Love for the future(3) | My sweet home ~恋のカタチ。

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そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「やっぱ。 いいや。 スーツは、」


拓馬は和馬に借りたスーツを脱いでハンガーに引っ掛けた。


「え、買うの?」


母はお盆に湯呑み茶碗を乗せて片付けようとしていた。


「いや。 いつもの作業着で行く。」



「はあ???」



和馬は大きな声を出してしまった。



「今度の日曜は。 ちょっと現場の方押しちゃってるから午前中だけ行くことになってるし。 そのあと、直接彼女のところに行くから。」


拓馬はいつものジーンズとTシャツに着替えて和馬の前に座った。



「おまえ。 バカじゃねーのか? 彼女の家に交際を許してもらいに行くのに、その上すんごい敷居の高い家なのに!」


常識人の和馬からは全く考えられなかった。



「彼女を初めてデートに誘う時。 おれもさー、ほんとすんげえ迷って。 誘っていいんだろうか、どうしようかって。 で、とりあえず誘ったはいいけど・・・車を友達に借りようかレンタカー借りようかって考えてたんだ。 でも・・まあ、どうせおれなんかがつりあう子でもないし・・・カッコつけてもしょうがないと思ってさ。 ウチの軽トラで行ったんだ。」


拓馬は思い出して笑ってしまった。



「ウチの車???」


和馬はさらに驚いた。


「それで、彼女が少しでも引いたりするようだったら、もうそれまでだって賭けみたいなモンだよ。 でも。 彼女、ぜーんぜん・・・気にもしてないって風で。 あれは・・嬉しかったなー・・・・。」


夢見るように頬杖をついた。


「そのときさあ・・・・なんか。 ああ、彼女のこと好きになってもいいのかなって思った。 おれって人間の本当を見てくれてる気がして。 だから・・・おれ、作業着で行く。 彼女のお母さんにもおばあちゃんにも。 なんも取り繕わない生身のおれを見てもらいたいから、」


屈託なく笑う息子に



「ま。 ダメもとで行ってみれば?」


母も同じように笑っていた。



「人間、身の丈に合わないことをすると必ず苦しくなる。 あんたがあんたらしくいられるように。 あたしたちはあんたらを裏表のないまっとうな人間に育てたつもりだから。」



この明るい母に今までどれだけ救われてきただろう。



拓馬は笑顔で頷いた。




「あ~あ、ついてけね~。 なんなんだよ、この人達は・・・」



和馬だけがこの二人の感覚についていけず、大きなため息をついた。




「お茶、」


いつものように父はぶっきらぼうに茶碗を差し出した。


「はいはい・・・」


拓馬とのことがあってから、妻ともあまり話をしなくなり


とにかく一日中仏頂面をしている。



「もうお父ちゃんもいいかげんにしたら?」


お茶を運んできながら、母はため息をついた。


「・・・なにが、」


「息子を信じてやりなよ。 拓馬は・・本気だよ。 浮ついた気持ちじゃなく、相手のことを思ってる。」



このことに関しては


夫婦でもじっくりと話したことはなかった。


いつも拓馬のことになると、機嫌が悪くなりその場を立ってしまう。



「・・・あいつは現実がわかってねえ。 今は浮かれた気持ちだけで幸せになったような気分になってやがる。」



ブスっとしてようやく自分の気持ちを言葉にした。



「あたしだってねえ。 分不相応だって思う。 でも・・・・親にしてみたら、子供の幸せを願うのが普通でしょ。 拓馬が根性据えたんなら、あたしは・・・応援しようと思ってる。」


「・・・・」


お茶をひとくち飲んだだけで、父はまた不機嫌になり立ち上がった。


そのとき


「・・イテテテ・・・・」


腰を押さえて卓袱台に手をついた。


「腰痛めたの? この前も痛いって言ってたけど。 加藤さんとこの整体行ってきなよ、」


「あんなヤブ! 前にも行ったけど全然良くならなかった! そのうち治る!」


腰を摩りながら風呂場のほうに向かって行ってしまった。



母に救われる想いの拓馬でしたが、やはり父はまだまだ頑なで・・・



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