crescendo~だんだん強く(5) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「え? エリサが???」


「ええ・・・ダメかしら・・・」



私は学校の帰りにフランツのところに行った。



「まあマサが来れなくて困っていたけど。 実際、今日は他のピアニストも都合がつかなくてどうしようかと思っていたけど。 いいのかい?」



彼の代わりにフランツの店で『バイト』をしてみようかと思っていた。



「もし、よかったら・・・」


「そりゃエリサならOKだよ! でもマークに了解をとらなくていいのかな?」


「パパは明日までNYだから。 ナイショで、」


私は笑った。




とはいえ。


この雰囲気はちょっと異様だった。



お酒を飲みに来るお客さんが・・・


って、バーなんだから当たり前なんだけど。


未成年の私はこういう空気にまだまだ慣れなかった。



「今日は。 スペシャル・ゲストだよ! ピアニスト、エリサ・サワフジ。」


フランツがそう紹介してくれて、私はドキドキしながらピアノのところにやってきた。


お辞儀をすると、みんな立って大きな拍手をしてくれた。



「エリサー!」


なんて名前も呼ばれて恥ずかしくなったけど。


酔っぱらっている人達もいたけど


みんな音楽が大好きでここに来ていることがわかる。


彼がここでピアノを弾くときに来る人達は少なくとも、彼のコンサートを聴きに来ているお客さんのようだった。



私がラヴェルの『水の戯れ』を弾きはじめると、シンと水を打ったような静けさになった。



みんなが真剣に私のピアノを聴いてくれている。


その空気がヒシヒシと伝わる。


このピアノバーは普通のバーと違って、まるでライヴハウスみたいで演奏がBGMではなく


みんなアーティストたちの音楽を楽しみにやってくる。




先生や審査員たちの前で弾いているあの緊張感とは全く違って。


すごく

すごく


気持ちがいい。



自然に顔が綻ぶのがわかる。



ああ


そうか。


彼が言っていたのはそういうことだったのか。



私はピアノを緊張感の中でしか弾いてこなかった。


楽しくピアノを弾くなんて


今までになかった・・・・




確実に


彼と出会って私は変わっていっている。



あんな人


もうゴメンだって思っても


私の身体が彼のピアノを欲して。


知らず知らずのうちに


彼のピアノに焦がれて。




それが


わかってしまった・・・・



絵梨沙はピアノを弾く歓びを初めて感じます・・・




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