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My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

彼が舞台に登場すると、ざわめきに包まれた。



そりゃあそうでしょう・・・


いつものジーンズにただのTシャツ。 ポケットやベルトに鎖をジャラジャラさせて。


渋谷のセンター街をうろつく少年じゃないんだから・・・



とつっこみたくなる。




タクトが振り下ろされると同時に彼のピアノが鳴り響く。




あの時と同じように


彼はオケの音を追い、そして包み込む。


彼らのテンポや音に合わせて、微妙に自分の音も変えているようだった。


その技術に私はさらに彼の能力の高さを思い知った。



合わせられているはずのオケが彼のピアノに飲み込まれそうな迫力だった。



指揮者は必死にその動揺を抑えようと学生たちの音のバランスを取った。


確かに指揮者泣かせかもしれない。


あのオルフェスのオケをバックにこれを堂々と披露した彼と合わせる日本の一音大のオケの荷が非常に重い気がした。



だけど



彼はそれも全部わかっているかのように、彼らのレベルに合わせて、その音をさらに盛り上げる演奏をしていた。


決して出すぎずに


それでいてみんなを引っ張るように。




本当に不思議・・・



さっきのチャイコフスキーのときと同じオケのはずなのに、どんどんと彼らの音が煌いていくのがわかる。


彼は最後には少しだけ笑みを浮かべながら楽しそうにピアノを弾いていた。



最後の音を弾き終えたとたん、会場はスタンディングオベーションだった。



それに応えるように笑顔で手を振って、指揮者とコンマスと握手をした。



彼の非凡な才能は


少しずつだけど世間的に認知されはじめていた。



誰もが


彼が普通のピアニストではないことをヒシヒシと感じていた。



「も~~~、めっちゃ腹減ったし! 絵梨沙~~~、食いモン・・・」



彼だけが何もわかっていなくて。


それが少しおかしかった。



すると横からスッと手が出て



「ハイ、」



母が彼のためにお弁当を持って来てくれた。


それも二つも。



「あ、ありがとうございまーっす!!! ピアノ弾くと腹減るよね!」



彼はそれをまたガツガツと食べ始めた。




「呆れた子ね、」


母はそれを見て笑ってしまった。


「でも。 ・・・素晴らしいコンチェルトを聴かせてもらったわ。 マークがあなたに固執する理由も。 わかったし。」


彼は食べながらニヤっと笑った。



「あなたは。 音楽院を出たらどうするの?」


母の質問に彼は口をもぐもぐさせながら



「・・まあ、ウイーンでピアノ弾く仕事につければ、」



と言った。



「は?」


母はまた驚いた。




真尋の演奏は素晴らしいものでした。絵梨沙の母は・・・


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