「待ってたんだ、」
拓馬は優しい笑顔でそう言った。
詩織は少し驚いたような表情で傘の柄を持つ手に力が入る。
「『しーちゃん』を、」
タバコを消してポケットにあった簡易灰皿に押し込んだ。
「えっ・・・」
ドキドキしてその手が小さく震えてしまった。
「今度の休みは、いつ?」
急に会話の方向が変ったので、
「えっ、」
同じ声で驚いてしまった。
「・・今度の日曜は・・お休みですけど、」
「どこか。 出かけない? 天気も良さそうだし、」
本当に普通に、自然に拓馬は言った。
「・・あ・・はい。」
そして自然に、あっけなく頷いた。
「じゃあ。 また連絡するから。」
それだけ言って拓馬は帰ってしまった。
詩織はその後もそこにずっと佇んでしまった。
誘われた・・・
だんだんと胸の鼓動が速くなる。
そして嬉しさがじわじわと湧き上がって。
自然と顔が綻んでしまった。
誘ってはみたものの。
昼間に出かけるとなると
やっぱ車は必要だよな・・・
拓馬は自宅に戻り、うーんと考え込んだ。
しかし
ウチの車なんか仕事用の軽トラだし。
あんな車に彼女乗せられないし。
レンタカーって手もあるけど
『わ』ナンバーなんかで行ったら引かれちゃうよなあ。
友達に借りるか・・・
ごろんとベッドに横になった。
でも。
拓馬は少し冷静になって彼女とのこれからを思う。
どうせ
おれなんか相手にされなくても当然だし。
出かけることOKしてもらっただけでもありがたい。
カッコつけて
取り繕ったって
なんも残らない。
「めずらし。 車なんか洗ったことないのに、」
この日は友永邸で総会があるということで、工事は休みになった。
拓馬は実家にやってきて仕事用の軽トラを丁寧に洗った。
座席もきれいに拭いて、フロントガラスも窓もピカピカに磨いた。
母はそんな風に息子をからかった。
「明日。 車借りるよ。」
庭でハッピーの相手をする父に言うと
「ああ、」
ぶっきらぼうに返事をされた。
とうとう拓馬は詩織を『デート』に誘ってしまいます・・・
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