絵梨沙は日本で母との穏やかな時間を過ごしていた。
「真尋くんの仕事は都内なの?」
「うん。 テレビの収録とミニライヴだって言うから・・・。」
「じゃあ、彼がこっちに来たら3人で食事をしましょう、」
「うん、」
真尋との関係も順調で。
絵梨沙は静かな生活に身をゆだねていた。
そして真尋は久しぶりに日本にやって来た。
「あれからどう? ウイーンでの評判は。」
会社にやってきた真尋に南は紅茶を淹れてきながら聞いた。
「え~~? 別に・・・。 あんまかわんねえな。 あ、ピアノバーで主催してくれてたさあライヴがすげー好評だから。 マスターがちっさいとこ借りて本格的にやったらって言ってくれて。 いちおうホクトに聞かないとって返事しといたんだけど。 マスターがあとはつてつけてくれるって言ってるんだけど、」
「へえ。 んじゃああとで志藤ちゃんとその話してみよ。 久しぶりに帰って来たんやからさあ、今日は家で食事しよーよ。 お義母さん、真尋はこっちに戻ってきてもぜんぜん帰ってこないってボヤいてたよ。」
「たまに帰るとさあ、友達からの誘いもすげーあって。 2週間しかいれないからスケジュールびっしり・・・。」
「またそんなんばっか・・・エリちゃんも沢藤先生も呼んでさ~~~。」
「勝手に計画進めんなっつーの。 また電話するから、」
真尋は携帯をポケットにしまった。
「え? 友達の結婚式の二次会?」
絵梨沙はまだ日本に戻ってきた真尋に会っていなかったが、彼から電話を受けた。
「うん。 今晩。 高校んときよく渋谷で遊んだヤツなんだけど。 そいつがさー。 モデルをゲットしちゃって。 おれもこっちにいるなら来いよ、的な話になって。 絵梨沙も来ない?」
と誘われたが
人見知りの激しい彼女はあまりそういう場が好きではなかった。
「うーん・・・。 あたしはいいわ。 真尋も久しぶりの東京なんだからお友達と楽しんでくれば?」
「え、そう? 絵梨沙を紹介したかったんだけどな~。 ま、いっか。 もっと落ち着いた時に。 じゃあ、また明日電話するわ、」
「うん、」
絵梨沙はこのとき軽い気持ちでそう勧めたことを、のちのち激しく後悔することになるのだが・・・・
何も変わりなく一晩を過ごし、絵梨沙は久しぶりに代官山にショッピングに出たりしていた。
真尋から電話があったのは夕方だった。
「今、実家なの?」
「・・ん・・・。 帰って来たの今朝4時だった・・・。 さっきまで寝てたよ、」
「もう・・。 明日は仕事でしょ? 大丈夫?」
「だいじょーぶだって・・・。 今日さあ、オフクロが絵梨沙と絵梨沙ママ呼んで夕食したいとか言ってウルセーんだけど・・・。 いい?」
「ママに聞いてみるわ、」
嬉しそうに電話を切った。
この日は南や真太郎も集まって久しぶりに大勢の食事になった。
「ほんと。 なかなかご挨拶もできませんで。 すみません、」
真理子はゆかりに申し訳なさそうに頭を下げた。
「いいええ。 ほんと、ウチの子のがエリちゃんに迷惑を掛けてるんじゃないかって。 この年になっても手がかかってしょうがないし、」
「23つかまえて、なんてこと言うんだって、」
真尋は迷惑そうに母を見た。
「だって。 いまだに信じられないわよ。 エリちゃんみたいにキレイな子があんたとなんて。」
「アハハ。 お義母さん、それは全員が思ってますから、」
南が大きな声で笑った。
「でも真尋くんもウイーンで本当に頑張って。 いい先生にもついてるからきっとまた大きな仕事が来ると思うわ。楽しみね、」
真理子は真尋に微笑んだ。
「何とかモノになればいいけど、」
ゆかりは小さなため息をついた。
なんだかんだ言って。
いつも真尋のこと心配してるんだから・・・
南はそんなゆかりを見てクスっと笑った。
むむっ?? なにやら怪しい感じもしますが・・・・
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