彼は赤坂のホクトのホテルに泊まっていた。
私がそこに行くと、彼は待ちきれなかったように私を抱きしめた。
ウイーンにいるときは、毎日どちらかの部屋で過ごした。
彼と結ばれてからは、最初は本当に痛いだけで苦痛でたまらなかった行為は
数を重ねるうちに、それが快感に変わり
私も彼に抱かれることをいつの間にかに期待するようになってしまった。
「あっ・・・もう・・・」
彼の愛しかたはいつも濃厚で、もちろん他の男性は知らないけれど
私は何度も何度も頂点に達した。
「絵梨沙・・・・」
その最中に狂おしい声で私の名前を呼ぶのも、私の快感を刺激する。
この快感を知ってからの私はピアノを弾いていても時々同じような感覚に陥るようになった。
頭の中が真っ白になって上り詰めるような。
「真尋・・・・!」
私は耐え切れずに彼の背中を強く抱きしめた。
「・・・ママに止められなかった?」
彼は笑ってベッドサイドに座ってタバコをくわえた。
私より一足先にハタチになった彼はもう堂々と飲酒も喫煙もする。
「・・怪しんでたけど、」
私は服を着ながらそう言った。
彼は立ち上がって私を引き寄せたあと、キスをして
「・・おれ、絵梨沙とシないと・・・死んじゃう。」
そう言ってニヤっと笑った。
「・・もう、」
私も彼の首に抱きついた。
翌朝、母の車で蓼科まで行くことになった。
私が彼と後部座席でいちゃつくのを時々ルームミラーでチェックしているようで、ちょっと気後れしたけど・・。
聖朋音大以外から来た私たちが50人ほどの学生たちの前で紹介された。
「え・・北都真尋って・・・。 このまえのシモン・クルシュのNY公演でピアコンデビューしたって日本人じゃないの?」
「誰?」
「私の姉が向こうに住んでいて、見たって言うのよ・・・。 ほんとスゴかったって・・・」
「ホント? そんな人がここに?」
学生たちの中には彼を知る人達がパラパラといて、母はそんな噂話を耳にするたび腑に落ちないような顔をした。
いきなり初見のレッスンからだった。
私は彼が心配になった。
「あ・・・ヤベ・・・。 わかんなくなっちゃった、」
途中で楽譜を指で追っている。
「初見のレッスンの経験はないの?」
呆れて母が言った。
「や・・いつもやってますけど。 でも、どーも苦手で。 だいたい日頃から楽譜もあんま見ないし・・・」
彼はそう言って母や周囲を呆れさせた。
こうして蓼科の合宿にやってきた真尋でしたが、やっぱりすんなりといかないようで・・・
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