「リエちゃん???」
思わず大きな声を出してしまい、ここが会社であることを思い出しみんなの方に背を向けるようにした。
「ええ。 ・・志藤さんに大事なお話がありまして。」
「大事って・・・。 おれなあ、ちょっとここんとこ忙しくて・・」
正直、彼女の話を聞いている暇はなかった。
「・・・北都真太郎さんのことです。」
彼女からそう言われて、
「え・・・・」
思いもかけない接点だった。
リエは出勤前に会社のロビーにやって来た。
カフェテリアのコーナーで志藤は彼女と向き合った。
「・・真太郎さん。 今、うちにいらっしゃいます。」
いきなり激しく驚いた。
「う・・うちにって・・・リエちゃんの・・家?」
「はい。 一昨日の晩にお店にいらして。 ものすごく酔ってしまわれたので、うちにお連れしました。」
けっこうすごいことを冷静に言われた。
ジュニアが・・・・
志藤はもう頭が混乱しそうなほど驚いた。
自分と違って彼はもう南以外の女性には全く興味がなく、地位も顔も性格も、全てカンペキなのに他の女性に微塵とも心動くことはなく。
接待で女性のいる店に行くのも苦手な人なのに・・・・
え?
なに?
どういうこと???
志藤が一瞬のうちにいろいろパニックになっているのを見てリエはクスっと笑って
「なんだか・・・落ち込んでいらっしゃいましたから。 あたしはいつまででもいてくださいって言いました。 ほんとに真面目な方で・・・こういう時に行くところもないんだなあって・・・・。」
また落ち着いて紅茶を少しだけ飲んだ。
「な・・なんで・・・・。」
「あたしは詳しいお話を聞いたわけではありません。 でも、今は奥さまのところにも帰りたくないようです。 会社にも来てらっしゃらないでしょう?」
「う、うん・・・」
「北都社長が倒れられたことは知っています。 その上、専務さんまでこんなことになって会社は大変なことになっているだろうし、なにより奥さまも心配してらっしゃるでしょうから。 ただ無事でいるってことだけお伝えしたほうがいいんじゃないかって。 たぶん、黙って行方をくらましているでしょうから・・・」
聡明な彼女の想像通りなのではあったが。
「行っても・・・いいかな。」
志藤は怖いような気もしたが、彼女にそう言った。
「話を、したいんや。 ジュニアと。」
リエは小さく頷いて、腕時計を見ながら
「あたしこれからお店ですから。 場所は・・・」
メモに自宅マンションの住所をササっと書いて志藤に手渡す。
「でも。 今はそっとしておいてあげて欲しい気もします。」
リエはつぶやくように言った。
あの真太郎が女性の家に転がりこんでいる???( ̄□ ̄;)!! もう志藤はパニックに陥ります。
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