部屋に戻るとかすかに隣からピアノの音が聞こえてきた。
珍しく彼が部屋で練習をしている。
その『ラフマの2番』は
あまりにたどたどしく。
あと2ヶ月でどれだけ仕上がるのだろうか、と心配になるほどだった。
『彼のラフマニノフを聴いてみたいねえ、』
父の言葉を思い出す。
私も
同じように思っていた。
「え、なに? どーしたの?」
彼の部屋を思い切って訪ねた。
「・・これ、」
私は2枚のCDを差し出した。
「え?」
「・・どちらも有名なピアニストの演奏よ。 『ラフマの2番』の。 あなたは耳で聴いた方が早いみたいだから、」
彼は少しびっくりしてそのCDを受け取った。
「あ、サンキュ・・・」
「店で練習しないの? 珍しいわね、」
「ああ・・・。 これ仕上げるまで週に2日にして欲しいってマスターに頼んじゃったから。 いくらなんでもピアノだけ貸してなんて悪いし、」
神妙に言う彼が
おかしくなって
「あなたでも一応気を遣うのね、」
と言ってしまった。
「え? おれ、気配りが服着て歩いてるって思わなかった?」
いつもの彼に戻って笑っていた。
「なんもないけど。 上がる?」
さりげなくそう言われて
私は何の抵抗もなく小さく頷いた。
・・・にしても!
きったない部屋・・・・
なりゆきで部屋に上がったことをすごくすごく後悔した。
「ちょっと・・・・何この汚さ・・・」
「え? そお? これでもいつもより片付いてんだけど。」
ピアノの上にももう物がいっぱいで、床にもいろんなものが散乱していた。
「テキトーに座って。」
そう言われたけど、ソファの上にも服やらなにやらがいっぱいで
「こんなとこ座る気にならないわよ、」
思わず片付けはじめてしまった。
「そんなのいいからさー。 一緒にCD聴こうよ、」
「よくないわよ!」
何でこんなことをしなくてはならないのか、と思いながら私は掃除を始めてしまった。
さりげなく『母性本能』をくすぐってる気もします・・(*^o^*)
↑↑↑↑↑↑
読んで頂いてありがとうございました。
ポチっ! お願いします!
人気ブログランキングへ
携帯の方はコチラからお願いします