passionato~情熱的な(12) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「真尋くんもつらい決断をしたのよ・・・。 絵梨沙がいつまでも泣いてちゃダメじゃない、」


私は母に窘められた。



「でも・・・。 きっと離れたらダメになっちゃう・・・。」


私はまだメソメソしていた。



「・・あなたより。 コンクールの看板のない彼はもっともっと大変なのよ。 学生じゃなくなったらもう甘えは許されないもの。 あなたにはマークがついているけど・・・ウイーンの彼にはもう誰もいないのよ。 それでも頑張ってやってこうって決めたんだから。 お互いピアニストの道を行くって決めたんだから、あなたもしっかりしなくちゃ、」



母の言うとおりだった。



私には恵まれたバックボーンがある。


ありがたいことにパリやNYからも演奏会のオファーが来る。



彼はまだ日本でも志藤さんが仕事を取ってくるような感じで、まだまだ一人で仕事をするには心配すぎた。




「愛し合っていれば。 いつか一緒になれる。 あなたのその気持ちが変わらなければ・・きっと、」



母はテーブルの上の私の手をぎゅっと握り締めた。





それから志藤さんは大変だった。


色んな所に掛け合って、真尋が仕事ができる場を探してくれたようだった。


ウイーンにいる父ももちろん協力した。








彼がウイーンにようやく戻れたのは、それから1ヵ月後のことだった。


もう私は卒業式も終えて、明後日にはNYに発つ。



まだ引きずる足で彼はきれいに片付いた私の部屋を見回した。



「今。 退学届出してきた、」


明るい表情でそう言った。



「・・そう、」


何もなくなった私の部屋に存在感を増したピアノのフタを開けた。


ポーンとAの音を叩いて


「・・・絵梨沙は。 ちゃんとやっていけるから。 ホント・・・ガンバレよな。 おれ、見てっから、」


そう言って笑った。



「・・テレビ電話もないのよ。」


私はスネてそう言った。


「ううん。 おれは。 いっつも絵梨沙のこと考えてっから。 ずっと思ってるから。 どこにいたって・・・」


涙が溢れた。



「・・いい加減なことばっかり・・・」



彼はポケットから小さな箱を取り出した。



それは



ペアのリングだった。



「・・これを、」


真尋は私の左手を取って薬指にそれをはめた。



「・・・これ・・・」


「空港で買ったから。 安モンだよ。 でも・・・いちおうマリッジリングらしい、」


彼は笑った。



「マリッジ・・リング・・・」



「おれの。 気持ち。 もう・・絵梨沙だけだよ。 おれは。 ずっと側にいて欲しいと思うのは絵梨沙だけだ、」



そう言ってぎゅっと抱きしめてくれた。



あの『花のワルツ』が大成功して、いきなり私を抱きしめてきた時のことを思い出してしまった。


あのとき


彼がこんなに大事な人になるなんて思わなかった。



「・・真尋・・・」


私は泣きながら彼の背中にしっかりと手を回して、キスをした。




悲しい気持ちのまま別れの時が近づいて・・・


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