Sanftheit~優しさ(17) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

合宿は10日間。


各科に別れてレッスンを受けるが、彼はこうした窮屈なレッスンはウイーンでも苦手にしていた。


曲の解釈やら背景なんかの小難しいことも普段は全く考えていないので


こういう講義のときはだいたい寝ていた。




明後日、ペアになって四手の発表会を開くことになった。


私は当然彼と組んで『花のワルツ』を披露するつもりだった。



「ピアノ科のトップの子と組ませたかったのに、」


母は私にそんなことを言った。


「・・私は良くても。 彼と合わせるのは2日じゃムリよ、」


私は笑った。


「それにしても。 どんなに評判か知らないけど・・・。 あの初見のレッスンはヒドかったわね。 他の教授たちも呆れていたわよ。 いちおう私の推薦で来ていることになっているのに、立つ瀬がないわ、」


「大丈夫。 ここからがたぶん彼の本領を発揮するから、」


私は母に笑顔でそう言った。




私は2階のベランダに出て蓼科の自然をゆったりとした気持ちで眺めていた。


すると、下のベンチで彼が昼寝をしているのが見えた。


クスっと笑って見ていると、そこに母が歩み寄るのが見えた。



母は声を掛けて彼を起こしたあと、なにやら話をしている。



私は慌てて下に降りて行った。




「・・・あなた・・コンクールの経歴がほとんどないって言ってたけど。 どうして出ないの?」


母の声が聞こえる所までそっと近づいた。


「どうしてって・・・。 コンクールって減点するとこ探すばっかで。 好きに弾けないし、」


彼は頭をボリボリと掻きながら言った。


「でも。 マエストロ・シモンに認められるほどのウデなんでしょう?」


「ああ・・それは。 まあ・・・ラッキーなだけだと思うけど、」


「どのみち。 コンクールの看板がなくちゃ、ピアニストとして仕事をするときだって響くでしょう。」


「や、そんなんでもらう仕事なんかしたくないから。 純粋におれのピアノを聴いてくれる人だけに弾きますから、」


彼はニッコリと笑った。



母は小さなため息をついた後、


「・・絵梨沙とは。 本気でつきあっているの?」


いきなり自分のことになり私はドキンとした。



「え・・・。 まあ、本気ですけど・・・」


その言い方があんまり本気じゃないようにも聞こえて



「・・・昨日も。 あの子、あなたのところに行ったんでしょ?」


母はお見通しだった。



「えっ・・・うーん・・まあ、」


「あの子は本当に・・ピアノだけで。 友達だって日本にいたころはほとんどいなかった。 人見知りで内気で。 そのあの子がって・・・信じられないの。 何だか変わってしまったみたいで、」



私は胸が痛んだ。


母にそんな風に思われていたことが。



すると彼が笑って


「ああ、確かに変わったかも。 最初に会ったときはほんっと・・・おれのことも警戒してたし。 もうケダモノを見るような目で!」


おかしそうにそう言った。


「でも。 絵梨沙は自分の世界に閉じこもっちゃって。 あんなにかわいくてピアノの才能もあるのに。 周りのことはなんも見てないみたいだったから。 もったいないなあって。世の中楽しいこといっぱいあるし。 おれはピアノ以外に楽しいことばっかしてきたから。 ピアノしかしてこなかった人間しか、超一流のピアニストになれないなんてウソだ。 ピアノってもっと楽しいもんだと思うし、」



彼は堂々と母に自分の考えをぶつけた。



まっすぐと目を逸らさずに。




レッスンではまだまだボロボロの真尋ですが・・・・


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