Leben~命 (8) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「あたし・・日本語はわかんないんだけど。 ・・たぶんおじいちゃんのことで言い争っていたんでしょう?」


カタリナは申し訳なさそうに彼らに言った。



「い・・いや、」


真尋は気まずそうに目をそらした。


絵梨沙はカタリナの後ろにいた中年の婦人を見つけた。



「あ・・・」



思わず声をあげた。


その人は


目も鼻も


シェーンベルグにそっくりだった。



「・・母です、」


カタリナは彼女を紹介した。




絵梨沙はここにある簡単なキッチンでお湯を沸かしてコーヒーを淹れた。



「ありがとう・・。 ごめんなさいね。 突然に、」


カタリナの母は絵梨沙に言った。


「いえ。」


「最近は心配してよくこっちに来ているの。 今日は・・・ママがあなたたちに会いたいって言うから。 きっとここかと思って、」


カタリナは笑顔で言った。



真尋も絵梨沙も


どんな顔をしていいのかわからない。



「・・・カタリナからあなたたちのことは聞いています。 本当に父がお世話になって、」


「いえ・・。 お世話になっているのはこちらの方です。 真尋がここで今もこうしてやっていけているのは先生のおかげですから、」


絵梨沙のほうがお礼を言ってしまった。



「・・あなたが。 苦しい思いをしているんじゃないかと思って、」


カタリナの母は真尋を見た。



「えっ・・・」


真尋はドキンとした。



「父は。 もうこうとなったら曲げない人だから。 特にピアノのことに関しては。 母も私も泣かされました、」


上品な雰囲気のその女性は苦笑いをした。


「ほとんど家にも帰らずに。 ピアノの指導に夢中になって・・・。 もう、ダメなんです。」


彼女の顔が少し歪んだ。



「ダメって・・」


絵梨沙はつぶやいた。



「・・これが。 あの人の人生ですから。 ピアノに命をかけているのが父の人生ですから。 母が生きていてもきっと止めなかった、」



胸が

痛んだ。



「父はあなたのためにでも自分のためにでもなく。 この世に素晴らしい音楽を遺すために頑張り続けているんです。 あなたがその父の理想の音楽を自分の代わりに叶えてくれる人だって・・・思ったんだと思います。 私にもあなたのことは話してくれました。 『最後のチャンス』だって言ってました。」



「最後の・・チャンス・・・」


真尋はつぶやいた。



「あなたの才能が・・父に再び命を与えてくれました。 あなたのおかげなんです。 だから・・・もう残りの人生はあなたのピアノと共に父は生きる決心をしたんです、」



身体の芯から


ブルっと震えて



真尋はぎゅっと唇をかみ締めた。



「あなたを世に出すことで・・・人生を終えていいと思っているんです・・・。 父がこの世からいなくなっても・・父の音は生きる。 あなたの中で、」



堪えていたけれど


口元が震えて、真尋の大きな目から涙が溢れた。



「おじいちゃんは。 マサが有名なコンクールで優勝もしたことない経歴を心配していたよ。 何の看板もないあいつがこれからこの世界で生きるためには、自分のピアノの全てを伝えるしかないって・・・。」


カタリナの言葉がとどめだった。



真尋はテーブルに突っ伏して声をあげて泣いてしまった。



「真尋・・・・」



絵梨沙は彼の背中にそっと手をやった。




カタリナの母からシェーンベルグの熱い思いを聞かされて、真尋は耐え切れずに・・・


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