Sanftheit~優しさ(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

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そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「結局。 マークは彼のピアノを日本の学生たちに聴かせたかったのね。 彼のピアノを聴いてみんな刺激を受けているもの。」



母は頬づえをついてボソっと言った。


私も父の思惑を初めて理解した。



「でも。 あなたまで彼のピアノに感化されるのは・・・どうかしら、」


母は真剣な表情で私に言った。



「どういうこと??」



「あなたは・・2年後にショパン国際コンクールを目指すのよ。 彼のピアノは確かに素晴らしいけど・・・あなたが彼の真似をしたら大変なことになる、」


母の心配の意味を理解した私は


その時自分の最高の目標を思い出した。



日本でコンクールの優勝を総なめにした私が目指すのは『ショパン国際コンクール』だった。



この頃はそのことも思い出さなくなっていた。


なぜなら私はピアノが本当に楽しいと思えるようになっていたから。


彼と一緒に弾いていくことが何よりも楽しかったから。



「彼の真似・・なんかできないわ。 元々ムリよ、」


私はそう言って母の言葉から逃げようとした。



「あなたももうすぐ二十歳だし。 あまり口出ししたくないけど・・・。 恋愛だっていい経験になるのかもしれない。 でも、何のために今まで頑張ってピアノをやって来たか忘れないで、」



もう


すでに私は自分がこれからどんなピアニストになっていくのか


そのビジョンが見えなくなっていた。


だけどまだ少しだけプライドがあった私は



「・・わかってる、」



上辺だけの返事をした。



目を吊り上げてピアノだけやっていた自分のことがもう思い出せない。


小さいホールでもお客さんに喜んでもらえる楽しさを知ってしまった今はコンクールの意味さえわからなくなりそうだった。


ピアノを仕事にしていきたいけど、母と誓った夢どおりになっていくのか


それはまだわからなかった。




最終日のミニコンサートは聖朋音大の学生の中から選ばれた演奏家が出ることは決まっていたので、私たち外部からの人間は気楽に過ごしていた。



ところが。



ミーティングのあと、ピアノ科の学生から



「あの。 できたら沢藤絵梨沙さんと北都真尋さんの演奏もぜひ聴きたいんですけど、」



との提案があった。



「せっかくウイーンから来てくれてるし、私たちと同じ学生ピアニストとしてお二人の演奏は本当に勉強になります。沢藤さんは国際コンクールで優勝されていますし、北都さんはオルフェスでNY公演をされたと聴いています。 ぜひ、」



その提案に拍手が起こったので私たちは顔を見合わせて驚いた。



「そうですね。 二人はあなたたちの目標となるいいお手本です。 世界的レベルの演奏を聴かせてもらうのもいいでしょう。 ね、沢藤先生。」


若い講師が母に同意を求めた。



母は小さなため息をついてフッと笑って



「あなたたちのための合宿ですから。 あなたたちの勉強になるようにするのは当然。 」


それを了解した。




「おれジーパンしか持って来てねーんですけど。 発表会みたいなもんでしょ?」


彼はかったるそうに母に言った。


すると母はニッと笑って


「絵梨沙はソロで出てもらいますけど。 北都くんは・・・オケと競演で。」


と言った。


「あ???」




絵梨沙の変化を母は心配します。そしてなりゆきで真尋はここでもオケと競演することに・・


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