Ein Traum~夢(20) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

マリーも全快し、真尋もウイーンに戻り


またいつもと同じ毎日が始まる。




シェーンベルグは『皇帝』の練習の初日から1時間も遅れてスタジオにやって来た。



「も~~~。 連絡のひとつくらいよこせって・・。 時間もったいねーじゃん、」


真尋が文句を言うと、いつもよりさらに怖い顔で



「・・・すぐにかかるから。 暗譜はしてきているんだろうな、」



と言った。


「え、暗譜? そんなヒマなかったし、」


真尋が適当な答えをすると、



「ふざけるな!!! 今回は全部最初からおまえの解釈で弾かせる。 人の演奏を聴いて耳から覚えるなんてズボラなことはさせんからな!! 時間を無駄にしているのはおまえの方じゃ!」



ものすごい大きな声で怒った。



「・・なんだよ・・まったく・・」


真尋はブツブツ言いながら楽譜を広げた。



なんだか


いつもの彼ではないようで


一緒にいた絵梨沙はずっと胸がドキドキしていた。




初日の練習からシェーンベルグの勢いはすさまじかった。



大きな声で怒鳴る


それでも思うようにならないと杖でガンガンと床を叩く。



コンクールの時とは明らかにテンションが違うことに真尋も戸惑っていた。




絵梨沙の携帯が呼んでいるのに気づき、慌ててスタジオの外に出た。



「・・もしもし。」


電話の主はカタリナだった。



「・・あのね。 今日・・・精密検査の結果が出たの、」


彼女のその沈んだ声で


少しだけ手が震えた。




「・・・転移は。 全身に広がっていて、」



彼女の声も震えていた。



「え・・・・」



絵梨沙はその場で凍りついた。



「この前の・・レントゲンでは肺だけはわかったんだけど・・・。 リンパや・・・肝臓・・・、骨にも・・転移の兆候が見られて・・」



カタリナは一息ついて



「抗がん剤と放射線の治療を進めるけど・・・。 たぶん、あと半年、」



その『時間』を絵梨沙に告げた。



ガラス戸越しにシェーンベルグが真尋を激しく叱責する姿が見えた。




「半年・・・」



その時間は


ピアノコンチェルトの本番の時間と


ほぼ同じで。



彼の激しい怒りは


『焦り』


なのだということを


絵梨沙は思い知った。




シェーンベルグの『命の期限』があと半年と知った絵梨沙は・・・



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