crescendo~だんだん強く(18) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

彼は学校にも来なくなり、部屋で缶詰状態になっているらしかった。



そうなると玄関のチャイムを鳴らしても、電話をしても無駄なので


私は隣のピアノの音を聴いて様子を探るしかなかった。



いつも施錠もいいかげんなのに、こういう時に限って鍵を閉めているのでどうすることもできない。




ゴハンはちゃんと食べているのかしら・・・




ピアノの音はひっきりなしなので、すごく気になった。



そして彼と顔を合わせなくなってから3日ほど経った。


今日はオケとの練習の日なので、出てくると思い彼の部屋のドアの前で待っていた。


すると


徐に鍵の開く音がして、ゆら~~~っと人影が出てきた。



えっ・・・・



一瞬、亡霊が出てきたのかと思った。



頬がげっそりして、無精ひげがボーボーで。


髪も乱れまくったままの彼だった。



「どっ・・・どうしたの・・・?」


こわごわと聞いてしまった。



彼は死んだような目で私を一瞥した後、そのまますーっと歩いて行ってしまった。



「ちょ、ちょっと!!!」


慌てて追いかけた。



彼のあまりの姿にオケのみんなは驚いていた。



寝不足なのか大きなアクビをしたりして、また心象も悪くしていたけど。



「んじゃあ。 最初っから通しでやってみようか、」


マエストロがニッコリ笑った。



彼は聞いているのかいないのかわからない様子だった。



タクトが振り下ろされ、彼のピアノから始まる。



はじめはppで。



だんだん強く。



迫力を増して・・・・。




・・・・あ・・・・


オケと合わさった時に初めて


うわっ・・・と圧倒された。


風が起こったかのような空気で。



これまでとは確実に違っている。



それはオケのメンバーも同じに思っているようで、みんなの表情が一変した。


彼の圧倒的なその音に引きずり込まれないように必死だった。



・・すごい・・


私も身体が硬直するほどの緊張を覚えた。



ところが。



疲労困憊だったせいか、後半少しずつ合わなくなり。


第3楽章の途中でマエストロは止めた。




「・・・緊張が。 途切れちゃったみたいだね。 ちょっと休憩。」



そう言って彼に笑いかけた。



「・・ゴハンは、食べているの?」


私は彼にカップのコーヒーを手渡した。



「・・・え・・? メシ? いつ食ったかなあ・・・」



あの大食らいの彼がそんなことを言う自体、もうおかしかった。


「ちゃんと食べないと。 体力がもたないわよ。 練習したい気持ちはわかるけど、」


「・・んー・・・」


そこはかとなく彼の身体から異臭も漂ってくるし。


たぶんシャワーも浴びていないんだろう。



私は小さなため息をついた。


真尋はもう悲壮な状況で・・


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