In a dream(4) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「・・私は反対はしません、」


詩織の母・喜和子は出かける準備をしながら、背後にいる千崎にそっけなく言った。



「なぜですか。 詩織さんはやはりそれなりの男性と・・・」



彼はやっぱり納得がいかないようだった。



「まあ。 できればそういう方の方が戸惑わなかったかもしれません。 それでもあの子が彼を好きになってしまって、この人なら、と思ってしまったんですから。 私は何も・・・・」



「どこの馬の骨ともわからない男を! 友永の家に入れるとおっしゃるのですか。 きちんと興信所で調べてもらったらどうなんですか、」



千崎は思わず大きな声を出してしまった。



「私も彼と彼のお父さまと話をして。 その人となりを見極めたつもりです。 母も賛成してくれています。 やはり・・家のためと思っての縁談はうまくいかないでしょうから。 詩織が本当に好きな人と一緒になって欲しいと思っています。」


喜和子は振り返った。


「しかし・・」


「確かにこちらはよくても彼は大変だと思います。 私もできるだけのフォローをします。 今一番願うのは、詩織が幸せになってくれることです。」


まだ納得がいかないような千崎を諭すように言った。






拓馬の仕事は順調に進んでいた。


施主との折り合いもよく、信用もされるようになり


その人のつてで次の仕事も請け負うことになっていた。



バイクにキーを差込み、現場から帰ろうとすると



「・・失礼ですが、」


後ろから声をかけられて振り返る。



スーツに身を包んだメガネの律儀そうなその男は


どこかで見たことがあり、思い出しそうで思い出せなかった。


男は拓馬に一歩ずつ近づき


「・・『千睦流』で家元の秘書をさせていただいている千崎と申します。 一度、友永邸でお会いしましたね。」


ポケットから名刺入れを取り出し一枚差し出した。



「・・ああ・・・」



喜和子や詩織と出かける時に一緒だったところを見かけたことを思い出す。



「大変ですねえ。 力仕事ですから。 今日はもうお仕事は終わりなんですか。」


「まあ、」


いったいこの男がわざわざ自分の現場にやってくるということがどういうことなのか。


拓馬は訝しげに頷いた。



「・・・契約している建築会社の下請けのようなお仕事をして。 なかなか安定しない収入で大変でしょうね、」


冷笑を浮かべた彼のその顔をゆっくりと顔を上げて見た。



「お兄さんは大建設計で一級建築士としてのお仕事をされていて。 数年前に離婚歴のある子供のいる女性とご結婚されていますね。 妹さんはホクトエンターテイメントの社長秘書をされていた時に今のご主人と知り合われて結婚されたとか。 ご主人はホクトエンターテイメントの取締役もされているほどの方で。 北都フィルハーモニーを立ち上げられた方だそうで。 なかなか素晴らしいご家庭ですね、」



何故この男がウチの事情をここまで知るのか。


考えを巡らせる中でもさらに



「・・で。 あなたは。 地元の工業高校を卒業して、すぐにお父さまのお仕事を手伝うようになったとか。 中学・高校の頃は学校内では知らない人がいないくらいの有名人だったそうですね。」



千崎はさらに拓馬自身のことに触れる。



「自転車の窃盗で捕まったり。 自販機を破損させたり、学校内でタバコを吸って停学処分を受けたり、他校の生徒とケンカ騒ぎを起こして警察に連れて行かれたり。 まあ・・・かわいいもんなんでしょうけど、まともに学校にも行ってなくて。 昔のこととはいえ、だいぶヤンチャされてたんですねえ、」



クスクスとバカにされたように笑われた。



「・・あんた・・・」


拓馬は自分の身辺を探ったこの男に言いようもない怒りがこみ上げる。



するとふっと彼の顔が鋭く、厳しく変って



「そんなあなたが。 詩織さんと一緒になろうだなんて。 よく考えられますね。 あの人は家元やおばあさまから大事に大事に育てられたお嬢さんなんです。 『千睦流』は江戸末期から続く正統流派です。 その伝統を継いで行く詩織さんには相応しい男性がたくさんいる! あなたでなくても!」


そして同じように厳しい言葉をぶつけてきた。



詩織の婿候補だった家元の秘書が拓馬の前に現れました・・・




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