「え、拓馬さんのおうちに?」
電話でその話を聞いた詩織は驚いた。
「うん。 オヤジは旅行でいないらしい。 オフクロがしーちゃんに会いたいって言うから。」
拓馬は電話をしながら煙草に火をつけた。
「・・でも、」
戸惑うような彼女に
「オフクロはけっこう話わかるから。 まあ、とにかく呑気なおばちゃんだから。 気を張ることもない。」
優しくそう言った。
「・・お父様さまがいらっしゃらない時にっていうのが・・なんだか。」
隠れてコソコソしているようで気が引けた。
「・・・オヤジはなかなか話してすぐにわかるような人じゃないから。 ・・おれもオフクロにはしーちゃんを紹介したいとホントは思ってたから。」
そんな風に言われて
詩織は心が躍った。
拓馬はそのあと『こまち』に行った。
実家で父と鉢合わせするのがイヤで夕飯を一緒に食べなくなり、ここに来ることが多くなった。
「あれっ・・・」
「よ。」
先客で志藤が普通に夕食を採っていたので驚いた。
「なんだよ。 ここでメシかよ。 なんかもうすっかり浅草も板についちゃったな~」
拓馬は彼の隣に座った。
「今、ゆうこ具合悪いやろ? おれのメシの世話まで大変やから、たまにここで食っていく。」
「あー、そうなんだ・・・。 おれ、ビールと・・・煮込みね。」
拓馬は楓に言った。
「ゆうこもたいへんだねえ。 5人目だもんね。 もー、幸太郎ちゃん頑張っちゃうから~~、」
楓は拓馬にビールを注ぎながら笑った。
「もう4人も5人も一緒や。 たまに子供らが白川の家行っちゃっていないと、静か過ぎて逆に落ち着かへん。」
「まあ。 子供はなんだかんだいっても。 かわいいからなァ。」
拓馬はぐいっとビールを飲んだ。
「ところで。 あんたはどーなの? そのお家元のお嬢さまとは。」
楓はにんまりと笑った。
「あ????」
拓馬は楓にその話をしたわけでもなんでもなかったので、一瞬呆気に取られた。
そして、志藤をジロっと睨んだ。
志藤は慌ててぶんぶんと首を振った。
「だって。 おばちゃんがここ来てウチのお母ちゃんにしゃべっていったもん。」
・・・・あのクソババア・・・・
拓馬は母の優しさに絆された自分が腹立たしかった。
「ったく! なんで黙ってらんねーかな! あの人はっ!!」
乱暴にグラスを置いた。
「まあまあ。 おばちゃんも心配してたよー。 拓馬とお父ちゃんがまたケンカしちゃって口もきかないって。 そりゃあねえ。 心配もするって。 あたしはお花の世界とかよくわかんないけど。 ああいう継承していかなくちゃいけないところって、あたしたちが理解できないことたくさんあると思うよ、」
楓は煮込みに七味をぱらぱらと降りかけて拓馬の前に差し出した。
「・・・別に。 つきあうってだけなのに。 あんなに怒る意味もわかんねえ、」
拓馬は父に対する不満をちょっと漏らしてしまった。
「バカだねえ。 相手はまだまだ若いかもしれないけど、あんたは36でしょ。 つきあうったって結婚を前提に、に決まってるじゃない。 ねえ、」
楓は志藤に同意を求めた。
「・・・まあでも。 年は関係ないやん。 結婚したい時がする時やん。 そんなん人によってそれぞれやし、」
志藤は拓馬を擁護した。
「んじゃあ。 遊びなの?」
楓は少し悔しくなってそう言った。
「遊びなわけねーだろ。」
食い気味に反論した。
「むじゅ~~ん。 真剣に考えれば考えるほど。 このままつきあってたら大変なことになるじゃん。」
悔しいが
楓の言うことは
正しかった・・・
楓にいつもグウの音が出ないほど言いくるめられてますが・・・
こんなところで今年のアップは終了でーす。
この先、拓馬と詩織の『許されない恋』はどうなるのか??
来年もよろしくお願いします!(^O^)/
↑↑↑↑↑↑
読んで頂いてありがとうございました。
ポチっ! お願いします!
人気ブログランキングへ
携帯の方はコチラからお願いします