父に呼ばれてレッスン室に行くと
何故か彼がいた。
「・・・・なに?」
怪訝な顔で父に聞くと
「絵梨沙は室内楽の試験のパートナー、もう決めたの?」
父はピアノのふたを閉めた上で何やら書きものをしながら言った。
「え・・まだだけど・・・、」
実際
コンクールでの評判を聞いた人たちから数人申し込みがあったが、自分的にピンとこなかったので保留になっていた。
「なら。 彼と組んでピアノデュオをやりなさい。 特に楽器の指定はないし、」
父は思いっきりの笑顔でそう言った。
「えっ!!!!」
びっくりした。
「きっとおもしろいと思うよ、」
「だって。 パパが言うからしょうがないよね。 よろしく、」
彼はいつもの調子でふざけて笑った。
「な、なんで???」
ようやくそう言えた。
「なんでって。 いいものができると思うから。 楽しみにしているよ、」
父は私に楽譜を手渡した。
もう楽曲まで決めてるの??
『チャイコフスキー 花のワルツ』
ゴネて断ろうと思えば断れたかもしれない。
でも
断れなかった。
断らなかった。
彼のあのピアノの秘密をもっと知りたいって
少しだけ思ってしまった。
「『花のワルツ』は、弾いたことはあるの?」
このあと
不本意だったけど、学校の中にあるカフェで二人でお茶をした。
「は? ないなァ~~。 おれ、一曲仕上げるのすんげえ時間かかるけど、だいじょぶかな、」
「だいじょぶかな?じゃないわよ! やってもらわなくちゃ、私が困る!」
「まあ、頑張るけど。 フェルナンド先生も思いきるよね。 おれをここに入れたってのもスゲーなって思うけど、」
と笑った。
「でも。 コンクール、コンクールってうるせー先生じゃなくてよかった。 おれ、子供のころからたぶん先生は10人以上は変えてるし。」
「10人以上??」
「ダメなんだ。 上からモノ言ってくるみたいな先生は。 おれのやり方を変えさせようとか、もうそーゆーの大っきらいだったし。 親も困ってた。」
そう言って
頬杖をついて外を見た。
そしてこのピアノデュオが二人の運命を変えます・・・
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