ようやく入籍したものの、真尋は日本滞在中ギリギリまで仕事があり、絵梨沙も母の親戚のところに行ったりとバタバタしたまま日本を発つことになってしまった。
「ほんとに、いろいろご心配かけてすみませんでした・・。 そちらにもゆっくりとご挨拶に行けなくて、」
絵梨沙は空港で南に電話をかけた。
「こっちはええねん。 また真尋もすぐ日本で仕事あるし。 今度は二人で遊びに来てね、」
南は二人が仲直りをしてくれただけでもう満足だった。
・・・そう
『仲直り』をした
とだけ思っていた・・・・。
「まったく。 迷惑だけかけられて。 嵐のように帰りやがって、」
志藤は思わず真尋のことをグチってしまった。
「自分でもいかにバカなことをしたかわかったでしょう。」
真太郎は笑った。
「あ~~~、そうか。 いちおうあんな騒ぎあったから、マスコミにはまだ知らせない方がええかなあ・・・。 いっくらなんでもすぐに発表したらいかにも『浮気しました!』になってしまうし。 相手サイドにも恥かかされたとかクレームつけられんのも面倒やし・・・」
志藤は二人の結婚をどのタイミングで公表するか悩んでいた。
真太郎はその言葉に
「え、何がですか?」
普通に訊いた。
「だから。 あいつらの『結婚』ですよ、」
志藤はフツーにそう言ったが、
「は・・・・」
明らかに彼の周囲の空気が止まった。
志藤はその異変を感じ取り
「・・だから、結婚のことです・・・」
もう一度言ってみた。
真太郎はじーっと手にしていた資料を凝視するというわけのわからない行動に出た後、
「え? 誰の結婚、ですか??」
もう一度志藤に言った。
何だか嫌な予感がしてきた。
「・・・真尋と・・エリちゃんの・・入籍のことです・・・・」
だんだんと小さな声になってしまった。
真太郎はサッと顔色を変えた後、ずかずかと資料室を出て行ってしまった。
志藤はその後ろ姿を見ながら、自分の『予感』が当たってしまったことを思い知った。
って・・・弟の結婚を真太郎は知らずに・・・
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