Surely(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

拓馬は一度実家に戻り車を置いてきた。


まだ彼女のことは家族には知られたくないので、浅草寺の近くのカフェで詩織には待っていてもらった。



「浅草もすごく小さい頃に一度来ただけで。 こうして裏通りに入ると趣のある感じですね、」


裏通りを歩いていると彼女が言った。



「しーちゃんの世界とは全然違うだろうなあ・・・・」



趣がある、と彼女は言ってくれたけど


お世辞にもきれいとは言えないいわゆる下町の飲み屋街でもあった。



「ううん・・・。 人の声がする・・・」


詩織は小さく首を振った。



「え、」



飲み屋から酔っ払いたちの笑い声が聞こえる。



「人が。 生活してるって音がします。 ウチの周りは・・・静かで。 静か過ぎて。 家の中も・・・母と祖母と。 たまに来るお手伝いさんだけで。 昼間は人の出入りがありますが、夜は寂しいくらいです。 」



「・・・うるさいだけだよ、」


拓馬は謙遜半分で少し照れてそう言った。



「拓馬さんは。 こういうところで育ったんですね、」



彼女はひとまわり年下だが、こうした落ち着いた物言いや感性がそれを全く感じさせなかった。



アパートは10世帯が入るだけの二階建ての小さな建物で、 拓馬の部屋は二階の一番端だった。


鍵を開けると


「ちょっと待ってて。 今朝、寝坊しそうになって起きたまんまにしてあるから。」


そう言って先に部屋に入っていった。


ベッドを整えて、その辺に散らかっていたエロ雑誌を手早く片付けた。


窓を開けて空気を入れ替える。



「・・どうぞ、」


遠慮がちに彼女を招き入れた。


詩織は靴を脱いだ後、しゃがんで自分の靴と拓馬の靴をきちんと揃えた。


後ろを向いて靴を脱ぎ、部屋に上がるのが今どきの若い子だろうに


彼女はさすがに所作がきちんとしていた。



狭いキッチンがあってすぐに部屋になる。



ベッドが置いてあって、他のスペースは1畳半くらいしかなかった。



「な、狭いだろ?」


拓馬は笑う。


それでも。


角部屋なので小さな出窓があり、そこに麻のランチョンマットが敷かれその上には小さな陶器のぐい飲みが3つ並べられていた。


詩織はすぐにそれに目が行った。



「これは・・・」



「ああ。 ずうっと前に妹が通ってた陶芸教室におれも行ってたことがあって。 その時に造ったヤツ。 けっこうよくできたから使わないで飾ってある、」


「触ってもいいですか、」


「どうぞ。 そんな上等なもんじゃないし、」


拓馬はそう言ってキッチンにお茶を淹れに行った。



彼の作った作品を初めて見た。



それは自分が理想とする色と形で。



ああ


やっぱり。



詩織は拓馬と同じ感性を自分が抱いていることが


たまらなく嬉しかった。



何もない、と彼は言っていたけれど



部屋はキレイに片付いていて、ちょっとしたスペースにセンスのいい和風の置物があったり


小さなサボテンが飾ってあったり



思ったとおりの彼のセンスであったので


思わず微笑んでしまう。





拓馬の部屋は詩織が思った通りの佇まいでした。 それが本当に嬉しくて・・・




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