Danke~ありがとう(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「もっと乗せる感じで、」


真尋はうまく言葉で伝えることができずに、少しイラだって



「ごめん、ちょっと。」



と、いきなり絵梨沙の代わりにピアノの前に腰掛けた。



「・・・第2主題のアタマんとこから、」



ミナに指示をしていきなり弾き始めた。



え・・・・



真尋はたぶんこの『カルメン』を弾いたことはないはずなのに


楽譜なしで弾き始めた。



しかも。


自分が手探りで感覚を探りながら弾いてたものよりも、数段堂々と。



真尋は合わせる相手をまるで挑発するかのように乗せてくる。


相手の力をぐんぐん引き出す。



ミナは負けずに音を乗せる。




すごい・・・



絵梨沙は感動してしまった。



少し弾いただけで、自分が弾いたときとはまるで違っていることを思い知らされた。



「もっと盛り上げて。 彼女もいい音出してんだからさ。 絵梨沙も自分のピアノの技術を発揮してさ、」



思わず神妙にうなずいた。


うなずかされるほど、真尋のピアノが素晴らしかった。



「・・・この曲、弾いたことあったの?」


思わず訊いてしまった。



真尋は



「え~? ないけど。 絵梨沙、家で弾いてただろ? こんくらいならすぐに覚えるよ、」



笑い飛ばした。



改めて彼の『非凡』さを思い知ってしまった。



斯波はその間も黙ってジッと腕組みをしていた。



そのあと、弾いている本人たちにもわかるほど音が変わった。



本当に不思議なことに気持ちひとつで音のノリが違う。


だんだんと楽しい気持ちがあふれてきた。




そうか。


やっぱりあたしはピアノが好きで。


誰のためでもなくて自分のためにピアノを弾きたいって・・・


自分の本能が動いたんだ・・




絵梨沙はふっとほほ笑んだ。



いつの間にかに真尋は帰って行ったみたいだった。


それに気づかないほど練習に集中していたようだった。



「なんか、すっごく合ってきた感じがします、」


ミナも嬉しそうだった。



「手がかかるな、」



その時斯波がふっと微笑んだ。



あ・・・・



絵梨沙はハッとした。


この人の笑った顔。


初めて見たわ・・・



いつもは鋭い視線しか向けてこない彼の目が


すごく優しくて。



思わずジッと彼を見つめてしまった。



その視線に気づいた斯波はふと絵梨沙を見たが


慌てて少し動揺したように視線を外した。



それがなんだかおかしくて、またクスっと笑ってしまった。



真尋の協力もあり、絵梨沙は斯波の笑顔を初めて見ました・・・



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