Ein Traum~夢(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「3年前。 ガンの告知をされてから・・・何だか元気がなくなっちゃって。 お弟子さんも取らなくなって、たまに頼まれて音楽院の臨時の講師に行くくらいで。 前はほんっとスパルタで有名だったのよ。 たくさんのピアニストたちがおじいちゃんの弟子にって来るけど、まあ耐えられたのはほんの数人だもん。 今どき体罰なんだから、」


カタリナはフッと笑った。



「でも。 やる気がなくなっちゃってねー。 ママも心配して一緒に暮らそうって言ったけど。 一人がいいってきかないし。 誰も来ないのにスタジオに入り浸って、お酒を飲んだり昼寝をしたりするだけで。 ほんと大丈夫なのかなって心配してた。 でも・・・『彼』に出会ってからすっごく変わって、」



「え、」


絵梨沙は小さな声をあげた。



「昔のおじいちゃんに戻ったって・・・思えた。 あんな仏頂面だけど、楽しくて仕方ないって・・顔に出てるもん。 なんだかシャキシャキしちゃって。 イキイキとして。 ママがあのおじいちゃんに戻ったんだから・・・もう好きにさせたほうがいいんじゃないかって。 ・・あたしも、そう思うようになって。」



真尋が


先生を変えた・・・



絵梨沙はその意味をかみ締めた。



「一度。 マサのライヴを見に行ったのよ。 ・・本当に・・・素晴らしかった。 あたしもずっとピアノをやっていたから、その素晴らしさはわかる。 おじいちゃんが夢中になるのもわかるって、」


カタリナは笑顔でそう言った。



「真尋には・・・言わないほうがいいのかしら、」



「結果次第かな。 でも・・・お医者様が言うには、おそらく転移は間違いないだろうってことだから・・・。 身体に変調がきているかもしれない。 いづれは彼にも話さないとならなくなるかも・・・。 でも、おじいちゃん本人の意思に任せたい。 彼に告知をするかどうかは、」



絵梨沙も


とてもこのことを真尋には今は言えないと思った。



シェーンベルグ先生は全てを真尋に賭けている。


自分の命さえも。



何か覚悟を決めたようなその頑固さに


彼の決意を見たような気がして。





真尋が日本に行っている間は寄らなかったが、帰り道スタジオに寄ってみた。


すると


いつものようにソファでシェーンベルグは昼寝をしていた。



気配で目を覚まし



「なんじゃ。 今は用はないはずだろう、」


と、目をこすりながら言った。



「・・ちょっと。 おそうじでも・・と思って、」


うまく笑顔が作れているか心配だった。


「だから。 そうじなんか適当でいい。 そんなもの。 わざわざこのために来ることもない、」



ぶっきらぼうだけど


たぶん、あたしの身体を気遣ってくれている



絵梨沙には彼の優しさが伝わってきた。




「・・夕飯は。 どうするんですか? あたし、シッターをしている子の家で料理を作らせてもらいますから、持ってきます。」



「もう年だからそんなに食わなくても生きていける。」



「ダメです。 ちゃんと食事は採って下さい。 お孫さんも心配します、」



「全く娘に似たのか、おせっかいで口うるさくて。 もう来なくてもいいと言っているのに、」



憎まれ口は


もう口ぐせのようで。



絵梨沙はクスっと笑ってしまった。




巨匠が真尋に賭けていることを知り絵梨沙は複雑な気持ちで・・・・



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