Ein Traum~夢(11) | My sweet home ~恋のカタチ。

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そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「先に。 結果を言おう。」


カールはそう前置きをしてから、つかつかと真尋に歩み寄り


右手を出した。



「・・・おめでとう。 ぼくたちと一緒に頑張りましょう、」



その意味がすぐにわからず、真尋はゆらっと立ち上がり何となく彼と握手をした。



「え・・・。 おれ、オーディション合格??」


シェーンベルグの顔を見てしまった。


彼はふっと笑って小さく頷いた。



「あれから。 関係者スタッフ一同。 ずっと話し合っていました。 コンマスのミラは即答できみを推したけど、」



カールは笑った。



「ベートーヴェンの『月光』は・・テクニック、表現とも申し分なく。 相当な難易度の曲もこなせると判断。 そして・・・『チャルダッシュ』は。 『合わせる』ということに天才的な空気を感じ。 その場の空気を読むのも抜群。 何より聴いている人間の気持ちを高揚させるに充分な演出もよかった。 本当に楽しい、と心から思えた。」



カールは経過を説明したが



「・・難しいことはよくわかんないけど。」



真尋はまだ他人事だった。




「今まで。 私たちが出会ってこなかったタイプの演奏家です。 楽しみにしています。」



カールは笑顔でもう一度真尋に握手を求めた。





「・・・オーディションにチャルダッシュって・・」


絵梨沙は後からハラハラしてしまった。



「やっぱ楽しくなくちゃね。  堅苦しいのは他の人が弾いてくれるんじゃない?」


真尋は笑った。



「で。 曲目は?」


「まだ決まってないみたい。 とりあえず、11月の定期公演にって。 今年は何だか楽団のアニバーサリーみたいでさ。 すごい大々的にやるんだって。」


さらなるプレッシャーに絵梨沙は自分のことのようにドキドキしてしまった。



さらに世界中から注目されるし・・・



「そのころにはきっと赤ん坊も産まれて。 絵梨沙もきっと来れるよ。 楽しみだな~~~、」


真尋はまだまだ


これから起こる『試練』など想像がつかなかった。



絵梨沙は喜ばなくちゃならないのだろうが、何だかうまくいきすぎて怖い気持ちのほうが勝っていた。




そして。


真尋にとってもうひとつの別れ道がやってきていた。



「え・・・『Ballade』を?」


真尋は顔を上げた。



「もう。 『金をもらわない』ピアノは終わりだ。」


シェーンベルグは静かに彼を見据えて言った。



「金をもらわないって・・おれはちゃんと『仕事』でやってるし、」


「それは。 ピアノバーのピアニストとしての報酬だろう。 実際おまえのピアノにお金を払ってもらっているわけじゃない。 大きな仕事が待っている。 もうそういう仕事をする段階ではない。 おまえのピアノは『金』にならなくてはならない。」



『Ballade』の仕事を辞めるように言われた。



ウイーンにきて今日まで5年。


そのほとんどを『Ballade』のピアニストとして過ごした。



プロになっても自分の原点がここにある気がして、ここでお客さんとその場で言葉を交わし、リクエストに答えてピアノを弾いたり


お客さんの生の反応が楽しくてたまらなかった。



しかし。



オーディションには見事合格しましたが、あの『Ballade』との別れが待っていました・・・



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