「は? おれも? なんで????」
彼が驚くのも無理はなかった。
「パパが。 一緒にどうかって・・・。」
「え? 絵梨沙のママのいる大学の? なんだって??」
いっぺんに説明するといつも彼は処理能力が落ちるらしく理解ができない。
「だからね。 ママは今、東京の聖朋音楽大学の講師をしているの。 その大学で毎年夏休みに長野で合宿をするらしくて。 最終日にはミニコンサートもあるんですって。 それにね、あたしと真尋を招待してくれるって、」
彼はしばらく考えた後、
「ふーーーん。 でも、なんで、おれも?」
「パパが推薦してくれたらしいの。 他の音大の人達も何人かいるらしいから。」
「別に日本には帰りたくはねーけど・・・。 絵梨沙と一緒なら、ま、いっか。」
彼はそんなノリで承知した。
「ね。 絵梨沙のママって・・・美人??」
身を乗り出してきたので
「え・・そんなの自分の母親のことなんかわからないわよ、 まあ、すごくあたしと似てるって言われるけど・・・」
鬱陶しそうに答えた。
「んじゃあ、すげえ美人じゃん!」
「何喜んでんのよ・・・。 ママはまだ若いの。 私を産んだ時・・20歳前だったから。 まだ40くらいだし。」
「ソレ、テンション上がるな~~~、」
「もう!」
私は彼の頭をペシっと叩いた。
「ママはパパと別れた後、日本に帰ってもう一回大学に入り直して・・・。 音大の講師の資格も取って。 すっごい大変だったみたい。 でも、今は自分のやりたいことができてるから・・・楽しそうだけど。」
「ふーん・・。 そっかあ・・」
「真尋のお母さんて、どんな人?」
「え? ウチのおかん? 一応・・昔は女優をしていたらしい・・・」
それには驚いた。
「ほんと???」
「うん。 『一ノ瀬ゆかり』っていって。 わりと有名だったみたいだよ。 オヤジがさ~~~、自分トコの女優に手え出しちゃって。 デキちゃった結婚してさあ。 兄貴が生まれたんだけど、あいつ身体が弱かったらしくて、そんで面倒を見るために女優辞めちゃったんだって。 だからおれもオフクロが女優してたとこみたことねーけど、」
「へええええ。」
心底意外だった。
というか。
彼が北都グループの御曹司であることも、すっかり忘れていたけど。
「もー、天然でさ。 アホすぎて笑っちゃうんだよ。 おれが家の壁とかにいたずら書きするじゃん? 何回怒られても懲りずにやるわけよ。 オフクロも頭きちゃって。 ある日、その壁にさあ 『ここにいたずら書きをしてはいけません!』って思いっきり油性マジックで書いてあんの!! さすがに笑ったな~~~、」
その話に私も笑ってしまった。
「えー・・お母さん、かわいいのね。」
「かわいいかどうかしらねーけど。 あのカタブツのオヤジとよく夫婦やってるよ、って思うよ。」
そんな風に言うけど、この前会ったお兄さんといい
彼は本当に幸せな家族に囲まれて育ったことがわかる。
それが微笑ましくて笑ってしまった。
こうして私たちは夏休みに日本に帰国することになった。
「絵梨沙!!」
ママが空港まで迎えに来てくれた。
「ママ!」
やっぱり久しぶりに会うと、母が恋しかったんだなあとわかるほど嬉しかった。
「元気そうね。 ほんと・・全然帰ってこないんだから、」
ママは私を抱きしめてそう言った。
「ごめんね。 でも・・・すごく楽しくやってるの。 学校も楽しいし、」
「そう・・・。 何だか表情も明るくなって、」
母は私の頭を撫でた。
そして
私の後ろにいた大きな人の気配に気がついた・・・
真尋と絵梨沙ママが初対面となりましたが・・・
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