何とか南と話をしようとやってきた真太郎だったが
いきなり想定外のできごとに少々戸惑っていた。
病院にはすぐに着いた。
南は車椅子を借りてきて萌香を乗せて検査室まで運び込んだ。
「破水しているようですね。 今、赤ちゃんの心音を聞いたら元気で異常ないようなんで、このまま陣痛が強くなって出産になると思います、」
診察した医師が本人と南にそう告げた。
「・・生まれる、んですか。」
萌香はまだ予定日まで10日ほどあり、まだまだ子供が下におりてきていないと言われていたので、こんなにすぐに出産になると思わなかった。
「ええ。 今から陣痛室に移って、陣痛計をつけて様子をみますから。」
「萌ちゃん、斯波ちゃんに連絡、」
南は思い出したように言った。
「あ・・・そうや。 まだ、なにも・・」
萌香は起き上がろうとしたが、
「あたししておく。 今、外出てくるね。」
南はニッコリ笑ってそう言った。
「どうなの?」
外で待っていた真太郎は出てきた南に言った。
「このまま出産に入るって。 今、斯波ちゃんに電話するから・・・」
南は簡単に説明して、携帯がかけられるところまで移動した。
「は・・??? 生まれる?」
斯波は名古屋のホテルに滞在していた。
「そーなの。 ね、今から帰ってこれへん? まだ新幹線の最終、間に合うやろ?」
南は時計を見た。
「ま、間に合うっつーか。 こっち台風で大変なことになってるし!」
斯波はホテルの窓のカーテンを開けた。
名古屋は夕方から風雨が強くなり、ニュースでは今夜にも紀伊半島に上陸すると言っていた。
もちろん新幹線もストップし、交通手段は絶たれていた。
「え~~~?? 新幹線も止まってるの??」
「さっきニュースで言ってたし、」
「んじゃあ飛行機で!」
「バカ! 新幹線が動いてねーのに、飛行機が飛ぶか!」
斯波もなんだか慌ててしまった。
「そ、そっか・・・。 んじゃあ今日は帰ってこれへんてことか、」
「ていうか! なんで萌がおまえのトコに行ったりしてんだよ、」
そもそもそこがギモンであった。
「萌ちゃん・・・あたしたちのこと、心配して。 こっちも雨降ってるのに・・あたしのところに来てくれて、」
南は申し訳なさそうに言った。
「え・・・」
「あたしが、萌ちゃんに心配かけたから、」
彼女の消え入りそうな声が電話越しに聞こえた。
こんなことになってしまい、南は責任を感じますが・・・
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