「ま、でも。 その友達の話聞く限り。 真尋、ひっかかっちゃったんやなあって感じやもん。 アホやって言われたらそれまでやけど。」
南は真尋を庇うようにそう言った。
「アホやん。 もうそれ以上言うことないやん、」
志藤は冷たくそう言った。
「あんただって。 どーせ女の子たっくさん泣かせてきたんやろ~~~? 同じ男としてさあ、ちょっとは同感するトコもあるんやないの??」
南の言葉にさすがに動揺した。
「おれは・・・別に。 最初っから遊びのつきあいとかやったし。 大切な人を裏切るとか・・そんなんでもなかったし、」
苦しい言い訳をすると
「そっちのがよっぽど悪い男やんかあ。」
さらに追い打ちをかけられた。
「とにかく!! エリちゃんを悲しませるなんてこと許せないからなっ! おれは!」
志藤は言葉に詰まって、そんな子供っぽいことを言ってしまった。
絵梨沙は帰宅した後、ひとりジッと考え込んでいた。
すると真理子がいつもより早く帰宅した。
「あ・・ごめんなさい。 ご飯はまだ作ってないんだけど、」
絵梨沙は慌てて立ち上がる。
「ああいいのよ。 ちょっと買ってきたわ。 ピザ。 美味しそうでしょう、」
真理子は袋を見せた。
「今日は。 真尋くんのライブ最終日じゃないの?」
どきんとした。
黙っていると
「許せない気持ちはわかるけど。 今まであなたがずっと一緒に居た真尋くんて人を思い出してみなさい。 あなたは彼の才能にもその人間にも深く深く感銘してきたと思うの。 男なんか弱い動物なんだから。 彼はピアノ以外は本当に子供みたいで。 でも、そのピュアなところが彼のいいところであるし。 あたしも最初はもう彼にびっくりしたけど・・・彼を知れば知るほど、あなたが好きになっていった理由がわかる気がしたの。」
真理子は優しくそう言った。
「ママ・・・」
「ああいう男性は。 女性がほっとかない。 ううん、放っておけないのよね。 悔しいけど好きになっちゃうとか、そういう気持ち、」
母ではなく一人の女性としての言葉が胸に響く。
「悔しくても、許すってことも必要かもしれないわよ。 彼のあなたに対する愛情が減ったとかなくなったとかそういうことではないんだもの。 口から出まかせじゃなくて、彼の気持ちは本当だと思う。」
絵梨沙はまた涙ぐんでしまった。
その渋谷のホールは100人ほどしか入らない小さなところだった。
絵梨沙がそこへ行った時はもう人がいっぱいで席もなかった。
年配の人から本当に渋谷に普通に居そうな若者まで
本当に幅広い年齢層の人たちが集まっていた。
照明が落ちて、舞台が明るくなった。
そして
真尋がいつものようにラフなジーンズとキャップをかぶって登場した。
「こんばんわ。 北都マサヒロです! 今日もこんなに集まっていただいて感激です。 クラシックは楽しい! それをぜひ実感していってください、」
と言って帽子をおもむろに取った姿を見て
絵梨沙は驚いた。
迷う絵梨沙に母は優しく諭します・・・・
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