Es glitzert~きらめき(15) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

なによ・・・


私だってこんな面倒なことに関わりたくなかったわよ!




それなのに。


あんな風に迷惑そうに言われて!



私はものすごくものすごく悔しくてたまらなかった。




でも



ずんずんとスゴイ速さで歩いていた足が停まった。



エレナも彼のスゴさをわかっていた。


一流の演奏家である彼女も彼の才能に気づいていた。




それはやはり


彼がそうとう『非凡』なものを持っているという何よりの証拠で。



自分だけでなかったことが少し悔しく・・・





気がつくと


彼のピアノが聴きたい自分がいた。



夕方まで一人部屋でピアノを弾いていたけど


楽しそうに会話をする二人の姿を思い出して集中できなかった。






そっとドアを開けると、いつもより人が一杯で驚く。


『Ballade』に来てしまった。


彼のバイトの日であることはわかっていた。


ここに来たなんてことを彼に知られたら恥ずかしい、と思っていたのだが


こんなに人がいっぱいとは思わず、彼に気づかれる心配もなさそうだった。



「エリサ、」


フランツが気がついて声を掛けてくれた。


「・・いっぱいね。 びっくり、」


「今日はマサが弾く日だからね。 みんなよくわかってる。 こっちにおいで、」


フランツはカウンターの中のイスを勧めてくれた。



ついこの間初めてここに来た時は、まだこんなに人がいなかった。


あっという間に彼がこんなに評判になっていたことにびっくりした。




彼が出てくると、みんな大きな拍手で迎えた。


ここがバーだなんてこと忘れるくらい


まるで彼のコンサートのようだった。




「こんばんわ! 今日もようこそいらっしゃいました!」


もう流暢なドイツ語で元気に挨拶をした。



最初に弾き始めたのは


ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』だった。



いったい


いつ練習をしているのか



学校の課題に追われている彼しか見ていなかった私はそればかりが気になった。



たくさん人がいることを忘れてしまいそうなほどシンとして


彼のピアノの音だけが店中に響き渡っていた。



お酒を飲むことも忘れて。



フランツの店が損をしてしまうんじゃないかって心配になるくらいに。



その優しすぎる調べが


お酒を飲んでもいないのにすごく心地よくなって。



フランツが用意してくれた私の『特別席』は『特等席』だった。




どんなに腹立たしくても、やっぱり彼のピアノが聴きたくて・・・


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