Sanftheit~優しさ(20) | My sweet home ~恋のカタチ。

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そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「オケを指導してくださる先生がね。 ぜひって。 もちろんウチの学生のピアコンもあるんだけど特別に・・あなたの『ラフマ』を聞きたいって言うから。」


母は他人事だと思ってあっさりと言った。



「はっ・・・・。 なにその急展開、」


彼は固まった。



「できるでしょう。 なんてったってNYで大舞台を踏んだ人なんですから、」



それは彼を試したい気もあったのかもしれない。



「あの~~~。 おれその公演から全然弾いてないし。 もう5ヶ月も経っちゃってんですよ???」



さすがの彼も焦っていた。



「わかってる。 でも・・・私も見たいから。 あなたのその『伝説のコンチェルト』を、」



母の挑戦状を感じた彼は戸惑いながらもそれを受け入れた。




彼はオケ部分の練習を何度も何度も見に行った。


自分の練習はしなくていいのか、と思いつつ


合わせるのは明日の本番直前のリハだけだ。



私はさすがに心配になった。



「そのまま、出るの??」


当日私は彼の格好に驚いた。


「しょーがねーじゃん。 持って来てねーし。 絵梨沙ママもこれでいいって軽く言ってるし。」


「しょうがないわね・・・」


「絵梨沙は何を弾くの?」


「私は・・・ショパンのワルツを、」


「ああ、あれは絵梨沙にぴったりだよね。 うん、」


彼のほうがよっぽど大変なことになるのにお気楽に笑った。




心配でリハを覗きに行ってしまった。



「北都くんのテンポは? 何かこうしたいってことがあったら言って。」


オケの指導を担当する講師が指揮をする。



「や・・別にないっス。 そちらの都合でやってください。 練習は何度も見てるのでテンポはわかってますから、」


彼は冷静にそう言った。



講師とコンマスの生徒は少し戸惑ったように目を合わせた。




リハは何だか物足りなかった。


彼は流れを確認する程度の演奏で、時々合わないところは先生と話し合ったりして


それで済ませていた。




だけど。



私はわかっていた。


彼にとってどんな時も『本番』は一度きり。


そのピアノも『一度きり』なのだ。




合宿所にしていたホテルから程近いホールは200人ほど収容できる。


関係者はもちろん、学生の家族、そして近所に住む人なども訪れる。



私は自分の出番を無難に終えた。



彼のピアノコンチェルトはプログラムの一番最後だった。



その前の他の学生のピアノコンチェルトはチャイコフスキーの第1番だった。


申し訳ないけど


その時点で私は彼とその学生の差を感じてしまった。


同じ年頃の学生たちよりも彼のピアノがどれだけ突出しているのかを改めて確認してしまった。




そして真尋は絵梨沙の母の思惑通り(?)コンチェルトをすることに・・・


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