実を受け止めきれずにいます。 そして母は・・・
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