コンマスは真尋を見てニヤっと笑った。
そして。
真尋も
笑った。
彼が不規則なリズムでまるで真尋をもてあそぶような演奏をし始めたが
真尋は落ち着いていた。
おもしれー!!
もうここがオーディションの場だなんてことも忘れてしまうくらい、俄然楽しくなってきた。
この二人のバトルに周囲も気づき始めた。
不思議なもので
この駆け引きが水面下でありながら、その曲は
ますますイキイキとし始めた。
思わず聴いている者たちが足でリズムを取ってしまう。
寸分違わぬリズムでシンクロし、そしてフィナーレを迎えた。
真尋は最後の音をバンと鳴らした格好で、コンマスを見て満面の笑顔を見せた。
彼も
思わず笑みがこぼれた。
拍手はなかったけれど、不思議な不思議な空気が充満していた。
「・・ありがとう、ございました。 ・・すっごく楽しかった、」
真尋は立ち上がって関係者たちに一礼した。
ボーっとしていたカールはハッとして
「・・では・・・。 結果は一両日中に・・・」
なんだかしどろもどろになってしまった。
真尋の持つ不思議な魅力に包まれて。
「ど・・・どうだったの?」
絵梨沙はシェーンベルグのスタジオで彼と共に、ものすごい心配そうに待っていた。
「も~~、絵梨沙~~。 そんなに神経すり減らすと。 おなかの赤ちゃんによくないってば、」
真尋は本当に暢気に彼女の肩を叩いた。
「心配しないわけにはいかないわよ、」
若干、彼の暢気さにイラっときた。
「うん。 すっげー、楽しかった。」
真尋は満面の笑みで言った。
「・・楽しかった・・?」
絵梨沙は驚いたように首をかしげた。
「うん。 いまさら繕ってかっこつけてもしょうがないし。 おれそのまんまを見てもらいたかったし、」
真尋のいつもの調子に、シェーンベルグはふふっと笑って
「まあ。 どうなるか。 今のおまえをそのまんま受け入れてもらえれば。 きっと結果は出る、」
落ち着いたようにそう言った。
そして、結果は一両日中、と言われたが
彼がいきなりやって来たのはその晩。
シェーンベルグのスタジオでレッスン中だった。
「なんじゃ、早いな。」
シェーンベルグはカールを見た。
「すみません。 レッスン中に。 ・・・結果が急に出たもので。」
コートを脱いでイスに掛けた。
「結果・・・」
真尋はボソっとつぶやいた。
果たして、結果は???(><;)
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