crescendo~だんだん強く(6) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

2時間ほどの演奏を終えた後、私はお客さんの中に彼の姿があるのに気づいた。



「え・・・来ていたの・・?」


「ウン。 マスターから電話もらって。 絵梨沙が弾くなら絶対来なきゃって。 カサを杖代わりにして何とか来たよ、」


彼は頬づえをついて笑った。



「・・もう、」


ちょっと恥ずかしくなってうつむいた。



「すんげえ・・・キレイだった。 楽しそうだった。」



その言葉に顔を上げた。



「いつもみたいに。 怖い顔でピアノに向かってるんじゃなくて。 自分のピアノが大好きって・・そんな感じだった。 ほんと。 すんげえ良かった。 コンクールの時の絵梨沙もキレイだったけど、今日はもっともっとキレイだ、」




こんなセリフをあっさり吐いてくれちゃって。



私はおかしくなってふっと笑ってしまった。



「明日から学校も行くよ。 何とかいけそう。 おれも頑張んなくちゃな~~~、」



彼はそう言って、手をついてイスから立ち上がった。



その時


「あ??」


彼がカウンターの柱のクギに鍵が引っ掛けられているのに気づいた。



「コレ・・・」


それを私に見せた。


「あ!」


それは間違いなく私の自宅のカギだった。



「こ、ここにあったの???」


びっくりして手にすると



「え? それエリサのだったの? この前お客さんが落ちてたって拾ってくれて。 誰か取りに来るかなと思ってここに引っ掛けておいたんだ。」


フランツがそう言った。



「も~~~~、ここだったの???? 最初に聞けばよかった・・・」



全身の力が抜けた。



すると彼が大きな声で笑った。



「いや~~~、おれにとってはラッキーだったけどな~~~、」




ほんと。


この数日間はなんだったのかしら。



そう思うと私も笑いがこみ上げてきた。




彼は何とか学校に復帰して、またコンチェルトのための練習に邁進し始めた。


バイトもして学校の課題もこなして、試験も受けて。


本当に忙しそうだったけど、すごく楽しそうで。



私たちは、といえば。


特にどうなったわけでもなく、今までと同じように学校で会えばたまに一緒にランチを採ったり、相変わらず講義では寝ている彼にノートを見せてあげたり。


たまに、コンチェルトの練習を見てあげたり。



彼も特にそれ以上のことは求めてこなかったので、私は何も変わらずに彼と接した。



それで、充分楽しかった。



だけど。



本当の彼の試練はまだこれからのことだった。



二人の『プチ同棲(?)』は終わりました。その後特に進展もなく・・・・


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